アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「3・11」直後の流言飛語は何を意味するか

2024年03月22日 | 日本の政治・社会・経済と民主主義
  <揺れる真実-「謀略論」の周辺 第2部「人工地震」の深淵>と題した京都新聞(夕刊)の連載(共同配信)によれば、能登半島地震発生の直後から、「外国人窃盗団」が出没したというデマが拡散したそうです。

 そして、大震災直後のデマは「3・11」の東北も例外ではなかったとして、驚くべき実態が書かれていました。

<東日本大震災による津波の被害を取材するため、ジャーナリストの藤原亮司は、東北地方の漁港を歩いていた。陸に乗り上げた船などを撮影していると、5~6人の男性たちが何かを叫びながら走ってくるのが見えた。その手にはもりやバットが握られていた。

 藤原は男性たちに取り囲まれ、地面に押し付けられるように座らされた。「おまえは中国人だろう」「何を盗みに来た」。殺気立った雰囲気で詰問してくる。免許証などを見せ、取材目的で来ていることを説明すると、ようやく解放された。

「なぜこんなことをしているのか」。藤原がそう尋ねると、男性の1人は「中国人が被災地でいろんな物を盗んでいると聞いた」と答えた。男性たちから藤原に、はっきりした謝罪はなかった。(敬称略)>(16日付京都新聞夕刊)

 関東大震災(1923年)時の「自警団」(写真)を想起させます。東北でのこうしたでデマの流布は、郭基煥・東北学院大教授の調査でも裏付けられています。

<郭基煥が2016年、仙台市内で770人を対象に行った調査では、東日本大震災の際に外国人が被災地で犯罪をしているとのうわさを「聞いた」のが51・6%で、うち86・2%が「信じた」と回答した。「外国人」として挙げられたのは「中国系」が6割を超えていた。>(同京都新聞)

 関東大震災時の流言飛語で多数の朝鮮人らが虐殺されて101年(東日本大震災当時は88年)。同様のデマを「信じた」人が86%だったとは、衝撃的です。
大震災(大災害)直後のデマ(流言飛語)が何をもたらすか。歴史の教訓はまったく生かされていないと考えざるをえません。なぜなのでしょうか。

 第1に、在日外国人に向けられるヘイトスピーチ。
 第2に、「北朝鮮の挑発」などの決まり文句で繰り返されるメディアの偏向報道。
 第3に、関東大震災時の虐殺の「証拠はない」などといまだに隠ぺいを続ける自民党政権。

 これらがすぐに浮かびますが、それだけではないでしょう。この国・社会の排外主義・差別体制・差別構造はあらゆる面から抜本的に検証し改められなければなりません。

 重要なのは、外国(人)に対するデマ、それによって助長される差別・憎悪は、大震災(大災害)直後だけの問題ではないことです。それは、戦争を開始し継続する戦争国家の重要な思想的・感情的バックボーンだということです。

 軍靴の響きが大きくなっている今こそ、日本人は関東大震災時の虐殺の歴史とともに、国家権力とメディアが一体となった「鬼畜米英」「鮮人」「第三国人」キャンペーンによって侵略戦争・植民地支配が強行された歴史に学ばなければなりません。
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