経済活性化の成長戦略が一向に見えてこない安倍政権では、民間の経営者などを加えた「産業競争力会議」が、働き方の規制緩和を言い出している。
規制が産業の自由度を阻害しているから、新産業は生まれにくく、事業活動にブレーキをかけているコトが、経済成長の停滞を招いているとの認識だ。
だから、働き方の自由度を上げる策として、「労働時間にかかわらず賃金が一定」という制度を一般社員も対象で設ける、との提言である。
これを言い出している経営者の代表は、要するにもっとやる気のある社員を、時間の制約を取り払って、「モーレツ社員」として会社に尽くせ、とする。
これが、その会社だけの都合を優先している「旧時代の感覚」であることを、少しも気がついていないで、会社勤めをしたこともない安倍政権の世襲政治家は、「ごもっともで貴重な提案」だと受け入れる。
確かに20世紀では、いわゆる管理職になれば、労働時間の制限もなくなり、会社の都合次第で、休日出勤も深夜残業をいとわずに働く場合があった。
それで、頑張る社員が多ければ会社の仕事は成功して、世界で勝ち残れる企業に成長してきたのは事実である。
だから、「過去の栄光を取り戻すには、モーレツ社員を増やせ」の単細胞だ。
これでは、またまた、子育て世代への圧力となって、子供を授からない、育てるにしても一人だけ、いや、結婚もしない、という若年層を増やす効果だけだ。
いわゆる「モーレツ社員」の本場である東京都の若年世帯が、子育てを敬遠しているので、【特定出生率が1.1以下】になっている事実をどう考えるのか。
東京都の様に、若い人たちを引き寄せる魅力のある都会生活が、子育てに不向きな育児環境と、職場も仕事優先一辺倒にむけて、社員の風潮が流されていく。
これで、経済活性化が起きたとして、その代償に【少子化は強化】される。
くだんの「産業競争力会議」の経営者のエリートたちは、会社が栄えて行くだけしか、眼中にはない様である。
会社が儲かれば、経営資源としての資金や資産が増えるし、株価も上昇して会社の価値が上がるから、経営手腕を高く評価されて名声があがる。
その代わりに、都会の若年層から子育ての機会と環境を奪い取り、人手不足になれば、地方から新たに若年層を吸い寄せて、地方の経済は衰退させる。
それで一部の産業競争力は強化されるが、日本全体では少子化と地域社会の衰退で、「消費力の減退と需要不足」によって、経済はさらに縮小方向になる。(続)