ブログ 「ごまめの歯軋り」

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平成経済 衰退の本質

2021年04月28日 | 書評
京都市北京区 京町屋

金子勝 著 「平成経済 衰退の本質」 

岩波新書(2019年4月)

第3章 転換に失敗する日本 (その3)

③ 転換の失敗がもたらしたもの (その2)
安倍首相は政策目標を何一つ実現することなく、その失敗を覆い隠すために政策目標を次々を打ち上げる口先だけの「スローガン政治」に徹している。忘れやすい野党はまともにその責任を追及して来なかった。2013年「三本の矢」、14年「女性活躍」、15年「新三本の矢」と「一億総活躍」、16年「働き方改革」、「生産性革命」、17年「人づくり革命」ところころスローガンを変えているが成果を検証したことは無い。三本の矢の「2年で2%の物価上昇」は6年たってもデフレ脱却は達成できなかった。もう日銀の黒田総裁はスローガンさえ口にしなくなった。安倍首相は「やっている感」を演出するだけで、嘘が連続するデマゴギー政治となった。強権政治に必要な「特定機密保護法」、「安保関連法」、「共謀罪法」など危険な法だけは強行採決している。外交はアメリカへの「ポチ外交」、「ゴルフ外交」だけで何の成果もなかった。北朝鮮問題やアジア経済圏に関しては、アメリカ無条件追従外交に終始し、日本をアジアの孤児にした。「原発セールス外交」はことごとく失敗した。日立が東芝に代わって原発推進役を買って出たが、原発輸出路線は完全に破綻した。日米貿易交渉では安倍首相は譲歩し続けた。TPPを推進するのではなく二国間FTA交渉でトランプに押し切られた。対ロシア外交では18年9月プーチン大統領に、北方領土問題を棚上げして「前提条件なしの平和条約締結」を主張されて一歩の前進も無かった。安倍の「ポピュリズム政治
は人々を扇動する演説の能力を持たないため、人びとを諦めさせることを狙っているようだ。野党の弱体化に助けられている場合が多い。また首相を取り巻く官僚陣営が政策決定にあずかっている。原発再稼働・原発輸出路線を推進する通産省出向官僚や特定機密保護法、共謀罪法を推進する公安警察、外事警察関係出向官僚である。しかし内政も外交もほとんど政策目標を達成していない。むしろ批判を封じるためにメディアに介入する強権を発動する。そして安倍政権は立法、行政、司法の三権分立を破壊しているが、これは公安警察出向官僚の官房副長官が局長を務める内閣人事局が600名の幹部官僚の人事権を握っているためである。公文書改ざん、統計資料の作為的偽造など、内閣の鼻息を伺う官僚の忖度が目に余るような不正につながっている。政治家の政治資金規正法違反は公然と行われ問題視さえされない。国民を「またか」というあきらめとニヒリズムのマイナスの感情に誘導している。究極の無責任時代に陥っており、自浄能力はさらさら存在しない。状況は次第に敗戦濃厚な戦時財政と似てきており、日本の経済と社会を破滅味追い込んでゆく危険性が高まっている。

(つづく)



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