12月31日の午後7時に50歳男性が救急外来(発熱外来)を受診した。12月30日から発熱があったらしい。午後6時に39.0℃の発熱があり、頭痛・咽頭痛・倦怠感・関節痛もあった。
インフルエンザとコロナの迅速試験は陰性だった。家族や周囲に両疾患に罹患した人はいない。症状は感冒症状(インフルエンザ疑い)なので、アセトアミノフェンで経過をみるところだった。
患者さんが肺炎が心配なので、検査してほしいと希望した。当直は皮膚科医だった。血液検査と胸部CTを行った。白血球4000・CRP0.8とウイルス感染らしい結果だった。
胸部CTでは、左肺下葉背側の胸膜下に淡いすりガラス陰影がありそうと、撮影した放射線技師さんが指摘した(皮膚科医は謙虚なので、教えて欲しいと依頼する)。
その日の日直だった内科医(その日の内科当番)に電話で相談すると、抗菌薬内服を処方するよういわれた。レボフロキサシン500mgを2日分処方した。
1月1日の午前中にもう1回迅速検査をすることにしていた。やはりコロナとインフルエンザは陰性だった。その日当方が日直で出ていたので、相談された。とりあえず、休み明けまで抗菌薬を継続して、1月4日に内科外来を受診してもらうことにした。
1月3日は当直をして、4日は午前中救急当番(発熱外来も兼ねる)だった。発熱外来は時間を決めて、まとめて一定数の受診者の検査をする。発熱外来担当の看護師さんから受付が終わると、迅速検査をまとめて入力するので、この患者さんの検査も入れていた。
後で、レボフロキサシンが処方されていた31日から受診していた患者さんと気づいた。ところが、その日の迅速検査でインフルエンザA型陽性と出た。発症が12月30日なので6日目になる。
欧米ではインフルエンザに罹患してもすぐには受診しないそうだ。症状が続くと発症5日くらいで受診するので、迅速検査(抗原検査)が陽性にならない。それで迅速検査は推奨されていないということだ。
日本では発症当日か翌日の受診なので、迅速検査が陽性になりやすく、検査として信頼されている。発症6日目だと、肺炎併発で入院なる時くらいしか検査はしない。発症6日目でも陽性になるものだと思ったしだい。
その日今更だが(48時間はとっくに過ぎている)、抗インフルエンザ薬としてペラミビル(ラピアクタ)を投与した。(点滴と血液検査を提出していたので、そのまま点滴静注にした)
その日もまだ発熱があり、すっきりしないという。胸部X線(正面・左側面)も行ったが、肺炎像は指摘できない。血液検査は白血球2900・CRP0.5とウイルス感染症らしい結果だった。
食事摂取もできるし、入院は希望しないというので、今更投与の抗インフルエンザ薬の効果をみてもらうことにした。(入院になる場合は48時間過ぎても投与可能とされる)調子が悪い時は翌5日に受診するよう伝えたが(また3連休になるので)、来なかった。
胸部CTの陰影も有意だとすれば、ウイルス(インフルエンザ)による陰影なのだろう。COVID-19肺炎は有名だが、インフルエンザでも胸部CTを撮りまくれば、一定数のウイルス性肺炎像(軽度の淡いすりガラス陰影)はあるのだろう。