なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

ヘイリー・ヘイリー病って

2016年09月20日 | Weblog

 昨日の敬老の日は日直で病院に出ていた。78歳男性が発熱で歩行できなくなって受診した。炎症反応が上昇して、肺炎か尿路感染症を想定して検査した。胸部X線・胸部CTで肺炎を示唆する浸潤影はなかった。尿混濁もなかった。この方は昨年他の総合病院で右膝関節の人工関節置換術を受けていた。普段は杖歩行していて、術後の右膝の状態がわからないが、ここ数日は歩行しにくくなっていたそうだ。右膝関節に熱感・腫脹・膝蓋骨の浮動感があった。何でもない左膝関節と比べると明らかに違う。膝関節のX線は人工関節なので良くわからない。よく見るのは膝関節の偽痛風だが、少なくとも石灰化像はなかった。NSAIDで経過をみるのもあるが、これは手術した病院で診てもらった方がいいと思った。休日でダメもとで連絡したところ、日直の内科医師が受けてくれた。膝関節の状態は局所的なもので、高熱の原因は内科でみるような疾患が隠れている可能性もあるが、そこの内科(リウマチ膠原病科も兼ねている)は当方よりは上手に診てくれるだろう。

 救急隊から、皮膚科に通院している80歳男性が発熱と四肢痛で救急要請されたと連絡が来た。皮膚科の病気で四肢痛?、リウマチ性多発筋痛症のようなもの?、とよくわからなかったが来てもらった。両側腋窩と鼠径部に径10㎝以上の皮疹があり、素人目には大きな乾癬のように見えた。発熱はたしかにあり、炎症反応も上昇していた。何でも皮膚の病理診断でもヘイリー・ヘイリー病とされていたが、皮膚科医が大学病院皮膚科に紹介していた。3日前に大学病院を受診していて、発熱に対して経口セフェムが処方されていた。皮膚病変からの発熱と判断されたそうだ(まあ経口セフェムでは効かないでしょう)。皮疹の部位が部位なので、四肢痛というのは上下肢を動かしたときに皮疹が引き伸ばされて痛いのだった。

 本来は発熱をきたす病気ではないので、やはり肺炎・尿路感染症など他の部位の感染症を疑って検査したが、はっきりしなかった。2年前に肺炎で入院している。胸部CTで両側下肺背側に多少スリガラス様陰影があるようにも見えるが、重力の問題かもしれない。皮疹は赤味が目立ち、バリアーの破綻した皮膚から細菌感染を併発してもおかしくないと思われた。とりあえず内科で入院としたが、今日皮膚科で引き取ってくれた。明日大学病院の予約が入っているが、とりあえずは当院皮膚科で入院継続となるようだ。ヘイリー・ヘイリー病は遺伝性となっていてこの方は違うが、肉眼的組織学的には当てはまるのだそうだ。面白い名前なので、遥か昔に聞いた記憶がある。

 82歳男性が血便で受診した。赤黒い便が2回出たそうだ。腹痛はなく、虚血性腸炎ではなさそうで、憩室出血疑いだった。腹部造影CTを撮影すると、S状結腸に多発性の憩室があり、腸管内内容物の濃度からは、直腸からS状結腸に血便が充満している。S状結腸壁内か内腔に線状に造影剤が写るところがあり、気持ちが悪い。この方は心房細動で抗凝固薬を内服していた。朝の分は飲ませなかったそうだ。そのまあ止めるとして、出血はすぐには止まらないだろう。貧血はふだんのhB12g/dlが11g/dlだった。入院として経過をみたが、朝まで7回血便が出た。血圧は130で安定していて、溜まった血便が出ると言っておいたので、連絡はなかった。今日はhB7.8g/dlと低下して、輸血することにした(ラッキーなことにちょうど院内の同じ血液型の濃厚赤血球ストックが6単位分あった)。消化器科医に相談すると、あまり大腸内視鏡に乗り気ではなかったが(見ても出血部位同定が困難だから)、消化器科で引き受けてくれた。

 以上、結果的に3例とも自分で診ないことになったという休日の診療だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする