湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

小さな福寿草

2012-06-20 21:00:50 | あんな話こんな話


日曜日。行きつけの美容院で、僕が朝一番の客のはずだった。
ところが、すでに先客が座っていたのだ。
後ろ姿が、まだ小学校にも上がっていない幼児に見える。ただ、髪は短いけど白っぽいなぁ。横顔も肌がまだらな感じだし。しかも、小さい子なのに付き添いの親がいないってのも変だ。
えっ?
目を凝らして鏡に映る顔を見たら、わっ、おばあさんだったよ、ちっちゃい。
ん?まてよ、あれはもしや・・・と思ってさらに覗き込むと、なんと「コロッケおばあちゃん」だった。毎日、妻のパート先のコンビニに現れては必ずコロッケを買っていくという(笑)。
おぉ、いつものカートを押して(というか杖がわりに)僕の前を通って店から出ていくぞ。

「ダイエーは開いてるかな?」
「今日はもう開いてるよ」
「ダイエーは開いてるかな?」
「もう開いてるよ」
「ダイエーは開いてるかな?」
「やってるよ!」

朝からダイエーにコロッケを買いに行くのかは不明(笑)。

志村けんのようなコントを終えてようやく僕の頭に取りかかった美容師さんによると、開店時間の30分前に出勤してきたら、すでに店の前に彼女がチョコンと座っていたそうだ。ほぼ予約で埋まる美容院だが、彼女だけはいつでも飛び込みである(笑)。
「待たせてしまってすみませんね」と謝られたが、怒る理由は何もない。
それより、聞けばいま住んでいるアパートが老朽化で取り壊しになるので困っているとのこと。一人暮らしらしいので、かなり心配である。
その古い木造アパートの前で、いつも彼女はカートに腰掛けて日向ぼっこをしているのだ。小さな姿がかわいらしい。彼女の背景のアパートの壁にはアパートの名が大きく書かれている。ハゲかけたペンキの文字は「福寿荘」と読み取れる。

本文と写真は関係ありません。