日本の経済が長い間、停滞したままデフレ状態に落ち込んで20年近くなる。
その対策として、超金融緩和による株式バブル、富裕層資産バブルを起こして、気分的な景気浮揚には成功している様だ。
デフレ状態に落ち込んだ最大の原因は、【賃金の継続的引き下げによる購買力の低下】で、国民に消費力が落ち込んだママの【賃金デフレ】である。
安倍政権は、円安誘導によって業績が一時的に回復した輸出関連企業に、ベースアップの要望をしてみたが、企業はホンのわずかだけの賃金アップに留めた。
この様な微々たる賃金上昇では、「4月からの消費税アップ」によって、実質賃金はマイナスであるから、消費意欲縮小せざるを得ない。
一次的な株高景気や輸出企業の業績回復はバブルであるから、そのうちに凋んでしまうのは確実である。
そこで、安倍政権は昔からの常套手段である[ケインズ政策]を手広く始めた。
これは、マスメディアで報道されている「各地での公共事業」のことを言っているのは当然であるが、それだけではない。
【隠された公共事業による総需要の補填】が、安倍政権の特徴である。
国土強靭化と称して、従来では公共事業の対象にならなかった土建事業も、大量の国債を発行して予算の大判な振る舞いをしている。
これらは、万が一の災害を減らす意味合いで、それなりの意義はあるが優先度が高い事業とはいえず、経済への波及効果はほとんどない。
そこで、安倍政権は、原発の安全対策も【公共事業の一部である】と想定して、電力各社が「再稼働に向けて安全対策工事」を目論んでいることを容認した。
原発の安全対策費用は、2013年1月では約1兆円であったが、安倍政権は原発再稼働の容認に前向きに転じたために膨張し始めた。
2014年1月で約1.6兆円に膨張し2015年には、2兆円以上になる。
特に、中部電力の浜岡原発の安全対策は3000億円以上になり、それが実施された後に、2016年1月に再稼働の承認を得ようとしている。
この日本中で一番危険性の高い、且つ、大事故の被害が甚大であることが予想される原発を、あえて再稼働させる必要性は全くないのに、である。
これは、「公共事業による総需要増加」の効果を目論んで、無駄に終わることを承知の上でも、「穴を掘って、そのあと埋めるだけ」の事業のなのである。
これを「ケインズ政策のムダ」と言われる典型的な【最悪の景気対策】である。