なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

胸部単純X線ではわかりにくい

2020年05月12日 | Weblog

 月曜日に内科再来を診ていると、外科医から連絡がきた。大腸癌の術後再発(腹膜播種)で化学療法をしている50歳代後半の男性が、肺炎になっているという。

 胸部X線・胸部CT検査と血液検査が行われていた。右肺のS10に浸潤影を認める。白血球4900・好中球60.0%でCRP9.4だった。このくらいなら外来治療でいけるだろうと思った。

 その日は地域の基幹病院呼吸器内科の若い先生が内科外来に来ていたので、外科のコンサルトをお願いした。当方が診るよりは信用されそうだ。

 症状は前日からの右背部痛(胸膜痛)が出現して、微熱もあった。咳は出ないそうだ。

 ニューキノロンで外来治療が開始された。オグサワ(オーグメンチン+サワシリン)でもよさそうだが、癌化学療法中ということを考慮された?。外科医はβ-d-グルカンやカンジダ抗原も提出していた。

 それにしても胸部単純X線(正面)では肺炎像を指摘しがたい。見る人が見れば横隔膜陰影のところに指摘できるのだろうか。側面のX線があればわかるかもしれないが、側面を追加するくらいなら(血液検査の炎症反応亢進で肺炎が疑わしい時は)胸部CTで診た方がわかりやすい(推奨はできないが実践的)。

 

 

 この若い先生は大学病院の所属だが、人数分の給与が出ないために、数か月交代で市中病院に出向するという形になっている。週1回は当院に来てもらって、その分の給与を当院も負担する。現在当院に来ている腎臓内科の若い先生も同じ立場になる。大学での研究生活も大変だ。

 

 

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高浸透圧高血糖症候群

2020年05月11日 | Weblog

 金曜日の朝に高血糖(775mg/dl)の85歳女性が救急搬入された。ふだんは内科医院でDPP4阻害薬の処方を受けている。左肺炎があり、感染症(+脱水症)による増悪だった。

 当直の外科医が、内科当番だったの若い先生を呼んでいた。さらに治療はどうしましょうかと、当方に連絡がきた。

 患者さんは会話ができるが、ぼんやりしている。もともと認知症があり、失見当識の有無を判断しがたい(週明けの回復した状態からはレベル低下だったとわかる)。

 血液ガスはpH7.450・PaO2 75.6・PaCO2 35.5・HCO3 24.3・BE 0.7とアシドーシスはなかった。血清Na 138・血清K 5.5で、BUN 57.8・血清クレアチニン1.38なので、血漿浸透圧(推定)は351mOsm/Lになる。

 1)血糖値600mg/dl以上、2)血漿浸透圧350mOsm/L以上、3)pH7.3以上、HCO3- 18mEq/L以上と、高浸透圧高血糖症候群(HHS)の基準を満たしている。まあ著明な高血糖があって、(ケト)アシードーシスではないので単純にHHSになる。

 高齢者で心房細動・心不全があるので、生理食塩水の点滴は1000ml/時の半分になるが、もっとゆっくりにして3時間で1000mlにしていた。救急を診ていた外科医がヒューマリンR12単位をすでに皮下注していたので、3時間後の血糖(と電解質)をみた。

 血糖がほとんど変わらず、生食50ml(49.5ml)+ヒューマリンR50単位(0.5ml)を2ml/時(2単位/時)にして開始した。速効型インスリンは0.1単位/kg/時になっているが、糖尿病ケトアシドーシスではそのまま5単位/時(5ml/時)で使用するが、HHSの場合は高齢者が多いためもあるが2単位/時(2ml/時)で使用している。

 夕方には血糖275mg/dlとなって、ソリタT3・500mlに切り替えた。ヒューマリンRを混合して(1単位/グルコース5gだが、若干へらして4単位/500ml)、血糖測定の結果をみてヒューマリンR皮下注で補正とした。

 補正のヒューマリンR皮下注量は少なめにしていたが、血糖が561mg/dlと想定外に上昇してしまい、点滴混合量と皮下注量を増量してもらった。その後は血糖150~250mg/dlで推移していた。

 入院後は解熱して、3日目の今日は炎症反応も軽減していた(白血球12300から7000、CRP15.0から2.5)。内服薬は飲めるので大丈夫そうだが、慎重にST介入で嚥下訓練をしてもらうことにした(左下葉背側で誤嚥性肺炎疑い)。

 夫と二人暮らしで患者さん本人は到底インスリン注射はできない。どうしようもなければDPP4阻害薬+SU薬ごく少量(グリメピリド0.25mgかグリクラジド10㎎)になるが、できれば夫に1日1回持効型インスリンを注射してもらってBOTにしたい。

 

 

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透析患者の肺炎

2020年05月10日 | Weblog

 金曜日に、発熱外来を担当していた外科医から連絡がきた。透析を受けている60歳代後半の男性が、1週間前から発熱が出没していて、今日検査したところ右肺炎を認めたという。

 透析患者さんは、透析日には自宅で体温測定をして、申告することになっている。この患者さんはどうも適当に言っていたらしい。その日は発熱があることが発覚したのだった。

 

 患者さんの名前を聞くと、懐かしい名前だった。6年前まで糖尿病で内科外来に通院していた。発症後に治療を受けていなかった(放置期間が長い)ことから、腎症が進行していた。透析前の血糖コントロールはむしろ良いという状態だった。

 腎臓内科併診から透析導入になった。そのころ一人で腎臓内科・透析を診ていた先生に加えて、大学医局から短期間腎臓内科の若い先生が常勤で来ていた。その先生が患者さんに透析導入の話をしたところ、透析はしないと言い張った。

 透析導入が保留となり、その若い先生が当方に「説得できなくてすみません」、と言われた。いやいや、むしろこちらの方が、すみませんだった。その後、なんとか説得に応じて血液透析が開始となった。(奥さんの、家族のためにも受けてほしいという説得が効いた)

 1年経過した頃に、この患者さんのことでもめていた。透析を拒否してしばらく病院に来ていなかった。病院から何度も電話を入れて、奥さんは申し訳ないと謝っていたが、本人は来なかった。結局呼吸困難になって、病院に駆け込んできて透析が再開された。

 胸部X線・CTを見ると、外来で治療できそうだ。入院は嫌がるので、まず外来治療を開始してもらうことにした。透析患者さんでも使用できる完全肝代謝のアベロックス400㎎の処方をお勧めした。

 

 

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甲状腺機能亢進症

2020年05月09日 | Weblog

 金曜日の昼に、内科新患を担当している先生(大学病院からのバイト)から、患者さん2名の診療依頼が来た。まだ検査結果は出ていないが、入院も含めて診てほしいということだった。

 そのうちの一人は8kgの体重減少(半年くらいで)と倦怠感で受診した60歳代後半の女性で、随時血糖312mg/dl・HbA1c12.4%の結果だけ出ていた。膵癌が疑われるので、腹部造影CTを入れたという。

 放射線室に患者さんを診に行くと、ちょうどCT中だった。膵癌はなく、胸腹部にはこれといった異常はなかったが、びまん性甲状腺腫がある。CTが終わって、患者さんと対面すると、確かに一見してびまん性甲状腺腫だった。

 30年前に他院(甲状腺手術でも有名)で甲状腺機能亢進症の手術を受けているという。亜全摘には見えないが、部分切除ということはあるのだろうか。

 そのうち血液検査の結果が出て、甲状腺機能亢進症だった(TSH感度以下、FT3・FT4高値)。(甲状腺機能亢進症の既往歴のためか、症状から必須の検査と判断したのか、甲状腺機能検査が出されていた) 多分Basedowだと思うが、抗体検査の結果をみないと確定はできない。外注検査のTRAB・TSAB(抗Tg抗体・抗TPO抗体も)を提出した。甲状腺が専門の外科医に相談すると、このくらいなら結果が出るまでβブロッカーのインデラルで経過をみていいという。

 心電図では心房細動だった。両手を出してもらうと、振戦がある。昨年の健診結果を持参していて、昨年はHbA1c6.4%で一昨年は6.0%だった。甲状腺機能亢進症だけここまで血糖が上昇するか疑問ではある。

 診断としては、甲状腺機能亢進症とそれによる糖尿病の悪化、心房細動だった。入院を勧めたが、今日は無理と言われた(隣の市から来ていた)。元気な方で(甲状腺機能亢進による興奮状態もある?)、来週ならというので、4日分の処方を出して月曜日に入院とした。

 

 

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うつ病と思われる

2020年05月08日 | Weblog

 連休の終わりに、62歳代前半の男性が様子がおかしいとして救急搬入されていた。一人暮らしで現在仕事はしていない。数日前から、近所の人に様子がおかしいと思われていたそうだ。前日には、無断で近所の人の敷地内に入り込んでいた。

 その日も他所の家の敷地内に入り込んだりしている。橋の近くで長時間ぼおーっとしているのを近所の人が発見して、警察に通報した。受け答えがおかしいというので、救急要請されて、当院に搬入された。

 暑い日で、筋原性酵素の上昇があり、水分も取らずに長時間屋外にいたことから、熱中症として入院になった。頭部MRIで異常は認めなかった。日直は循環器科医で、内科当番の若い先生の担当になった。

 点滴で検査値の異常は軽快して、食事摂取もできた。入院後から不審な動きがあり、日中から夜間も病棟内を歩き回っていた。自分からは発言しない。問いかけても、小声でぼそぼそとしゃべるだけで、会話にはならない。看護師さんに注意されるとそれには従う。前日の夜間は体幹抑制になっていたが、自分ですり抜けていた(高齢者では抑制できるが、この年齢では無理)。

 そして昨日は、主治医と相談するため姉が病室に来ていた。急にモニターのコードで首を吊ろうとした。姉が大声を上げたので、あわてて病棟の看護師さんが行って止めたのだった。

 若い先生から連絡が来て、病室に行ってみた。患者さんは車いすに座ってうなだれていた。話かけると、小声で答えるが、まず「わからない」から始まる。こちらも小声で訊いた(春日武彦流?)。

 「死にたいと思うか」と訊くと、「もっと前に死ねばよかった」と言う。 「いつから調子が悪かったのか」と訊くと、最近ではなく「もっと以前から(昨年か数年前?)」と言う。身体的に困ることはない。(弟もいて、数年前から電話で何度も同じことを繰り返して言うの気にしていたそうだ)

 うつ病で自殺企図なので、精神科救急になる。地域の精神科病院に連絡したが、ここは精神科医が直接は出ない。まず精神保健士さんが出て、病状を聞いたうえで先生に相談してみますという。しばらく待って返事がきた。急性期を診る病室がないので、精神医療センターに相談して下さいということだった。 

 保健所の依頼で新型コロナウイルスのPCR検査が入っていたので、精神医療センターには若い先生に連絡してもらうことにした。今日は入院が立て込んでいて難しいが、翌日なら受け入れ可能、と言われたそうだ。他の精神科を探すのも難しく、一晩当院で経過をみて、翌日の転院搬送とした。

 姉がそのまま個室で付き添ってくれた。前夜に不穏でセレネース1A静注しているので、その日は(前日から使用していた)ベルソムラにデジレルを追加して、就寝前にセレネース1A静注を行った。なんとか一晩過ごして、転院となった。

 患者さんがまだ幼児の時に、母親が自殺している。姉は育児ノイローゼと表現していたが、その姉は母親の虐待で両下肢が不自由なのだった。こちらはうつ病とは違うようだ。

 

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連絡のない当番日

2020年05月07日 | Weblog

 昨日は内科当番なので、入院があれば連絡が来るが、日中も夜間も内科入院の連絡はなかった。

 

 内科系日直は当院の消化器科医で、頸椎偽痛風の92歳女性を自分で入院させていた。患者さんは内科医院に通院していて、心気症(現在は身体症状症)の傾向があり、これまでも休日夜間に当院の救急外来を時々受診していた。

 今回は本物?で、後頚部痛と手関節痛で受診した。頸椎CTで軸椎の歯突起周囲に石灰化を認めて、頸椎偽痛風(Crowned dens syndrome)だった。白血球14500・CRP30.2と著明な炎症反応上昇を呈していた。肺炎や尿路感染症はない。

 NSAIDs(セレコックス)の処方にステロイド(プレドニン20mg/日)も併用していた。今日は元気になって食欲も良好だった。

 他疾患鑑別のために血液培養2セットを提出したいところだが、腰曲がりで心窩部を中心に湿疹ができるほどの超高齢者で、20mlを2か所から採取するのは実際には難しい。

 NSAIDsだけで2-3日経過を診たい気もするが、プレドニンの短期間投与(2日おきに漸減して中止)もありかもしれない。(炎症反応が想定外に高値だったことでの使用だろう)

 

 本来の?消化器科の仕事もしていて、午後に心窩部痛で受診した急性虫垂炎の56歳男性も外科に入院させていた。その日の朝から心窩部痛が発症して、疼痛が強くなって受診した。

 前日夕食は焼肉で、当日昼もウナギを食べていた。心窩部に圧痛があり、背部に放散と記載していたので、最初は胆石を想定していたのかもしれない。

 血液検査では白血球11100・CRP0.1と発症時らしい検査値で、腹部CTでは著明な脂肪肝を認めるものの、胆道系には異常がなく、虫垂の腫脹と糞石を認めた。周囲脂肪織の炎症像は目立たない。緊急手術を要するほどではないと判断していた。

 今日は限局した右下腹部痛になって、白血球18200・CRP3.2と炎症が進行していた。38℃の発熱もあり、手術となった。

 

 

 

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フィダキソマイシン

2020年05月06日 | Weblog

 消化器科でCD腸炎の74歳女性を治療していた。苦戦しているようだ。

 この患者さんは3月初めと中頃に当院眼科に2回短期間入院して、両側の白内障の手術を受けていた。眼科の白内障手術はクリニカルパスで行われる。抗菌薬内服(セフカペンピボキシル塩酸塩水和物)を3日間内服することになっていた。

 2回目の入院中から下痢が続いていた。糖尿病で市内の内科医院に通院しているので、下痢はそちらの医院を受診していた。最初は整腸剤(ミヤBM)が処方されて、症状が続いたので、その後に抗菌薬(グレースビット)が処方された(感染性腸炎として)。症状が続いて、3月25日に当院の消化器科外来を受診していた。

 Clostridioides difficile(CD)の抗原・トキシンが陽性で、CD感染症(CDI)と判明した。食欲低下もあり、受診日に入院となった。メトロニダゾール(フラジール)内服が開始されたが、症状が続くということで3日目からはバンコマイシン内服も併用となった。

 もとから発熱はなかった。入院時の検査で(白血球6800・)CRP13.4と、炎症反応の上昇を認めた。腹痛・下痢は軽快して、数日後の食事摂取は良好となっている。

 症状軽快して、4月4日に退院した。退院前の検査は、血液検査ではCRP4.0、便検査はCD抗原陽性・トキシン陰性だった。(メトロニダゾールは1日間、バンコマイシンは8日間投与。通常、軽快した場合はCD検査を提出しないことになっている。軽快時のCD抗原陽性・トキシン陰性の意味は判断できない。)

 4月13日にまた下痢で外来受診している。白血球8700・CRP15.2と炎症反応も上昇していたが、CD抗原陽性・トキシン陰性だった。臨床的にCD再燃と判断して、メトロニダゾール・バンコマイシンが再開された。

 5月1日にも症状が続いていた。血液検査では白血球11000・CRP0.4で、CD抗原陽性・トキシン陽性と出た。そこで処方を変更して、フィダキソマイシン(ダフクリア200㎎錠を1日2回)が開始された。これで治ってほしいが。

 フィダキソマイシンを使用するのは当院では初めてだと思う。

 

  

 

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連休中の風景

2020年05月05日 | Weblog

 今日は当院が新型コロナウイルス感染症PCR検査の当番なので、午前中は院内で待機している。県内の発生は幸い治まっているので、検査なしで終わりそうだ。

 当院のある県南部では新型コロナウイルス感染症の発症はない(PCR検査で確認したうちではということ)。大学生が罹患したという話もあったが、住所が県庁所在地なのでカウントされていないらしい。まだ多数の患者発生が続いている東京に比べれば、落ち着いた状況ではある。

 当院で施行したPCR検査も20数例にとどまっている。連休中に毎日しなくてもよさそうだ、ということで5日にしますと保健所に届けていた(緊急で必要な時は要相談)。地域の基幹病院は3日と4日に行う、と保健所に連絡がいったそうだ。

 

 2日は日直で、終わった後に院内に泊まっていた。3日の朝に94歳女性が熱発した。この方は誤嚥性肺炎で入院して、軽快後に嚥下訓練を開始していたが、また肺炎を来して経口摂取は中止した。家族の希望で高カロリー輸液を開始していた。

 長男の嫁が、これでお願いしますといって、自分の首を指さした。高カロリー輸液のことをよく知っているのだった。「首を動かしてしまうので上からは無理かもしれない、足の方ですか」ともいっていた。

 実際は股関節拘縮と陰部湿疹で、大腿静脈からのCVカテーテル挿入は断念した。内頚静脈がとっても見やすかったので、若い看護師さんに首をおさえてもらって、そこから挿入した。本当は、上腕からのPICCが好ましいのだろう。

 肺炎の悪化時はDNARの方針にはなっている。94歳の高カロリー輸液の可否は病院では決められないので、希望に合わせるしかない。

 酸素飽和度の低下はなく、尿路感染症(神経因性膀胱で尿カテーテル留置)と思われた。CVカテーテルが挿入されているので、血液培養も2セットも提出して、尿一般沈査・尿培養・胸部X線を行って、抗菌薬を開始した。その後解熱していたが、尿培養の結果はまだ出ていない。

 

 3日の昼頃に地域包括ケア病棟に入院している75歳男性が熱発した、と報告がきた。

 この方は心房細動からの脳血栓塞栓症(左中大脳動脈領域に出血性梗塞)で地域の基幹病院脳神経内科に入院した。経口摂取はできないと判断されて、当院に治療継続のため転院してきた。転院時は、内頚静脈からCVカテーテルが挿入されて、内服薬注入のための経鼻胃管も入っていた(抗凝固薬は中止)。点滴は末梢用のもので、それも経過をみて調整して下さい(つまり看取り方向)とあった。

 転院日の午後から、悪寒戦慄・高熱が発症して、結果的にはCVカテーテル関連血流感染だった。何とか軽快したころに、右下肢の脈に血栓塞栓症が起きた。下肢切断は困難で、保存的に診るしかなかった。脳出血を来す可能性はあるが、抗凝固薬を再開した。下肢の壊死からの感染症併発で悪化すると思われたが、乗り切っている。

 抗凝固薬は血便が出たり、血尿が出たりした時に休止して、現在投与中。右鎖骨下静脈からCVカテーテルを挿入して、高カロリー輸を行っていたが、その後も2回高熱が出た。血液培養2セットと尿培養を提出して、幸いに血液培養は陰性だったが、尿培養からは緑膿菌が検出された(PIPCに感受性あり)。

 さらにその後に嚥下訓練を行って、嚥下調整食3まで食べることができた。連休明けにはCVカテーテルを抜去する予定にしていた。尿混濁が目立っていたので、今回も多分尿路感染症でいいかとは思う。培養提出後に抗菌薬を開始して、解熱していた。

 今回もいつものように?悪寒戦慄から始まったが、今回は眼球が上転して数十秒痙攣も起きたという。看護師さんに確認したが、悪寒戦慄だけではなくて、あれは痙攣ですという。症候性てんかんとしてイーケプラ(点滴静注で500㎎を1日2回)も開始して、その後は治まっている。

 

 休日は喫茶店を3軒くらいはしごするのが好きだが、この時期はできなくなっている。医局のコーヒーを飲みながら、今日は夕方まで病院にいて、「かぜ診療マニュアル 第3版」などを読んで過ごすことにした。「喫茶店〇〇(病院名)」と称している。

 

 

 

 

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蜂刺傷

2020年05月04日 | Weblog

 2日土曜日は内科の日直で病院に出ていた。誤嚥性肺炎の94歳男性が、内科クリニックからの紹介で救急搬入された。救急室に先に搬入された患者さんがいて、外科医(大学病院からのバイト)が診察していた。

 蜂刺傷の81歳男性だった。職業は養蜂家。午後3時過ぎにミツバチに口唇を刺された。20分後に近医を受診したが、全身冷汗があり、血圧が80mmHgだったらしい。生食500mlで血管確保をして、ソル・コーテフ200mgを点滴静注していた。当院に救急搬送依頼をした。

 救急隊到着時は血圧132mmHgと回復していたが、酸素飽和度が92%(室内気)で酸素吸入が開始された(酸素5L/分で95%)。当院搬入時は、意識清明で、膨疹のかゆみを訴えていた。血圧155/69mmHgで、酸素飽和度も改善して酸素なしでも97%になった。

 外科医がポララミンとファモチジンを静注した。その日の外科当番医(院内にいた)に連絡して、入院で経過観察となった。

 これはアナフィラキシーショック。ソル・コーテフには速効性がないので、生食500mlの点滴が効いたのと、自然経過での回復もあったのだろう。結果オーライではあるが、内科医院受診時にアドレナリン0.3mg筋注が必要だった。当院受診の時点ではどうか?。血圧は回復していたので、喘鳴があればした方がよいか。

 これまで蜂刺傷で近医(今回受診した医院を1回、近所の別の医院を3回)を受診している。病院への搬送はなかった。今回は、退院時にエピペンが処方される予定だ。

 

 

 

 

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受療行動を用いた診断推論

2020年05月03日 | Weblog

 「内科初診外来ただいま診断中!」(中外医学社)を出された鋪野紀好先生が司会進行を担当されている。このセッションでは、全身倦怠感の鑑別と、本物の筋力低下と偽物の筋力低下の鑑別が重要。大学病院の総合診療科を受診する患者さんでは、筋力低下を訴える患者さんの半数が心因性の偽物だそうだ。

1. 全身倦怠感の鑑別
意欲がない(うつ病、精神疾患)
筋力低下muscular weakness
易疲労性easy fatigability(力は入るが維持できない、重症筋無力症)

2.筋力低下の鑑別 (筋力低下を訴える患者さんには、蹲踞からの立ち上がりを行ってもらう)

・本物の筋力低下→Gowers(ガワーズ)徴候を呈する(両手を最初は床に付き、それから膝に付いて両手の力を利用してやっと立ち上がる)

・偽物の筋力低下→(両手を使わずに)ゆっくりと中腰の姿勢(一番筋力を要する姿勢)から立ち上がる

 

CareNeTV 

日本プライマリ・ケア連合学会
第6回学術大会
行動科学から考える外来診療~ピットフォール回避のために~
千葉大学総合診療科
司会:鋪野紀好先生
解説:生坂政臣先生

ワークショップの到達目標
 受療行動を用いた診断推論を事例を通じて体験し、受療行動が診断推論に有用であることを理解する

イントロダクション
-行動科学と受療行動-

行動科学とは、
・人間の行動を科学的に研究し、その法則性を解明する
・医療にも応用
-患者との良好なコミュニケーション
-米国の医師国家試験科目

行動科学の領域
・健康と病気における心身関連
・患者の行動
 -健康にリスクのある行動
 -行動変容の原則
 -受療行動
 →(日本の)フリーアクセスという(特殊な)医療制度に反映される患者行動学
・医師の役割と行動
・医師-患者相互作用
・ヘルスケアにおける社会・文化的な問題
・健康政策と経済

受療閾値
病院を受診するという行為を実現させるまでのハードル
 健康からのわずかな変動での受診から、ほとんど病気が出来上がる時点での受診まで

例 60歳男性 右側胸部痛
現病歴:
1月中旬、右側胸部痛を自覚
1月下旬、かかりつけ医を受診
2月中旬、救急外来受診、異常なし
3月7日、整形外科受診、異常なし
3月11日、当部紹介受診
3月12日、当部予約外受診
本人曰く「症状の悪化なし」?

右側胸部のOPQRST
O:徐々に
P:衣類が擦れる時
Q:神経痛
R:右側胸部(Th7-8)
S:睡眠に支障なし
T:痛みは横ばい
  ↓
通常の肋間神経痛として合わないところ
・救急外来を受診
・受診頻度の増加

胸部CT
 右背側の肺癌→肋骨浸潤による肋間神経痛

受療行動が語る真実:悪化の傍証
予約外、時間外受診
受診回数の増加
鎮痛薬服用の量や回数の増加
医者嫌いの患者の受診

事前アンケートでご提示頂いた事例1
 普段は自宅からシルバーカーで休まずに来院できる患者が、定期受診のとき、3回休憩して受診した。
 本人は夏バテと解釈している。
診断:腎盂腎炎による敗血症性ショック
分類:いつもと異なる受療様式

生坂先生の経験
 高齢の患者さんが椅子に座っていたが、後ろにのけ反ってしまう。
 バイトに来ている先生は「高齢者はそんなもの」と。
→敗血症性ショック

事前アンケートでご提示頂いた事例2
 アルツハイマー型認知症で通院中の患者。認知症はあるが、いつも一人で定期通院している。
 3日前から軽度の頭痛が出現して受診し、検査は希望せず投薬帰宅。
 数日後、妻とともに来院。「実は、数日前からなんとなく歩行がおぼつかなくて、一人で通院させるのが心配で付き添ってきました」
診断:慢性硬膜下血種
分類:いつもと異なる受療様式

事前アンケートでご提示頂いた事例3
 病院での忙しい当直中。機能性ディスペプシアで自分の外来に通院加療している患者が、心窩部痛を主訴に受診した。
「先生にお世話になった時の痛みなので薬をください」と訴え、投薬帰宅とした。
診断:急性虫垂炎
分類:危機管理ホルモン
フロアから、急性心筋梗塞?と。

Unusualな受療行動の例
受療閾値が高い患者の受診
言行の不一致(行動が真実
いつもと異なる受療様式
危機管理ホルモン

グループワーク1(フロアの先生方の症例)

 入院している夫のお見舞いに毎日来ている50歳代女性
 ついで受診かと思って対症療法をした。
→急性心筋梗塞(下壁)

 アルツハイマー型認知症の高齢者。予約受診の時腹痛を訴えた。本人はにこにこしていたが、妻が自宅ではかなり痛がっていたと。
→急性胆嚢炎穿孔による急性腹膜炎

 80歳代女性3日続けて発作的な胸痛で受診。
→大動脈弁狭窄による心不全

 70歳代女性。腰部脊柱管狭窄症で診ていた右大腿部~下腿の疼痛が悪化。X線で大腿骨異常影。
→悪性リンパ腫

グループワーク2(症例検討)

症例1 48歳女性 全身倦怠感
現病歴:
1年前、全身倦怠感が出現。徐々に悪化。
1か月前、階段の昇り、椅子からの立ち上がりが困難
1日前、全身倦怠感のため、近医精神科を受診。血液検査で高CK血症(2766U/L)を指摘され当科紹介。
既往歴:高血圧症(以前から放置)
内服薬:なし
生活歴:機会飲酒、タバコ20本/日×28年
生活歴:無職、弟と同居

身体診察
163cm、48kg、MBI18.1
BP170/100mmHg、PR75/分、Bt36.5℃、SpO296%(室内気)、RR12/分
徒手筋力試験 近位筋で4/5と低下
深部腱反射 四肢で減弱
Gowers(ガワーズ)徴候陽性
トルソー徴候陽性

全身倦怠感
意欲がない(うつ病、精神疾患)
筋力低下muscular weakness
易疲労性easy fatigability(力は入るが維持できない、重症筋無力症)

検査結果
CBC:WBC7900、Hb11.7、MCV10.54、Plt25.5万
生化学:TP6.5、Alb3.4、AST136、ALT102、LDH1167、ALP480、γ-GTP394、T.bil1.1、D-bil0.6、AMY52、CK2766、Na139、K1.6、Cl81、Ca6.9、P4.1、RUN4.6、Cre0.71、Glu99、CRP0.18
感染症:HBs-Ag(-)、HCV-Ab(-)
内分泌:TSH1.365、レニン活性0.2(0.3-2.9)、Ald<10.0(30-307)
尿:pH7.0、比重1.017、U-Na94、U-K38.3、U-Cl50
動脈血ガス:pH7.62、pCO2 53、pO2 78、HCO3 47.7
心電図
 S in V1+R in V6=
63mV(<35)、Strain pattern、U wave、QTc0.57sec(0.36-0.44)→心電計がU波をQTc延長と誤読

フロアの先生方の意見
・利尿薬の乱用?
 レニン、アルドステロンの亢進になるはず
・下剤の乱用?
・神経性食思不振症?
 嘔吐
・アルコール?

追加検査
血清Mg0.7(1.8-2.6)、尿中Mg27mg/日(<10mg)

受療行動から考える
「全身倦怠感で近医精神科を受診」
→高血圧症を放置している患者が最初に精神科を受診するか
   ↓
2か月前に母が死去。
倦怠感は「母の死去に伴う精神的なもの」と思い、自ら精神科を受診。

再度、飲酒歴を聴取すると
医師:どのくらいの頻度で飲んでますか?
患者:ときどきです
家族:いや、毎日です
医師:どのくらいの量を飲んでいますか?
患者:ビール3缶だけです
家族:それに加えて焼酎1Lです

診断:慢性アルコール中毒

アルコール→肝機能障害
 ↓
Mg低下
1)K低下
 ミオパチー代謝性アルカローシス
2)Ca低下     
 トルソー徴候

アルコール性を示唆する検査
1)MCVが大球性
2)γ-GTP高値
3)AST/ALT比>2

Unusualな受療行動の例
・受療閾値が高い患者の受診
・言行の不一致(行動が真実)
・いつもと異なる受療様式
・危機管理ホルモン
いきなり精神科受診

症例2 36歳男性 動悸、手のふるえ
現病歴:
 受診前日、母親が患者の自宅を訪問。動悸と両手のふるえを認めた。母親が心配し、翌日患者とともに来院。受診前日から症状は持続。
既往歴:なし
内服歴:なし
生活歴:機会飲酒、喫煙なし
社会歴:マンションに一人暮らし、高卒後、無職(就労経験なし)、定期的に母親が訪問(週に1回)
身体診察:
164/82mmHg、36.4℃、136回/分(整)、末梢冷感(-)、発汗過多(-)、姿勢時振戦(-)
検査:
AST42、ALT40、γ-GTP487、ALP261、Glu108、CRP0.1、Hb14.2、MCV106.8
心電図:洞性頻脈
その後の経過:
 甲状腺ホルモンを提出し、結果が出る1週後に再診とした。
 再診時は本人は受診せず、母親のみ来院。
 本人は症状軽快したとの理由で来院しなかった。
 後日、母親に依頼し、本人を受診させた。甲状腺ホルモンの結果は正常であることを説明した。
 アルコールについて詳しく聴取すると、焼酎を720mlを連日飲酒していることが判明した。 
 さらに症状出現(アルコール離脱症状)する前日は飲酒をしなかった。その理由を尋ねると、「社会復帰をしたいと思ったから」とのことだった。
 本人に断酒の意思があり、アルコール更生施設に紹介。入院加療が開始された。

Unusualな受療行動の例
・受療閾値が高い患者の受診
・言行の不一致(行動が真実)
・いつもと異なる受療様式
・危機管理ホルモン
・いきなり精神科受診
しぶしぶ受診

症例2 55歳男性 タバコを吸うと肩が痛い
現病歴:1か月前、両肩の痛みが出現。時間外に紹介状なしでwalk-in受診。
増悪因子
・タバコを吸う(必ず痛くなる)
・両上肢挙上
※吸気での悪化はない
症状の経過は横ばい
生活歴:機会飲酒、タバコ20本/日×35年
社会背景:無職(生活保護)、一人暮らし
診察時の様子:頬杖をついてイライラしている

患者との会話:
患者:時間が長い、なんとかしてくれ!薬を出すなりしてくれ!
医師:まずは症状の診断のために診察をさせていただけませんか?
患者:もういい、帰る!

その後の経過
・かかりつけ医に電話で問い合わせたところ、「薬の処方希望で頻回に受診しており、困っている」とのことであった。
・帰宅後、その足で近医を受診し、薬剤を希望していた。
(麻薬系の鎮痛薬を希望)

Unusualな受療行動の例
・受療閾値が高い患者の受診
・言行の不一致(行動が真実)
・いつもと異なる受療様式
・危機管理ホルモン
・いきなり精神科受診
・しぶしぶ受診
Hidden agennda(隠された受療動機

コメント
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