以前書いたEU内の「序列」を改めて感じさせられるやりとりがすでに始まった感じです・・・
先日のトムソン・ロイターの報道によれば、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのイェンス・ワイトマン独連銀総裁がイタリアのTVインタビューで、次期ECB総裁を決定する際は、国籍を理由に拒否権が行使されることは認められるべきではないとの考えを示したとのことです。
現在のECB総裁であるイタリア人のマリオ・ドラギ氏の任期は2年後の10月まで。ということで、誰がその後継者となるべきか?の議論が本格化するまでは、まだまだ時間がありそうですが、この発言を聞く限り、ワイトマン氏にはけっしてその気がないわけではなさそうな感じがします。つまり・・・次のECB総裁に自分がなることにやぶさかではないから、ドイツ人だからという理由で拒否するなよ、ということでしょう。
独ワイトマン氏こそは現在の世界金融界のなかで、もっともすぐれたセントラルバンカーのひとりだと思っています。その理由はこちらの記事で詳述したとおり―――個人的には三顧の礼をもって日銀の次期総裁にお迎えしたいくらいです。同氏は今月初め、ECBは金融政策のスタンスを引き締めるべき正しい瞬間を逃すことのないように注意すべき、と語りましたが、これは来月、現行の超緩和的な政策(QE)の拡大か縮小化を決定するとみられる(?)ECBに対して「いいかげんQEを終わらせようぜ」という働きかけの意を含んでいると考えています。このあたりも同氏のブレの無い姿勢が確認できるところです。
ではEU圏の他国はそのへんをどう思っているのでしょうか。上記インタビューのなかでイタリアのレッタ元首相が最近、ワイトマン氏がドラギ氏の後を継いだら「災害」(disaster)になると語ったことが引き合いに出されています。さらに先日、ドイツのシュピーゲル誌は、フランスとイタリアが、ドイツ人がECBの長になることは構わないが、ドラギ氏のQEをしばしば批判してきたワイトマン氏は受け入れられないとの立場を示したと報じています。これらから判断する限り、ワイトマン氏・・・はもちろん、独連銀の幹部が次のECB総裁になるのは非常に難しそうです。というのも以前から書いているとおり、インフレファイターのDNAを引き継ぐ独連銀はQEそのものにはじめから否定的なスタンスだから。
・・・となってくると、仏伊の本音は、ドイツにECBの総裁ポストを渡すわけにはいかない、ということなのでしょう。両国ともに・・・QEという「麻薬」にまだまだ頼りたいでしょうからね・・・