この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

SPL 狼よ静かに死ね

2006-11-05 21:47:26 | 新作映画
 『SPL 狼よ静かに死ね』、DVDにて鑑賞。

 本来アクション映画でドラマについてあれこれ言っても仕方がないと思う。例えばトニー・ジャー主演の『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』など、まずは何もいわずにアクションを見てくれ!!という創作姿勢が見て取れるので多少の展開の強引さや不自然さはケチをつける気にならない。
 ただ『SPL~』は事情が違って、アクションはもちろん、ドラマにも力を入れたぜ!という製作スタッフの意気込みが伝わってくるので、無論その意気込み自体は非常によいのだが、それについて言及しないわけにはいかない。
 はっきりいってしまうと『SPL~』のドラマ部分は不出来だと思う。
 まず登場人物が敵味方関わらず、揃いも揃って全員外ヅラは過剰なまでに攻撃的、でも実は家庭人、というのではキャラクター的に描き分けが出来ていないと思う。これでは見てる側としては誰に感情移入していいのかがわからない。
 展開もやたら不自然さが目立つ。銃の取引に出向いた刑事二人が取引相手の要求額に応じられず、刑事の一人が、じゃ、俺が用立ててくる、などと別行動を取るなど考えられない。彼らは自分たちの置かれた状況の危険性を認識していたはずなのに。
 結末もあまり納得できるものではなかった。
 チャン刑事は結局どうして助かったというのだろう?ポーがあれから改心して救急車でも呼んだのか?とてもそうとは思えないけれど。
 作品が何を言いたいのかもよくわからなかった。暴力の不毛さ、つまり因果応報ってことなのだろうか?キャラクターの掘り下げが出来ていないのに、つまりキャラクターに感情移入が出来てないのに、暴力の不毛さを訴えられてもどうかと思う。
 やはり同じようなノワールである『インファナル・アフェア』シリーズなどと比べたら、どうしてもドラマ部分が不出来に思えてしまう。
 とはいえ、『SPL~』はアクションシーンに目を向ければこれはもう白眉であるといっていい。特にドニー・イェン扮するマー刑事とウー・ジン扮する殺し屋ジェットの死闘はまさに比喩でも何でもなくまさに目にも留まらぬ。思わず知らぬ間に息を飲んでしまう。
 出来ればアクションの迫力を維持したまま、同時に完成した人間ドラマも見てみたいと思うのは贅沢なのだろうか。
コメント (2)
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