なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

奇異性脳塞栓症

2023年03月26日 | Weblog

 脳神経内科が閉科になるので、外来で診ていた患者さんたちが他院や当院の他の外来に割り振られている。4月初旬の当方の外来に知らない名前があり、確認すると脳神経内科からの依頼だった。

 現在は71歳の女性で、2019年に67歳の時に脳梗塞を発症していた。めまいを訴えて救急搬入されていた。当時いた外科医が救急当番で対応している。

 症状としては右半身不全麻痺と構語障害が一時的に生じたが、搬入時は消失していたらしい。頭部MRIで出血も梗塞も認めなかったが、MRAで左大脳動脈が閉塞していた(M1)。心房細動はなかった。

 脳神経内科に相談されて、入院治療を勧められたが、症状が軽快(消失?)したことから入院を嫌がった。抗血小板薬が処方されて帰宅(外来治療へ)となった。

 発症したのが、午後2時頃で搬入されたのが午後3時過ぎだった。拡散強調画像でもまだ出ないかもしれない。ただ症状は軽快していた。アテローム血栓性脳動脈硬化があり、バイパスからの血流が低下して一時的にTIA様になったと判断したのだろうか。

 その日の午後7時過ぎに右不全半身麻痺と構語障害が出現して、地域の基幹病院に救急搬入された。今度は症状が継続して、頭部MRIで左被殻から放線冠にかけて脳梗塞を認めたため入院となった。

 入院後の頭部MRI再検で左中大脳動脈の末梢への血流が出現していた(狭窄はある)。症状も搬入時よりは軽減したが、脳梗塞巣は残った。

 脳梗塞の機序として脳塞栓症が考えられたが、心房細動はない。下肢静脈エコーで深部静脈血栓症があり、心エコーで卵円孔開存(右左シャント)を認めて、奇異性脳梗塞症と診断された。抗血栓療法は抗凝固薬(DOAC)が選択された。

 急性期の治療後に、当院回復期リハビリ病棟に転院して、リハビリ後に外来治療継続となっていた。昨年の頭部MRIを見ると、脳梗塞巣は縮小して(経時的変化?)、左中大脳動脈の血流はさらに改善しているようだ。

 中大脳動脈に血栓が詰まったが、血栓が流れて、穿通枝レベルの動脈閉塞に留まった、ということなのだろう。(現在、MMT4/5の不全麻痺で歩行できる)

 地域の基幹病院でも昨年から脳血管内治療が始まった。脳血管障害の急性期は、専門医のそろった医療機関で扱ってもらう必要がある。

 

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