「ぜんぜん見えないじゃないねぇ」
「なんで立って見ちゃだめなのかしら…」
暗闇の中、文句を言うたびに近くに立っている巫女さんが駆け寄っては「お静かに」と注意している。
今晩、鶴岡八幡宮の境内で『御鎮座記念祭』が行なわれた。
800年も前からここで行なわれている神楽である。
ただし、これは神事。エンターテインメントではない。
見えないと文句を言っちゃぁいけません。
かがり火だけの境内で始まった神事。
実は今、境内に何百人単位の人々がいるなんて信じられない静けさと暗さである。
その中、雅楽が響き、巫女さんが舞い、最後にはなんと神官が舞った。
確かに優雅だが、やっぱりそれは神事。淡々と粛々と進んでいくだけ。
1時間近く経っただろうか。足元から寒さがゆっくりと忍び寄ってくる。今晩はかなり冷え込んでいるようだ。
しかし、それがかえって神々しさを際立たせる。
時代を超えた舞に心が揺さぶられた。
鎌倉という場所だからこそできる素晴らしい体験だった。
そして、もうひとつ素晴らしかったことがある。
それは、この貴重な体験を仕事でさせてもらったということだ(笑)。
写真は『御鎮座記念祭』の後。ここに30名近い神官たちが座り「宮人曲」を奏でた。