安倍首相は12日イランへ行き、ロウハニ大統領と会談した後、13日未明(日本時間)共同記者発表しました(写真)。
きわめて奇妙で不可解な記者発表でした。安倍氏はいったい何をしにイランへ行ったのでしょうか。
今日の中東情勢の緊張激化の発端は、トランプ大統領による「イラン核合意」からの突然の離脱(2018年5月)であることは周知の事実です。
その後アメリカは、イラン産原油の禁輸などの制裁(同11月)、イランの革命防衛隊を「テロ組織」に指定(19年4月)、さらに空母の中東派遣(5月)と次々にイランへの圧力を強めてきました。イランとアメリカの関係悪化の原因がアメリカ・トランプ政権にあることは明白な事実です。
共同記者発表で、ロウハニ大統領は「現在の地域の緊張の原因はアメリカの経済戦争であり、それが終われば安定は確保される」と述べましたが、その通りです。
一方、日本は「イラン核合意」を支持する立場です。だからロウハニ大統領も「日本がこれからも核合意を支持することを期待する。この分野では日本と協力できる」と述べたのです。
ところが安倍首相は共同記者発表で、「緊張緩和に向けて役割を果たしたい」と言いながら、「イランが核合意を遵守することを期待したい」「忍耐がいる努力が必要だ」「日本はあきらめない」などと述べました。方向違いも甚だしいと言わねばなりません。
安倍氏に言われるまでもなく、イランは核合意を遵守しています。遵守していない(どころか離脱した)のはアメリカの方です。安倍氏が「核合意を遵守することを期待したい」というべき相手は、イランではなくアメリカではありませんか。安倍氏はいったいイランにどんな「忍耐がいる努力」を求めるというのでしょうか。
重ねて言いますが、安倍氏が向かうべき相手はイランではなくアメリカです。トランプ大統領に対し、「核合意を遵守するように」と進言すべきなのです。
にもかかわらず、トランプ氏との会談を受け、「仲介役」を気取ってイランへ行き、お門違いのことを言う。これでは、日本がアメリカの手先、使い走りと見られても当然です。事実そうですから。日本がこの姿勢を改めない限り、やがてイランの批判は日本へも向けられることになるでしょう。
ここに日米同盟(日米安保条約による軍事同盟)の実態・本質がはっきり表れています。
アメリカに追随する安倍氏の醜態は、もちろん安倍氏個人の問題ではありません。世界から見れば、それが日本という国だということです。その責任は主権者である「日本国民」にあることを銘記する必要があります。