湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

菊坂ホテル時代

2010-02-23 19:03:24 | 湘南ライナーで読む


あの『同棲時代』から受ける暗いイメージで、上村一夫氏の絵があまり好きではなかった。実際、読んだこともない。
ところが『週刊ブックレビュー』でどなたかのオススメの1冊が気になってネットで購入。
『菊坂ホテル』(上村一夫作画 朝日新聞出版刊 1900円+税)である。
大正時代、文京区本郷に実在した『菊富士ホテル』が舞台。竹久夢路、谷崎潤一郎、佐藤春夫、今東光、菊池寛、芥川龍之介、斉藤茂吉、月形龍之介など作家、詩人、歌人、画家、役者など文化人が“暮らした”ホテルだ。マンガ家たちが集ったあの「ときわ荘」のような存在か。
そんな文化人たちの交錯する日々を、菊坂ホテルの娘である八重子の目を通して追っていく。
このあたりは会社勤めの頃、よく昼休みに散チャリしていたエリア。もちろん「菊富士ホテル跡」の碑も確認している。ノンフィクションではないものの、著名な人たちがそのあたりを行き交っていたのかと思うとゾクゾクしてきた。
開業当初は外国人向けの華やかなホテルだったそうだが、この頃は陰鬱な雰囲気が漂い、いかにもというビジュアルで描かれる。その独特の空気感、リズムが何ともいい。好きではなかった絵柄が、逆に魅力的に思えてきた。
前半の主人公である竹久夢二も、後半の中心人物となる谷崎潤一郎もあまり興味がなかったのだが、見たり読んだりしたくなってきている。
ちなみに、谷口ジロー氏は上村一夫氏のアシスタントだった。