この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

その映画の見方は間違ってる!と言いたくなる時。

2013-10-17 21:23:40 | 戯言
 問題です。
 次に挙げる映画の共通点は何でしょう?

 『アンストッパブル』、『ソーシャル・ネットワーク』、『英国王のスピーチ』、『マネー・ボール』、『ソウル・サーファー』、『最強のふたり』、『アルゴ』、『ゼロ・ダーク・サーティ』、『ポゼッション』、『死霊館』etc。

 映画好きな方なら超簡単、そうでないという方にもそんなに難しくないと思います。
 答えは、「事実を基にした映画」です。

 映画の見方というのは基本的に自由だと思っています。
 なぜならそれまで生きてきた人生が違うのであれば、人それぞれ感性が違うのは当然であり、感性が違えば映画を評価するポイントも違って当然だからです。
 とにかく可愛い女の子が出ていればそれでいい!!って人もいれば、映画は血飛沫が飛んでナンボ、と考える人もいるでしょう。それで構わないと思います。

 上述したような「事実を基にした映画」を好んで見る人がいます。
 もちろんそれは全然構わないのですが、「え?」と思うことがあって、それは「事実を基にした映画」を「事実そのもの」と捉えている人がいることです。

 作品によってその度合いは違いますが、基本的に「事実を基にした映画」は「事実そのまま」ではありません。あくまで作品の核になる部分が事実なのであって、往々にして細部は事実とは異なります。

 例えばブラット・ピットが主演した『マネー・ボール』。
 この映画を見ると、2002年がオークランド・アスレチックスにとってえらく劇的な年のような印象を受けますが、実際には過去十数年に渡って起きた出来事を一年間の間に起きたように描いているのだそうです。
 ブラット・ピットが演じたGMビリー・ビーンが“マネー・ボール理論”と出会ったのもこの年ではなく、また映画の中でビリーにこの理論を指南したピーター・ブランドは架空の人物だそうです(モデルとなった人物はいた)。

 また麻痺を持つ大富豪フィリップと黒人介護士ドリスの心の交流を描いた『最強のふたり』、エンドロールでドリスのモデルとなった人物が紹介されていますが、その人物は黒人ではありません。
 であれば、黒人系音楽が好きなこともダンスが得意なことも映画化される際に追加された設定なのでしょう。
 また映画を見る限りは、ドリスがフィリップの面倒を看たのはごく短期間のように受け取れますが、実際には十年に渡って世話をしたそうです。

 このように「事実を基にした映画」は「事実そのもの」ではなく、かなりの部分で映画として面白くなるように事実が脚色されているのです。

 自分は事実を脚色することが悪いと言っているのではありません。
 むしろその逆で、映画として面白くなるのなら、脚色は大いに行われるべきだと考えます。
 問題は見る側の意識であり、「事実を基にした映画」はドキュメンタリーではないのですから、あくまで(出発点が事実である)フィクションだと捉えるべきだと考えています。

 もしかしたら、「事実を基にした映画」が「事実そのもの」であると考えて何が悪い?お前は映画の見方は基本的に自由だと最初に言ったじゃないか、そう仰る方もいるかもしれません。
 確かにそうです。
 「事実を基にした映画」が「事実そのもの」と考えたからといって他人に迷惑をかけるわけでなし、そう考えるのもアリなのかもしれません。

 けれど、自分があえて「事実を基にした映画」はフィクションだと捉えるべきだと主張するのは逆のパターンが考えられるからです。
 逆のパターンとはつまり、「事実を基にしていない映画」が「事実を基にしていないから」という理由で低い評価を受けることを指します。

 去年観た映画に、1960年代のミシシッピーを舞台に、白人女性と黒人のメイドの関係を描いた『ヘルプ 心がつなぐストーリー』という作品があります。
 自分はかなり気に入っている一本なのですが、この映画の原作はキャサリン・ストケットの書いた小説です。
 つまり、映画の中で語られたエピソードはストケットの頭の中で創作されたものだと言えます。

 しかし自分はそれの何が悪いのかがよくわかりません。
 ある映画を観て感動したとしたら、その映画が事実を基にしていようがいまいが、感動は本物だと思うのです。
 少なくとも自分は、「事実を基にしている映画」も「事実を基にしていない映画」も同様のスタンスで鑑賞に臨むようにしています。
 それで特に何か支障があったことはありません。
コメント (4)
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