Introducing Lynn Marinoってのが正式タイトルなのですが、長すぎるので例によって割愛。工業都市ピッツバーグ出身のピアニストFrank Cunimondoを中心としたトリオが、同郷の女性シンガーLynn Marinoと出会って録音したカクテル・ラウンジな一枚。この手のレア・グルーヴ以降のジャズ・ヴォーカルとしては基本中の基本となるアルバムで、初期のOrgan b. SUITEにも収録されたB-1のFeelin' Goodがその筋ではとても有名です。硬質なピアノが印象的な伴奏の上に若干あどけなさが残る女性ヴォーカルが乗った、非常に日本人好みするスウィング・ジャズ・ヴォーカルで、もちろん僕も昔から気に入っています。だけれどA-2に収録されたBeyond The Cloudsの方が今はより気分。ヨーロッパのジャズにも負けないモーダルで美しいワルツ・ジャズです。KoopのWaltz For Koop以降クラブジャズにおいても3拍子のワルツ・ジャズというものが市民権を得て、現在でもNicola ConteやThe Five Corners Quintetなどワルツのリズムを取り入れているアーティストは少なくないですが、この曲はそんな中に混ぜてかけても全然違和感がなさそう。もし既に持っている人は久々に引っ張り出してもう一度聴いてみてください。ちなみにCDでも出ててアナログも再発されています。
ここ数年のヨーロピアン・ピアノ・トリオ・ブームの火付け役となった、フィンランドのピアニストVladimir Shafranovによる81年のヘルシンキ録音1stアルバム。冒頭A-1に収録されたMoon And Sandのイントロ、切れ味鋭いドラム・ブレイクに繊細な彼のピアノが重なる瞬間に一気に部屋の雰囲気がグルーヴィーに包まれるような気がします。際立った派手さはないものの、その演奏スタイルはどこまでも透明感と気品に満ちていて美しい。これぞアメリカでは出せないヨーロッパ・ジャズ(それも北欧ジャズ)の醍醐味とでも言うべきものなのでしょう。アルバムではアップテンポなものからバラードまで幅広く演奏していますが、曲ごとに聴くと言うよりも、一枚通して聴くことでライブの雰囲気を楽しんだ方が良さそうな感じ。静かな夜にものんびりした昼間にもよく似合いそうなアルバムです。ちなみにオリジナルだと4万円くらいする上そこそこレアです。例によって澤野工房からアナログ/CD共にリリースされているので、よほどのマニアの方以外はそちらでお求めください。とは言えアナログだとこの再発でもなかなか見かけませんが・・・。どことなく夏の香りを感じる名盤、暑い夏を涼しく優雅に過ごしたい人にオススメです。
神保町にある自遊時間レコード社さんでたまたま発見した一枚。世界のナベサダこと渡辺貞夫氏が、帰国後の1967年に原信夫とシャープス&フラッツと共演した際に吹き込まれた音源です。原盤はタクトからリリースされたEncore!! Jazz & Bossaというものらしく、僕が持っているのは70年代になってからRCAから再発された2ndプレスの模様。詳細は知らないのですが、さらにジャケット違いの別プレス盤もあるみたい・・・。あんまり真剣に聴いたことないくせに、僕はナベサダと言うと何だかゆる~いボサノヴァのイメージをもってしまうのですが、この盤に関しては軽快なビッグ・バンド・サウンドが心地よい本格ジャズ。特にA-4に収録されたAnacrucisという曲が程よくルパン三世しているスウィンギンな4ビート曲で格好いいです。使いようによってはDJプレイでもいけるのではないでしょうか?僕は聴いたことないのですが最近読んだ雑誌を見たところ実際に須永氏はかけているらしいです。鋭いホーンが印象的な名演だと思うので、見つけたら手にとってみてください。タクトからのオリジナルはともかくとして、結構どこにでも高くなくありそうな盤であったりもします。
一部の方々にとっては既にお馴染みでしょうが、ルーマニアのシンガーである彼女によるカナダ録音の2枚組LPです。なんと言うか凄くカフェ的なアルバム。テンポの速い曲も遅い曲もあるのですが、全体としてスタンダードを中心にジャズやボサノヴァなど上品なスタイルでアレンジしているので、二枚通して落ち着いて聴けます。ちなみに僕はこのアルバムでは特にジャズボッサ的なナンバーが気に入っていて、A-3のLonely LieやC-1のWe'll Be Together Again辺りが個人的にツボ。キュートなヴォーカル・ワークがまた良い感じです。もちろん橋本徹さんお気に入りのD-2、As Time Goes Byのようなドラマティックな高速ボサノヴァも好きですけどね。しかしこんなマニアックなアルバムをCDどころかアナログでまで再発してしまうP-vineは本当に凄いと思います。しかも、きちんとオリジナルと同じWジャケット仕様というのが驚きです。きちんと採算は取れてるのでしょうか?ちなみに彼女の名前は日本語表記ではアウラ・ウルジチェナウとなっていますが、果たしてこの読みが正しいのかどうかは僕は分かりません・・・。いずれにしろ、まぁ良いアルバムであることには変わりないのでルーマニアのものだからと言って珍しがって敬遠しないで聴いてもらいたい一枚。でも、もう一枚再発された方のアルバムは僕は苦手なんですけどね・・・。
サバービア誌にて奇跡のロシアン・ジャズと評された84年のリトアニア録音盤。英語とロシア語で書かれたジャケット裏のクレジットを見るとマルチ・プレーヤーのKestutis Lusasがピアノ・ローズ・ベース・ドラムスと全ての楽器を一人で操っている模様です。その一人多重録音カルテットの演奏の上で軽快にスキャットするのがMarina Granovskajaなる女性ヴォーカリスト。例えるなら真夜中のジャズとでも言うべきでしょうか?80's Jazzに共通する洗練されたアレンジをリトアニア風に解釈したという感じ。国が近いこともあってかどことなく北欧辺りのサウンドにも通じる気がします。僕が気に入っているのはB-1のComposition No.12という曲。とても美しくもグルーヴィーなワルツ・ジャズの名作です。そしてもちろん人気のB-2、Swift Bossa Novaも文句なしの大傑作。静寂の中をひっそりと疾走していく高速ジャズ・ボッサの最高峰です。Irene Sjogren Quintetの人気トラックThe Real Guitarist In The Houseにも近い繊細な演奏は何度聴いても癒されます。全体的に静かな曲が多いのでクラブプレイと言うよりは夜カフェでしっとりと聴いていたい感じ。ただ、いかんせん旧ロシアものということでレアだし未だに世界的にそこそこ高価なアルバムですが・・・。何かの折に出会うことがあったらぜひ耳を傾けてみてください。
真っ赤なジャケットが印象的なイタリアのラウンジ・ジャズ~イージー・リスニングの名盤にして人気盤。とりあえずレコードのどこにもクレジットがないので詳細は良く分からないのですが、このAngel ''Pocho'' Gattiなる人はイタリアのオルガン奏者のようで、他にも何枚かライブラリー作品などを残しているらしいです。この盤と言えばイルマのコンピにも収録されたB-1の高速ラテン・ジャズダンサーのKashbaがやはり抜群に素晴らしい。洗練されたピアノと突き刺さるようにシャープなホーン隊、打っているドラムに音抜けの良さまでパーフェクト。ここまでクラブ映えするジャズっていうのも珍しいと思います。ただアルバム通して聞いてみると、クラブと言うよりもカフェで聴きたいようなラウンジーな楽曲が大半を占めていて、Kashbaのような曲はむしろ全体からしたら異色という感じ。最も須永氏Organ b. Taro 4にも収録されたA-3のThe Happy Zooのような涼しげなボッサから、とびきりメロウなB-4のTo My Loveみたいなフュージョンまで基本的にはラウンジーながらもしっかりグルーヴ感に満ちているのですけれどね。夕暮れ時から真夜中までよく似合いそうなメロウなエレピの音色が心地よい僕にとってのリゾート・ミュージック。夏の夜の浜辺で聴いてもトロピカルな気分に浸れて気持ちよさそうですね。簡単に手に入るというわけではないですが、自信を持ってお勧めできる逸品です。
前述した12インチのFour Songsが大人気の80's UK産のフェイクジャズ・グループによるLP。やっぱり曲単位で言ってしまえばTrickeryに適う曲はないのですが、こちらのアルバムもなかなかの快作に仕上がっています。全体的に気だるくアンニュイな作品で、ヴォーカルがFour Songsでの録音時に比べてさらに低くなっているために、LPを一枚通しての印象はとてもダーク。曲調的に明るいものがないわけでもないのですが、この低音ヴォーカルが入るためにどうしても暗くなってしまいます。ただ、別にそれが悪いと言っているわけではなく、特に今の時期など梅雨で鬱々としている気持ちで聴くと見事にハマったりするので不思議。特に気に入っているのがA-3のGreen Dolphin Sheetという曲で、程よくネオアコ・テイストが混ざったフェイク・ジャズ・ボッサといった感じ。わりとベースラインがしっかりと入っているせいか、どことなくTwo Banks Of Fourなんかに近い印象も受けます。サバービア誌で「早すぎたウェスト・ロンドン」と評されていますが、たしかにその通りかもしれませんね。ボッサ風変拍子のB-2、Start The Melodyもなかなかクールで良い雰囲気。ちなみにCDではFour Songs収録曲とセットで売られているみたいなので、興味があればそちらでどうぞ。
アメリカ西海岸はサンフランシスコの女性ヴォーカリストKitty Margolisが、1989年に自主レーベルからリリースしたデビュー盤にして傑作ライブアルバムです。僕は詳しいことは良く知らないのですが、どうやらJoyce Coolingと共にあのIt's Youを共作しているのが彼女だそうで、2001年にリリースした作品ではJoyce Cooling自身を迎えてIt's Youを再演していたりもするらしいです。さて、このアルバムではそんな彼女が洗練されたピアノ・トリオをバックに素晴らしい7つの演奏を聴かせてくれます。選ばれている曲はいずれも昔ながらのスタンダードばかりなのに、少しも古臭さを感じず逆に新鮮に聴こえるのが不思議。真夜中のカフェで映え渡りそうな高速ジャズボッサにアレンジされたA-1、I Concentrate On Youの込み上げ方は尋常ではないです。Bobbe Norris辺りを始めて聴いた時にも近い感触。途中のバップ・スキャットや長いドラム・ソロも良い雰囲気が出ているし、何より聴いていて客との一体感を感じられるのが素晴らしい。そしてもう1曲とても気に入っているのがB-1のWith A Song In My Heart。軽快にスウィングする高速ジャズ・ワルツの名演です。高層ビルから夜景を見下ろしながら聴いてみたいと思う曲。ちなみにCDでもリリースされている模様、と言うよりも年代的にCDのリリースが主だと思うので、逆にアナログの方が手に入りにくいかもしれません・・・。でもこの音はぜひアナログで持っていたい一品です。
ブラジル人ピアニスト兼ヴォーカリストのタニア・マリアが81年にConcord Jazzに残したアルバムで、僕の中でのブラジリアン・ジャズの金字塔的作品。とにかくA-1のTranquilityが奇跡としか言い様がない出来の良さです。タイトル通り静寂に始まるイントロの繊細なピアノが流れた瞬間、周囲の雰囲気が一瞬にして変わってしまうという魔法のような一曲。曲は次第にヒートアップして、彼女自身のピアノとスキャットがユニゾンで駆け抜けていく怒涛の展開へ。当時ヒップホップに飽きを感じ始めていた僕が、初めてCafe Apres-Midiのコンピで聴いたときには本当に衝撃を受けました。言葉には上手く出来ないけれど、聴けば聴くほどにうっとりするほど良い曲です。そしてA-2のImagineカヴァーもかなり良いです。静かだけれどジャジーなImagine、僕はSvante Thuressonによるヴァージョンも大好きなのですがそれに匹敵する素晴らしさです。天にも昇る心地よさとはこのことを言うのでしょう・・・。そして真夜中に都会の喧騒を優しく暖かく包み込むかのようなA-4の2 A.M.も永遠の名曲。至福のベッド・タイム・ミュージックです。CDでもリリースされているし誰でもわりと簡単に手に入れられると思うので、絶対に聴いてもらいたいアルバムの一枚。ただサバービア掲載の関係でアナログは無駄に高かったりしますが・・・。探していれば1000円~1500円であると思うので、無駄に高いお金を払わないようにご注意ください。大推薦版です。
どことなくエレガントな白黒のジャケットからして既に素敵な80's Jazz Vocalの一枚。オリジナルはそこそこレアな上に値段も多少張りますが、優良再発レーベルCelesteから2001年にリリースされた盤は比較的安価で手に入ります。まぁアナログは限定だったので、探すと何気に見つからないものなのですが・・・。このアルバムと言うとCafe Apres-Midiのコンピにも収録されたA-4のYou're Freeが有名で、その影響からかブラジリアン度が高めな気もしてしまうのですが、意外にも良い意味で普通のジャズ・ヴォーカルらしいスウィンギンな曲もたくさん入っています。特に僕が気に入っているのがA-6のHaunted Heartという曲。クラブ的にどうこうということではありませんが、夜中に一人で聴いていて気持ちいいジャズ・ヴォーカルです。全体を通してピアノ・トリオによる演奏が主ですが80年代ということで録音が良く、各楽器の音色の一つ一つの粒がよく立っている気がします。フェンダーローズが心地よいブラジリアン・フュージョンのB-1、Let The Music Take Youも素晴らしい名曲。この辺りのジャズ・ボッサものは90年代後半~00年代初頭の爆発的な人気に比べればかなり下火となっていますが、やはり今聴いても素直に良いと思えるものが多いです。CDでもリリースされているので是非手に取って見てください。