なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

診る前に病院を脱出

2019年04月10日 | Weblog

 昨日は内科当番だった。午後8時前に、当直医(大学病院からバイトに来ている外科医)から、内科で入院させたい患者さんがいると連絡が来た。JCSで30というので、疼痛刺激で開眼するがまた閉眼という状態だ。

 患者さんは45歳男性で、統合失調症で精神科病院に通院している。意識障害で救急搬入されていた。血液検査や頭部CTで異常はなく、バイタルサインも安定していた。おそらく精神科で処方された処方の過量内服によると思われます、という。内科病棟に入院させてもらった。当直医が今朝までの点滴を入れてくれる。翌日には意識がもどるだろうと思った。

 当直医が今朝午前7時過ぎに病棟に診察に行った時は、すでに開眼して会話も可能となっていた。前日の昼に、精神科で処方されたフルニトラゼパムを10錠いっぺんに内服したと答えた。(大学病院に戻る前に病状を確認していて、きちんとした対応だと感心した。)

 朝病院に来て、内科の若い先生と化膿性脊椎炎の患者さんの相談をしてから、午前8時半に病棟に行った。もう患者さんはいなくなっていた。患者さんは点滴を自分で抜いて、昨日のジャージ姿のまま病院から出て行ったという。さらに若い看護師さんが患者さんを追いかけて行っていた。病院の敷地外まで行ったらしい。

 病棟師長が病院の防災担当(セコム)や看護部長に連絡していた。 患者さんの住所をみると、病院から割と近い。家に戻ったのかもしれない。自宅に電話したが、母親は出なかった。院長に連絡して、警察にも依頼することにした。前日息子の意識障害に驚いた母親が、119番ではなく、110番に電話していたので、警察でも名前を控えていた。

 病院の事務職員が車で患者さんの自宅に向かうと、母親の話から患者さんは自宅に戻っていることが分かった。患者さんは自室にこもって出てこない。

 電話が通じたので、母親に、「もう急性薬物中毒は治っていること、そのまま退院にするしかないが、預った処方薬を返したり入院費の支払いもあるので、母親だけでいいから病院に来てもらうこと、また同じことを繰り返す可能性があるので早めに精神科を受診すること」、を伝えた。精神科病院にも連絡して、主治医に今回の経緯を報告した。

 若い看護師さんは自宅まで付いて行ったが、「赤信号でも渡っていくので危なくて」と憤慨していた。いやいやあなたが危害にあう可能性があって、みんな心配していたんです。

 一泊入院なので母親に付き添ってもらうべきだったとか、意識が戻った時の不穏に備えて体幹抑制をしておくべきだった、という話も出た。患者さんも看護師さんも無事でなによりだった。病院から逃げ出した患者さんが道路に飛び出して交通事故に会えば、当然病院の責任になるのだろう。

 当方は名前だけの主治医で、1回も患者さんを診ないで終わってしまった。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする