ウクライナ危機は、同国東部の要衝マリウポリの陥落・・・って、事実上ウクライナ側の敗北―――ロシア側の勝利―――で重大な局面を迎えたといえるでしょう。つまり・・・もはやウクライナにはマリウポリ・・・に象徴される、ドンバス~クリミアに至るロシアの支配地域を軍事的に奪回することがほぼ不可能となった、ということです。では交渉で・・・って、いまさら(優位に立つ)ロシアがウクライナの提案(上記エリアにおけるウクライナの主権回復等)に乗るわけがありません。ということでウクライナに残された選択肢は次の2つ。1つ目は、ロシアが主張する停戦合意の条件―――クリミアおよびドンバスのロシアの主権を認めることと軍事的な中立を宣言すること―――を受け入れること。そして2つ目は・・・無茶を承知で?強大なロシア軍を相手に失地回復の戦いを継続すること・・・って自分たちだけで。どちらにせよ、究極の選択になりますが・・・
いっぽうのロシア。たしかに局地戦などでは手痛い打撃を食らった・・・とは思えます・・・が、以下から、かの国はおおむね所期の目的を達成しつつあるといえるのではないでしょうか。
そのあたり、まず軍事作戦面ですが、ロシアは上記のようにウクライナ南部および東部のロシア系民族比率の大きな地域の実効支配をいっそう強固なものにできそうです。NYタイムズなどによれば、2月の軍事侵攻前はロシア系分離主義者の支配領域はドンバス(ドネツク州とルハンスク州)の1/3だったのが、いまやロシアはドンバス全体を完全にコントロール下に置きつつあるとのこと。そしてロシアはドンバスを得ることで本国と陸続きとなるクリミア(2014年に一方的に併合)の一体化をいっそう推進できるでしょう。しかも、かの地域の住民の多くは、ロシアのこの動きをむしろ歓迎し、積極的に協力するはずです・・・って彼ら彼女らはロシア系ですから、まあ当然ですが。かくしてドンバスとクリミアはどんどんロシア化していくことに・・・(?)
次に経済面。こちらは―――たとえば(わが国を含む)欧米諸国が課したエネルギーに関する経済制裁などは―――ロシアにとって上記の軍事面以上のダメージになったと推察される・・・ものの、ロシアはこれを何とかしのぎ切りそうな気配となっています(?)。そのへんで、かの国を大いにアシストしているのが原油・天然ガス価格の高騰です。これ本当はこちらの記事に書いたところに根本的な原因があるのですが(?)、ともかく、そのおかげでロシアのエネルギーの売り上げが急増しています。BBC等によれば、同国のEU向け化石燃料の輸出額は2021年の月間120億ユーロから直近は220億ユーロへとほぼ倍増したとの由です。このあたり上記制裁(で原油・天然ガスの需給ひっ迫リスクが高まって価格が大きく上昇したこと)が、かえってロシアにいっそう多くの収益がもたらすこととなったわけで、何とも皮肉なことになっていますが・・・
(続く)