「おとーさん、おとーさん」
誰かが、どこかのお父さんを呼んでいる。
平塚競技場の入場待機列に並んでいた時のことだ。
「おとーさん、おとーさん」
いったい誰を呼んでるんだよと思って振り向くと、目の前にマイクが突き出され、テレビカメラがこっちを向いていた。
「おとーさん、ベルマーレマニアですが、ちょっといいですか?」
「えっ? オレのこと? オレじゃないでしょ」
インタビューの一言目に、こんな言葉を返してしまった(笑)。
だってアレですよ、小さな子供と一緒にいたとか、家族連れならば「おとーさん」と呼ばれても違和感はない。ところが、どこをどう見ても僕は“お一人様”だったのだから。
ん? 待てよ、子供がいようがいまいが、やっぱりインタビュアーには僕が「おとーさん」に見えたということなのか。
たしかに「おとーさん」には違いないけど、何の先入観も持たない見ず知らずの人にいきなり「おとーさん」と呼ばれたのは、なんだかよくわからないけどとてもショックだった。
じゃあ、なんと呼ばれたらショックじゃないのかと言われても、答えは見つからないんだけどね(笑)。
写真は、別のおとーさん。