アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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ウクライナの食料はどこへ向かっているのか

2022年10月03日 | 国家と戦争
   

 ウクライナ東部4州の「住民投票」、それによるプーチン大統領の「併合宣言」が情勢の大きな画期になることは確かです。戦争下の「住民投票」が正常なものでないことは言うまでもありません。

 しかし、メディアの報道は、ロシアと、ウクライナおよび支援するアメリカはじめG7諸国の攻防(戦況報道)に終始しており、重要な問題が切り捨てられています。

 1つは、停戦・和平をめぐる動向であり、もう1つは、ウクライナ戦争の犠牲を被っているアフリカなど途上国の状況、とりわけ食糧危機の現状です。

 ロシアの軍事侵攻後、ウクライナとロシアが唯一行った合意は、国連とトルコの仲介によって、南部オデーサ港からの食料輸出を再開したことでした(8月1日に第1弾が出港)。

 ところが、プーチン氏は9月7日、ウラジオストクの演説で、ウクライナから輸出した食料は「ほとんどがヨーロッパに送られており、肝心の途上国には3%しか届いていない」「欧州はかつて途上国を植民地にしたのと同様の行動で途上国をだましている」と非難しました。

 これに対しゼレンスキー大統領は、プーチン氏の演説はウソだとし、「食料輸送の大半は途上国向けだ」とウエブサイトで反論しました。

 輸送再開を仲介したトルコのエルドアン大統領は、「食料が貧困国に届いていないというプーチン大統領の主張は正しい」と述べました(以上、9月9日のNHK国際報道2022、写真も)。

 9月30日、プーチン氏はクレムリンで行った「4州併合演説」でも、あらためて「ウクライナの小麦は5%しか最貧国に届いておらず、多くは欧州へ送られている」(NHK同時通訳)と述べました。

 いったい真相はどうなのでしょうか?

 プーチン氏のウラジオストク演説に対して、EUなど欧州諸国が反論したというニュースは聞きませんでした。その後1カ月が経過しますが、メディアがこの問題を調査・追及した跡も見られません。

 プーチン氏だけでなく、仲介したトルコのエルドアン大統領もそれを是認したことは軽視できません。

 プーチン氏の主張、ロシアの行動で批判すべきはもちろん批判しなければなりません。しかし、メディアにとって最も重要なのは、戦争の真実・真相を調査して報じることです。ウクライナ食料輸出の行方は、その最も重要な問題の1つではないでしょうか。

 メディアだけでなく、輸出再開を仲介した国連も、調査して真相を明らかにし、公表する責任があります。

 メディアや国連がその責任を履行せず、“一方的に”ロシアを非難することは、泥沼の戦争を長期化させて、ウクライナ、ロシア、途上国の市民の犠牲を拡大し、最も重要な即時停戦・和平に逆行すると言わねばなりません。
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