ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 宮本太郎著 「生活保障ー排除しない社会へ」 岩波新書

2010年08月01日 | 書評
雇用と結び付ける「生活保障」政策 第15回 最終回

5)排除しない社会のかたち (4)

 2009年度の日本の祖税負担率は23%で、スウェーデンの49%、イギリスの38%、アメリカの26%にも及ばない。これには日本では行政不信による「税は取られるもの」という意識が根強く、税は「ステーキホルダー」(いつか自分にも廻ってくる講の掛け金)という観点が皆無であったからだ。「貧困はなぜ生じるのか」というアンケートで、欧州では「社会的不公正」から生じるという回答が60%程度であるが、日本や韓国・アメリカでは「怠惰のせい」だと回答する人が上回っている。新自由主義の考えにすっかり染まっているようだ。今の日本では公務員、正規社員、福祉制度がエスケープゴート視され、全員が低いレベルで平等という「引き下げ民主主義」(足の引っ張り合い)で満足するのは間違っている。著者は着実な改革とは、日本の歴史と現状から出発するもので、すべからく漸進的なものであるという。欧州では「福祉から就労へ」という流れで進んできたが、日本では「福祉よりも雇用が一番」で進んできた。雇用が守られている間は日本的労働市場も世界に冠たるものであったが、その前提が崩れつつある今、進むべき道はさてスウェーデン型生活保障で行くべきなのであろうか。



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