こちらも先のAntenaに続き定番だけど紹介していなかったシリーズ。60年代後半にドアーズのカヴァーで人気を博した、プエルトリコ生まれの盲目シンガーソングライターJose Felicianoの74年作です。OdysseyのBattened ShipsやJackson SistersのMiraclesと共に、90年代中盤のクラブ・シーンを盛り上げたB-1のGolden Ladyが有名ですね。アコースティックなギター・カッティングとラテン・パーカッションのみの冒頭部に、メロウなエレピとブラジリアン・ビートが被さるイントロが奇跡。原曲はもちろん御大Stevie Wonderですが、数年前にSaigenji氏が同曲をカヴァーした際にも確かこのヴァージョンをベースにしていたはずです。今の若いリスナー(僕もですが)にとっては、オリジナルよりもこのJose Feliciano版の方が耳馴染みあるのではないでしょうか。さて、このようにクラブ的にはこの1曲が断然メジャーなこのアルバムですが、クラブという枠から外してやると意外に他の曲もなかなか良いです。全体的に同年代のプレAOR~SSWと近い雰囲気で、特にB-4のタイトル曲なんかしっとりとしつつも壮大なバラードで素敵。そしてAt The Living Room的にはやはりB-3のChico And The Man。ホセのオリジナルながら、アルバム中で最も南国の香りがする1曲で、切なく込み上げるヴォーカルと微かに鳴るピアノの音色が夏の終わりにぴったりですね。オリジナルも90年代の再発もわりと良く見かけるので、まだ聴いていない人は是非。素敵な休日の午後を演出出来るはずです。
あまりにも有名なアルバムですが、少しずつ涼しくなってきた今の季節にぴったりなので紹介。Isabelle Antenaによる86年のネオアコ名盤ですね。元々は81年にパリで結成され、3人組のユニットとして何作かのスマッシュ・ヒットを飛ばしていたAntenaですが、他の2人のメンバーが脱退したことにより、このアルバムからはイザベルのソロ・ユニットという形式になっていきます。全編に80年代特有の煌びやかな都会感が漂う名作で、アンニュイな彼女のヴォーカルと共に、どこかアダルティーで洗練度の高いポップス・アルバム。良い意味で体温が低めというか、暑苦しさが全く感じられないシックな雰囲気に仕上がっています。個人的にこういう雰囲気は大好き。この中に収録されたA-3のSeaside Week Endを初めて聴いた時には本当に衝撃を受けました。ちょうど都会的で大人な雰囲気に憧れる年頃に出会ったということもあり、当時の僕はこのアーバン・リゾートな感覚に虜になったものです。オルガンバーのテープやサバービアに出会う少しだけ前の話ですね。もちろん今でも大好きな曲で、休日にはこうして時々ふと聴きたくなります。ちなみに他の曲では、福富さんがカヴァーしたA-1のPlay Backや、80'sソウルの雰囲気漂うA-2のEasy Streetも最高。カフェ系という括りで語られているのをよく見ますが、どちらかというとカフェと言うよりカフェバー(死語)な感じの一枚です。僕がリアルタイムで触れることの出来なかったバブル期の、若者たちによる華やかな雰囲気を閉じ込めたかのようなアルバム。エヴァー・グリーンな傑作です。