5月1日の日直の時に、施設入所中の86歳女性が、発熱が続くとして救急外来を受診した。
4月27日(土)から高熱があり、施設から一番近い地域の基幹病院を受診した。インフルエンザ迅速試験が陰性で解熱剤の処方で帰宅(帰施設?)になった。高熱が続いて、4月29日に施設で救急要請した。そちらの病院と別の病院が搬入困難で当院に救急搬入された。
日直は4月から月1回当院の救急外来を手伝ってくれることになった開業医の若い先生(泌尿器科)だった。連休中も1回入ってくれていた。内科系医師の少ない当院としては大変ありがたい。
胸部CTで両側肺に陰影を認めるが、白血球数6800と正常域にあることから、細菌感染なしと記載されている。CRPは出していない。施設の嘱託医の指示で、セファゾリン点滴とレボフロキサシン内服をしていたので、それで経過をみるようにと、そのまま施設に帰した。
5月1日は救急要請はせず、施設車で連れてきた。39℃の発熱があり、喘鳴が聴取された。この施設の場所は当院の診療圏ではないので、あまり入所者を連れてくることはないが、ひとりだけ当院入院から入所した高齢男性がいて、その患者さんは時々連れてくる。施設の職員(看護師さん)は見覚えがあった。
胸部X線を見ると、前回の胸部CTに相当する陰影があり、そこからひどく悪化はしていないようだ。白血球数4900とやはり正常域にあるが、CRP11.2とちゃんと(?)上昇している。4月29日の血清が残っていたので、その検体で検査してもらうと7.4と出た。数値上はちょっと悪化したことになる。
入院で治療することにした。施設のセファゾリンはともかく、レボフロキサシンは効きそうなものだ。施設の看護師さんには、施設で使用するなら、セフトリアキソンがお勧めですと以前からお伝えしていたが、代わっていないようだ(施設嘱託医は80歳代の先生)。施設入所者で誤嚥性のようだし、すでに投与していた抗菌薬が効いていないかもという条件なので、抗菌薬はゾシン(PIPC/TAZ)にした。
喘鳴があり、せき込みが辛そうだったので、数日だけデカドロンをちょっとだけ使うことにした。翌朝には喘鳴が軽減して、患者さんと会話(らしいもの)ができた。
若い開業医の先生は、他の患者さんでもCRPを測定していなかったようだ。当方は、忽那賢志先生のいうCRP-oriented Medicine(COM)を実践してきたので、CRPに依存しすぎるタイプ(世代)になる。
「CRPの有用性と限界をきちんと理解したうえで、適切なタイミングで用いれば、CRPは強力な道具となるはずです」(忽那賢志編集「治療」2015年11月号CRPologyより)。CRPは便利でいいと思うけど、こういうのは賛否両論?。画像で肺陰影があれば普通に肺炎ではある。
当院はある程度長期に入院できるので、施設入所者も含めた高齢者の誤嚥性肺炎向きの病院としてちょうどいい。もう少し内科系医師がいれば、そういう患者さんを診療圏以外からでも引き受けて、高齢者の誤嚥性肺炎専門病院(?)としてやっていく手はある。