(前回からの続き)
「Brexit」(英国のEU離脱)を契機に、英国から撤退しつつあるホンダなどの日本企業が教えることのひとつは、英国には、こうして各社に出ていかれてしまったあとに、チャンス!とばかりに国内需要を取り込み、そして外国に売れるモノを作る能力やブランド力を有する自国企業が見あたらないということ。したがって、本邦メーカーが英国から出て行ってしまったら・・・同国の経常収支は単純に悪化するだけです・・・
このあたりは自動車に限らないようです。英国の主要輸出入状況ですが、JETROのデータ等によれば出超は「石油・同製品」「化学製品」など数項目に過ぎず、前述のように日系自動車3社が同国の輸出押上げに頑張っても「道路走行車両」は輸入超過なのはもちろん、大半の品目が英国の入超となっています。個人的に、とくにヤバいんじゃないかと感じるのは、衣料品とか食料品といった、日々の国民生活に必須の物品までが大幅な入超となっていること。たとえば「食料品・動物」は244億ポンドの「赤字」だし、野菜の80%以上はEUからの輸入品なのだそう。自動車等が十分に作れないのなら、せめて食料とか衣類くらい自給できていないと、いざというときマズい事態になるわけですが、以下のとおり、どうやらそのとおりになっていきそうな・・・
英国・・・民の最大かつ本質的な危機はこのへんにあると思っています。つまり、これまで同国経済をそれなりに支えていた日本などの外国企業が英国から退出する結果、同国の国際収支が一段と悪化し、通貨「ポンド」がユーロやドルに対してさらに下落して・・・インフレが加速すること。具体的にはガソリンとか食べ物などの生活必需品の価格が高騰して、国民生活を大いに圧迫することです。これを緩和するべくイングランド銀行(BOE;中銀)は金融引き締め(利上げとか)に踏み切るのかもしれませんが、逆にこれは(ロンドンの不動産などの)英国の資産バブル、そして同国の金融システムを崩壊させるトリガーにもなりかねないから、実際にはBOEは身動きが取れないでしょう。したがって英国民はインフレを甘受するしかなさそうです・・・(?)
・・・っても、その苦しみを政府やBOEのせいにばかりはできませんよ。たしかにこの場合のインフレはポンドの一段安がもたらすものですが、その本質的な原因はBOEの金融政策にではなく、英国の慢性的な経常赤字体質にあるわけです。そして英国をそんな国―――自動車等はもちろん野菜すらも外国品に依存し、自らは輸出競争力のあるモノも輸入代替品も作れないような「何もない」国―――にしてきたのは、ほかならぬ英国民一人ひとりなのですからね・・・