読書日和

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「聖なる怠け者の冒険」森見登美彦

2013-06-13 23:19:25 | 小説
今回ご紹介するのは「聖なる怠け者の冒険」(著:森見登美彦)です。

-----内容-----
一年ほど前からそいつは京都の街に現れた。
虫喰い穴のあいた旧制高校のマントに身を包み、かわいい狸のお面をつけ、困っている人々を次々と助ける、その名は「ぽんぽこ仮面」。
彼が跡継ぎに目をつけたのが、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂して夜更かしをすることが唯一の趣味である、社会人二年目の小和田君。
当然、小和田君は必死に断るのだが……。
宵山で賑やかな京都を舞台に、ここから果てしなく長い冒険が始まる。

-----感想-----
この作品は以下の章で構成されています。

プロローグ 土曜日の男
第一章   ぽんぽこ仮面と週末探偵
第二章   休暇の王国
第三章   宵山重来
第四章   聖なる怠け者たち
エピローグ 日曜日の男

冒頭のプロローグの時点で既にかなり面白いです。
出てくる登場人物が変てこな人ばかりで笑えました。
当然のように「ポンポコ仮面」という京都に現れた謎の怪人についての描写が始まりますし
いかにも森見登美彦さんといった感じの小説で、冒頭からかなり楽しみになりました

プロローグではこの他、「祗園祭宵山」という言葉が登場。
やはり出たかという感じです^^
そして何と、この物語の日がまさに「祇園祭の宵山」の日とのこと
「宵山万華鏡」を彷彿とさせるものがあり、これは何も起きないわけがないし、期待が高まります

信楽焼(しがらきやき)の狸、これは「有頂天家族」でよく出てきたキーワード。
本作「聖なる怠け者の冒険」でもよく登場します。
「有頂天家族」とのつながりが気になるところです。
作中に何度も登場する、柳小路にある「八兵衛明神」という神社にはなぜか信楽焼の狸がいくつも佇んでいて、一体この神社にはどんな神様が祀られているのだろうと思いました。
ここの神様、終盤でついに正体が明らかになります。

「蕎麦処六角」でのぽんぽこ仮面と六角の店主、津田氏率いる「蕎麦打ち連」の戦いは面白かったです。
津田氏率いる蕎麦打ち連による突然の裏切りに遭い、窮地に立たされるぽんぽこ仮面。
津田氏は恩人であるぽんぽこ仮面をなぜか捕まえようとしたのです。
そして明らかになる、津田氏の後ろでぽんぽこ仮面捕縛の糸を引く「大日本沈殿党」の存在。
退廃した生活を送る学生集団である大日本沈殿党の本拠地は下鴨泉川町の学生アパート「下鴨幽水荘」。
このアパートの名前は知っています
森見登美彦さんの他の作品にも登場するアパートで、何やら怪しい人ばかり住んでいます。
基本的に森見さんの作品は怪しい人ばかり出てきますしね(笑)
他の作品とのちょっとしたリンクが次々に出てきて、にわかに気持ちが盛り上がりました。
そして一方、その頃主人公の小和田君が何をしていたかというと。。。
第一章の最後に「ごろごろしていた」と書かれていて面白かったです。
まったくやる気のない主人公だなと思います(笑)

閨房(けいぼう)調査団。
大日本沈殿党のさらに後ろにいる団体で、これも森見登美彦さんの他の作品に出てきたことがあります。
大日本沈殿党と並んでかなりぶっ飛んだ団体です。
そして、なぜかこういった団体がぽんぽこ仮面を捕まえようとします。
戸惑うぽんぽこ仮面。
過去にぽんぽこ仮面が助けてあげた人達が、ことごとく恩を仇で返しぽんぽこ仮面を捕まえようとするのです。
京都で超有名な人助けのスーパースターだったはずのぽんぽこ仮面は、なぜか追われる身に。
果たしてぽんぽこ仮面を狙う真の黒幕は誰なのか、謎が謎を呼び、次々と変てこな人達が出てくる展開になりました(笑)

恩田先輩と桃木さん。
恩田先輩は小和田君が勤める研究所の2つ上の先輩で、桃木さんはその彼女です。
この二人は「充実した休日」を送ることに血道を上げているという特徴があります。
「ぐうたらした休日」を送ることに血道を上げる小和田君とは正反対な感じで、二人はいつもぐうたらな小和田君のことを気にかけていてよく電話をして呼び出そうとします。
冒頭のプロローグにも登場し、物語の開幕を告げる朝の日差しの中、「さあ、充実した土曜日を過ごすぞ!」と気合いを漲らせていました。
そして二人は物語の節目節目に登場して大活躍します。
主人公ではないのですが、物語に欠かせない重要なお二人でした。

「テングブラン」という名の怪しいお酒も登場
このテングブラン、またの名を「偽電気ブラン」ということも明らかになります
偽電気ブランとは「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」にも出てきた、あのものすごく美味しいとされるお酒。
東京浅草の電気ブランをまねて造ったことから「偽電気ブラン」と呼ばれるようになりました(電気ブランは実在するお酒です)。
さらには秘密裏にテングブランの製造を一手に手がける「テングブラン流通機構」という団体も登場。
今作は本当に謎めいた団体が次々と出てくるなと思います
この団体も例によってぽんぽこ仮面を捕まえようとしています。

ちなみにぽんぽこ仮面が自身のことを「通りすがりの人に親切にするだけの四畳半的怪人」と評しているのはウケました。
一応自分自身のことを怪しい人、「怪人」と自覚してはいるんだなと思いました(笑)
そしてこれも森見登美彦さんの作品でよくあるのですが、出てくるお部屋がことごとく「四畳半」です。

「土曜倶楽部」というのもかなり気になる団体でした。
土曜倶楽部とは毎月一度、土曜の夜に集まって猪鍋(ししなべ)を喰うことを目的とした七名の人間から成る集まりとのこと。
「有頂天家族」に出てきた「金曜倶楽部」が強烈に意識される団体名でした。
そして現れる、まさかの日曜倶楽部。
一体謎の団体はいくつあるのかと思いました。
こういった怪しすぎる団体の数々がさも真面目な感じの文体で語られていくので笑ってしまいます。
どう考えてもこれがぽんぽこ仮面を捕まえようとする真の黒幕だろうと思いきや、その先にもさらに暗躍する謎の組織があり!?という展開が次々と続いていき、このくるくる回る様はまるで「宵山万華鏡」のようでした。

そして、ここまでのところあまり活躍していない主人公の小和田君ですが。。。
終盤となる「第四章 聖なる怠け者たち」では大活躍することになります。
と言っても大活躍は大活躍でも、「怠け者」としての本領を発揮するような感じの大活躍でしたが。
とんでもなく怠けた主人公でしたが、一応主人公としての役割は果たせたのかなと思います。
祇園祭宵山の最後、23時に四条烏丸の大交差点で迎えるクライマックスまで読むと、何ともいえない達成感がありました。
土曜日の朝から夜までの、長い長い1日となった物語、素晴らしく面白かったです


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