なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD)

2019年07月13日 | Weblog

 火曜日に医師会の講演会があり、「非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD)」についてだった。年に1回くらい回ってくる座長を頼まれていたので、講演会30分前には会場に着いて講師を待った。

 「NASH・NAFLDの診療ガイド2015」日本肝臓学会を持っているが、内科学会雑誌105巻1号(2016年)の特集が「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の臨床的意義」でこちらが役に立つ。

 

 非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic liver disease:NAFLD ナッフルディー)は、肝硬変・肝細胞癌へと進展するリスクが高い非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH ナッシュ)と、そのリスクが低い非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver :NAFL ナッフル)からなる。

 国内には約1000~2000万人のNAFLD患者がいて、そのうち約10~20%がNASHと推定される(100~400万人!)。NAFLD自体も治療(体重減少・運動療法)とフォローは必要だが、その中からいかにNASHを拾い上げて、肝臓専門医に紹介するかが肝要だ。(NASHだけに絞っても全部肝臓専門医が診るのは無理だろう

 NAFLDは、組織診断あるいは画像診断で脂肪肝を認め、他の肝疾患(アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎、自己免疫性)を除外した病態になる。

 純アルコールで男性30g/日・女性20g/日以上の飲酒でアルコール性肝障害を発症するので、NAFLDの飲酒量はそれ未満となる。(アルコール20gは、日本酒1合、ビール中瓶1本、ウイスキーダブル1杯、ワイングラス2杯に相当) アルコール代謝能が低い日本人では、非アルコール性とするには、男子20g/日・女性10g/日未満がいいようだ。

 ウイルス性肝炎はHBs抗原・HCV抗体、自己免疫性は抗核抗体・抗ミトコンドリア抗体で確認するが、自己免疫性では必ずしも陽性にならない。

 NAFLDの発症機序は、従来は肝細胞への脂肪沈着と炎症・線維化が進展するステップを分けるtwo-hit theoryとされたが、現在は多因子が同時並行で関与するmultiple-parallel hit theoryに変わった。遺伝的素因としては、第22番染色体上のPNPLA3遺伝子の変異が明らかにされた。

 肝組織所見は、Matteoni分類によりなされ、Type1の単純性脂肪肝とType2の炎症を伴う脂肪肝(肝細胞風船様腫大や線維化はない)がNAFLで、Type3のType2に肝細胞の風船様腫大を伴った状態とType4の風船様腫大・肝線維化・炎症性細胞浸潤を伴う状態がHASHとされる。NALFDのうち、NAFLとNASHの鑑別には肝生検を要する(ゴールドスタンダード)が、全例に行うことはできない。

 NASH鑑別のスコアリングシステムとして、NAFIC scoreがある。NASH、ferritin、IRI、typeⅣ collagen7SでNAFIC。構成要素は、1)血清フェリチン値(1点:男性300ng/ml以上、女性200ng/ml以上)、2)空腹時インスリン値(IRI:immunoreative insulin)(1点:10μU/ml以上)、3Ⅳ型コラーゲン7S(2点:5ng/ml以上)で、4点では9割がNASHで、2点でも5割がNASH。

 肝線維化のスコアリングシステムとして、FIB4 indexがある。年齢XAST(IU/l)/(血小板数X√ALT(IU/l))で、1.45以上はstage3・4の高度線維化を検出できる。

 NAFLDでは他の慢性肝疾患(C型肝炎など)と比べて血小板の減少速度が遅く、血小板数20.0万未満ではstage3、15.0万未満では肝硬変に相当する。

 画像検査では20%の肝細胞に脂肪滴が沈着すると脂肪肝と診断できる。腹部エコーでは、肝実質の高輝度変化・肝腎コントラスト・肝内血管の不明瞭化・肝深部のエコー減弱で診断する。CTでは、肝臓と脾臓のCT値の比(Liver/spleen比0.9%未満)で診断される。MRIでは、T1強調画像out of phase低信号で診断できる。フィブロスキャンは肝線維化を評価できる。

 治療は、NAFLでは生活習慣改善(減量運動)、経過観察を行う(高血圧症・高コレステロール血症・糖尿病があれば治療)。NASHではそれに加えて、基礎疾患の治療を行う。高血圧症にはARB、高コレステロール血症にはスタチンかエゼチミブ、糖尿病にはピオグリタゾン。ピオグリタゾンは体重増加の副作用があり、SGLT2阻害薬GLP-1受容体作動薬が期待できるという(共催はルセフィを販売する大正製薬)。基礎疾患がなければビタミンE。

 

 

 

 

 

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