ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 山岡耕春著 「南海トラフ地震」 (岩波新書2016年1月)

2017年03月24日 | 書評
M8-9規模の南海トラフを震源域とする巨大地震をどう予測し、何が起きるか、どう備えるかを考える 第10回 最終回

4) 地震予測と震災対策

2011年4月27日「3.11東北地方沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門委員会」が設置され、同年9月28日報告書を取りまとめた。この報告を受け内閣府は南海トラフの巨大地震モデル検討会を設置し、2011年12月に中間とりまとめ、2012年8月29日に詳細な計算結果を公表した。2012年4月に南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループが内閣府の設置され、2012年8月に第1次報告、2013年3月に第2次報告を、5月に最終報告を公表した。同時に南海トラフ沿い大規模地震の予測可能性に関する調査部会(著者が座長)の報告がなされた。報告書はすべて内閣府ウエブページからダウンロードできる。国の想定は津波に関して11のケースを、地震発生場所につては4つのケースを想定した。個人の防災対策には都道府県別の被害想定、さらに市町村別の被害想定の方が役に立つ。内閣府の建物被害の想定の原因別内訳としては、揺れによる被害、液状化による被害、津波による被害、急傾斜地崩壊による被害、火災による被害という分類で検討されている。県別では静岡県、愛知県、大阪府・和歌山県、高知県別に補がい想定をまとめている。インフラの被害については、電気・ガス・水道の被害、通信の被害、交通・運輸の被害をまとめている。詳細は興味の場所が個人的に異なるのでここでは省略する。つぎに防災体制については、2014年3月内閣府は「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」を発表した。耐震対策、地震火災対策、津波対策、事業継続計画BCP、防災教育と広報活動、防災訓練、防災力の向上などが書かれている。行政的内容は予算的裏付けによって実効性が決まるので、お題目を並べた官僚文書は抽象的であり、ここに記しても意味はないので省略する。

(完)