何年ぶりかに実現した
家族旅行。
1日たっぷり遊んで疲れて4人で枕を並べて眠り目覚めた朝、カーテンを開けると一面銀世界だった。
そういえば遅い時間に入った露天風呂で、顔に冷たいものが当たったのを思い出す。でも、こっちまで雪になるとは…。ただ、この景色は忘れられない思い出になったことだけは確かだ。
今回の家族旅行のテーマは、昭和。
完全に、父親の独断である(笑)。
さて、その一つ目はいきなり『
熱海城』。しかもクルマを熱海港の駐車場に置いて、あえてロープウエイでアプローチ。これが、なかなかレトロで良かった。いかにも旅行している感、があった。
ロープウエイを降りた所にある昭和遺産『秘宝館』は残念ながらスルー。18歳未満がいるのでね。そして『熱海城』だ。実在しなかったお城らしいが、そのぶん昭和的娯楽施設になっていて素晴らしかった。特にウチの家族に大ウケだったのが、卓球やスポーツ吹き矢、そして輪投げやケン玉といった懐かしい遊びができるスペース。意外に多い来場者ではあったが、その中で誰よりも入場料900円(ロープウエイの切符提示で800円)以上の価値を感じた4人だった。
その一角に、ほら貝が置いてあった。戦国時代の合戦の際に吹いたアレだ。
「うまく吹けたら、いいことあるかも」と書かれている。あぁそうなんだと思いつつ何気なく挑戦してみると、何度目かに鳴った。おぉ、これこれ、時代劇で聞こえてくる音だ。調子に乗って吹きまくっていると、隣の売店からおばちゃんが箱を手にやってきた。
「上手に吹けたので、この中から好きなものをどーぞ」
あら、本当にいいことがあったんだ。箱の中には、おもちゃやキーホルダーがいっぱい。その中から、ケン玉をいただいた。家族からは「いつもホラを吹いているからウマく吹けるんだ」と笑われた。
二つ目の昭和は『わんたんや』
昼食は、妻と以前
訪れたことがある懐かしいワンタンメンを。シッカリしたワンタンと細麺は、まさに昭和の味。子供たちも好評だった。
三つ目は、熱海駅や駅前の商店街。ここも懐かしい昭和の香り。
ところが、近くで見つけてしまったのが『スターレーン』というボーリング場だ。ホテルのチェックインまで時間があるので、やろうやろうと盛り上がって古い階段を上る。
ここが、4つ目の昭和。
なにしろ薄暗い場内が、まさに場末の雰囲気。そして、フロントでのスタッフの第一声が、昭和から聞こえてきた!
「紙のスコアですが、いいですか?」
あったのだ!オートでモニタに映し出される現在のようなシステムではないボーリング場が!
「もちろん!OK、OK」と喜んで用紙を受け取る。つけはじめてみると、けっこう覚えてるものですね。何の不自由もなくスラスラ書き込める。いや、一投ごとに計算して書き込むというアナログな作業が、かえって楽しい。ボーリングをやっているという実感がしてくるのは驚きだった。スコアをつけるという行為が初体験だった子供たちに教えるのも、いい。昭和の時代は、こうやってコミュニケーションをとったもんだと改めて思い出す。
さらにスゴかったのが写真でもおわかりのように、最後のほうまで他にお客さんがいなかったこと(実は上の階にもレーンがあって大会をやっていたようだった)。
聞けば「今年でちょうど40年になります」とのことで、あの昭和のボーリングブームと社員旅行全盛時が重なったオープンのころには、きっと待ち時間も長かったのではないか。
ちなみに、
ジックリ腰の痛みが残っていてコルセットを巻きながら奮闘。スコアは…一応、父親としての面目を保てた。
そして旅館に着くと、いきなり卓球だ。『温泉卓球』これが5つ目の昭和。
さっき『熱海城』でも30分やってきたばかりなのに…というか、今回の旅行のメインは、これだったりして(笑)。実は、これが旅館探しの第一条件だったのだ。泊まった旅館には卓球台が7台もあって、あいていればいつでもどれだけでもやっていいという。
やりました。白熱しました。楽しかった。面白かった。ヘトヘトになった。卓球場の脇を通る宿泊客は「あの家族、またやっている」って思ったに違いない。それほど、何度もやった。二日目、チェックアウトしてからもやっていた(笑)。
6つ目の昭和は『射的』と『スマートボール』
往時のままの姿で営業しているというウワサの『ゆしま射的場』に向かった。
先客と入れ替わるように扉をあけると、中には昭和以外のものは何一つ存在していなかった。しかも貸切状態で、その昭和を満喫。
射的もスマートボールも1回500円。景品も安手の瀬戸物ばかりで、小声で「高い」としかめっ面をした娘だが、これが温泉場の正しい昭和である。景品など何でもいい。価格でもない。ゆかたと下駄履き姿で“楽しむ”ことが第一なのだから。
射的は一人1回(8発だったかな?)、スマートボールは全員で1回。でも、かなり長い時間、楽しむことができた。
ちなみに、ここでも父親の面目躍如。昔とった杵柄で、1発はずしただけという好成績。全員でスヌーピーのマグカップをゲットした。推定価格250円(笑)。
2日目のお昼も、もちろん昭和。
昭和27年創業の『ボンネット』である。三島由紀夫や谷崎潤一郎といった文豪、越路吹雪やトニー谷、美輪明宏などの芸能人も贔屓にしていたという喫茶店だ。また、開店当時からメニューにハンバーガーがあり、現在も当時のまま供されるという。
小さなテーブルとビニール張りの使い込まれた、でもキレイにしている椅子を見ただけで、この店が銘店といわれていることが納得できる。
もちろん、小ぶりのハンバーガーも、ホットドッグも、トーストがセットになっているチキンバスケットもレトロなビジュアルで嬉しい。
子供たちも「おいしい」を連発。「また、来たい」と言い出すほどだ。
コーヒーもおいしかったなぁ。80歳だというジーンズ姿のお父さん、そして品のいいお母さんの対応もステキで、本当にぜひまた来たい。
その『ボンネット』に置かれていた『熱海新聞』。そこに掲載されていたある広告を妻が発見した。
さっき糸川沿いを歩いたときに見かけた『幸華』という中華料理店の特売情報だ。
まさに今日がその日というのも何かの縁。遠回りをして購入した。いかにも中華という本格的なシューマイ。これも、懐かしい昭和の味がした。
というわけで1泊2日ではあったが、よく食べ、よく遊び、よく喋り、よく笑い、そしてたっぷり昭和を味わう家族旅行だった。これだけ楽しめたのはウイークデーだったからこそ。子供たちが受験を終え、僕が無職だった今でしかできなかったのだ。いろんな意味で、思い出深い旅になった。
糸川沿いの「熱海桜」が満開です。
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熱海チック天国
昭和で止まったあたみたい