なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

薬剤性低ナトリウム血症(SIADH)

2023年03月05日 | Weblog

 自治医大出身の若い先生の、内科専門医の症例を評価している(J-OSLER)。所属は医療センターだが、勤務している病院の指導医(8年目の先生なので、実際のところ当方はただの同僚)が評価するようになる。

 自治医大卒業生同志が結婚しているので、それぞれの所属県で半分ずつ義務年限を過ごす。配偶者の出身県では総合診療専門医のコースしかとれないそうで、当県に来てから内科専門医のコースを行っている。総合診療専門医の時の症例も使えるので、当院での症例と混じっている。

 

 症例の中に、高齢者でSSRIによる薬剤性低ナトリウム血症(SIADH)があった。血清ナトリウムが110台まで低下して意識障害などを呈したが、原因薬剤中止と輸液で改善したとある。 

 SIADHの原因として、薬剤性の中に確かにSSRIは記載されているが、あまり意識していなかった。というか、薬剤性SIADH自体をあまり意識していなかった。

 普段はループ利尿薬の影響とか、輸液成分くらいしか意識していない。血清ナトリウムが130前後だと見逃しているかもしれない。今後は薬剤性SIADHの可能性を考慮することにしよう。(診断の手引きの検査所見を、全部検査したりはしないが)

 

 下記の原因薬物の表だけだとピンとこないが、SSRIもSNRIも全部SIADHの原因になり、副作用の項目に記載されている。

 また三環系抗うつ薬(トリプタノールなど)、抗精神薬(フェノチアジン系のクロルプロマジン、ブチロフェノン系のハロペリドールなど)、抗てんかん薬(カルバマゼピン、バルプロ酸など)もSIADHの原因になる。

 

 

バソプレシン分泌過剰症(SIADH)の原因
  中枢神経系疾患
              髄膜炎
              脳炎
              頭部外傷
              くも膜下出血
              脳梗塞・脳出血
              脳腫瘍
              ギラン・バレー症候群
  肺疾患
              肺腫瘍
              肺炎
              肺結核
              肺アスペルギルス症
              気管支喘息
              陽圧呼吸
  異所性バソプレシン産生腫瘍
              肺小細胞癌
              膵癌
  薬剤
              ビンクリスチン
              クロフィブレート
              カルバマゼピン
              アミトリプチン
              イミプラミン
              SSRI

 

バソプレシン分泌過剰症(SIADH)の診断の手引き
I.主症候
 脱水の所見を認めない
II.検査所見
 1.血清ナトリウム濃度は 135 mEq/l を下回る
 2.血漿浸透圧は 280 mOsm/kg を下回る
 3.低ナトリウム血症、低浸透圧血症にもかかわらず、血漿バソプレシン濃度が抑制されていない
 4.尿浸透圧は 100 mOsm/kg を上回る
 5.尿中ナトリウム濃度は 20 mEq/l 以上である
 6.腎機能正常
 7.副腎皮質機能正常
III.参考所見
 1.倦怠感、食欲低下、意識障害などの低ナトリウム血症の症状を呈することがある。
 2.原疾患(表 1)の診断が確定していることが診断上の参考となる。
 3.血漿レニン活性は 5 ng/ml/h 以下であることが多い。
 4.血清尿酸値は 5 mg/dl 以下であることが多い。
 5.水分摂取を制限すると脱水が進行することなく低ナトリウム血症が改善する。
IV.鑑別診断
 低ナトリウム血症を来す次のものを除外する。
 1.細胞外液量の過剰な低ナトリウム血症:心不全、肝硬変の腹水貯留時、ネフローゼ症候群
 2.ナトリウム漏出が著明な細胞外液量の減少する低ナトリウム血症:原発性副腎皮質機能低下症、
塩類喪失性腎症、中枢性塩類喪失症候群、下痢、嘔吐、利尿剤の使用
 3.細胞外液量のほぼ正常な低ナトリウム血症:続発性副腎皮質機能低下症(下垂体前葉機能低下症)
[診断基準]
 確実例:I および II のすべてを満たすもの。

コメント
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