今月下旬以降の欧州の金融情勢から目が離せなくなってきました。どうやら欧州中央銀行(ECB)が欧州版QE(Quantitative Easing:量的緩和策)を発動しそうだからです。
欧州では長引く景気低迷に加え、直近ではデフレ懸念が強まったとして、おカネをマーケットにばらまいてインフレ率を高めようというECBの金融政策=QEへの期待感が市場関係者らのあいだで高まっています(で、その期待を一番強く抱いているのが、大西洋の向こう側のアメリカだったりします。部外者なのにどうしてなんだろう???)。その期待に応えるべく(?)、ECBは昨年12月の定例理事会で、現在は約2.2兆ユーロのECBのバランスシートを1兆ユーロほど拡大することを検討したそうです。その際に買い入れる資産は各国の国債なのだとか・・・。ということは財政ファイナンス解禁?
で、ECBは今度(22日)の理事会でこのQE開始を決議するらしい(?)のですが・・・どう予想しても、これがスムーズにいくとは思えません。その具体的な規模や内容などのどれをとっても各国の意見が対立しそうなものばかり。そのせいか、ECBとしてはとりあえずQEを近々やります!と宣言しておいて、その間に詳細を詰め、実質的な国債購入スタートは早くても3月以降にする気だろう、みたいな観測もあるようです。
・・・とはいうものの、このあたりの決定には欧州一の経済大国でありECB最大のスポンサー(第一位の出資国)であるドイツの意向が大きく影響するでしょう。で、そのドイツですが、QEは必要ない、という以前からのスタンスをいまも崩していないもようです・・・。
まあドイツの現況をみればそれは当然でしょう。べつにQE=財政ファイナンスなどをやらなくてもドイツ政府は超低金利で資金調達ができているし、QEによってユーロ安にしたところで、ドイツの貿易相手の多くは同じ欧州諸国(2012年:輸出69%、輸入70%)だから通貨安を利した輸出振興効果はほとんど期待できない。足元の原油安はリスクではなく企業や家計に大いにプラス。逆にユーロ安は原油等の輸入インフレ=悪いインフレを招くからむしろ実体経済にはマイナス―――などなどが考えられるわけで・・・(どこかの国と同じ・・・でもそこは派手にQEやっているけれど・・・)。したがってQEは不要―――ドイツのこの判断は至極真っ当です。オランダとかオーストリアなどの他のEU諸国もドイツに同じでしょう。
しかし、だからといってドイツ等のそんな事情だけでECBが金融政策を決められないところがユーロ圏のフクザツなところ。同じ仲間のなかにはアメリカ並みに麻薬、もといQEを渇望している国々がいるということです。