アリの一言 

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「海底パイプライン爆破」の真相はなぜ隠されるのか

2023年09月29日 | 国家と戦争
   

 ロシアからドイツに天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1・2」の爆破(2022年9月26日)から1年。誰が(どの国が)何の目的で行ったのか、改めて注目されています。

 NHK「国際報道2023」(26日放送)によれば、ドイツ・シュピーゲル誌はこの問題でドイツ公共放送ZDFと共同取材し、8月下旬に特集記事を掲載しました。

 特集記事によれば、ドイツ捜査当局はことし1月、爆破犯人グループが使ったとされるヨットをドイツ北部の港で発見(写真左)。「当局はウクライナ特殊部隊が関与した疑いがあり、ロシア側の資金源を断つことが動機だったと見ている」と報じました。

 同誌のマーティン・クノベ記者は、「ロシアによる(ウクライナの仕業にみせかけた)いわゆる「偽旗作戦」も除外されてはいない。だが、現時点では大半の証拠はウクライナの犯行であることを示している」と述べています(写真中)。

 ところが不可思議なのは、ドイツ政府の態度です。政府報道官は、「誰がやったかをめぐる報道にはコメントしない」として口をつぐんでいるのです(写真右)。

 こうしたドイツ政府の対応についてはドイツ国内の専門家からも批判が出ています。
 ドイツ国際安全保障研究所のゲラン・スイステク氏はこう指摘します。

「もしウクライナがドイツのインフラに危害を加えることがあるとすれば、ドイツはいつまでウクライナを支援し続けるだろうか。多くの人(ドイツ国民)は支援できないと言うだろう。その圧力を受けて現在の政治的な意思決定プロセスも変わるかもしれない」
「アメリカやイギリスが黒幕だという説も聞いたことがある。そのような憶測をやめさせ、この問題をこれ以上政治的に利用させないためにも、捜査チームは最新の情報を提供するべきだ」(以上、NHK「国際報道2023」より)

 「ノルドストリーム爆破」については、ピューリッツア賞を受賞したジャーナリスト・シーモア・ハーシュ氏が、「米海軍の潜水士がパイプラインに遠隔で起動できる爆弾を仕掛けた」と調査報道しました(23年2月8日)。

 米紙ワシントン・ポストも「バイデン政権がウクライナ軍による攻撃計画の情報を事前に把握していた」と報じました(23年6月6日)。

 今回の、独シュピーゲル誌と独公共放送ZDFとの共同取材(独政府の捜査)は、それらに加え、「ウクライナの犯行」を裏付けるものです。

 ところがドイツ政府は自らの捜査にもかかわらず真相を明らかにしようとしていません。それは「ウクライナの犯行」だと分かればウクライナへの軍事支援が困難になるからだ、というスイステク氏の指摘は妥当でしょう。

 ドイツ政府だけではありません。
 ハーシュ氏やワシントン・ポスト紙の報道にもかかわらず、米バイデン政権もこの問題には一貫して口をつぐんだままです。

 NHKはじめ日本のメディアが独自に真相に迫ろうとしてはいないことは言うまでもありません。

 そして、ウクライナ政府は今も関与を否定し続けています。

 これが「ウクライナ戦争」「ウクライナ軍事支援」をめぐる米欧諸国とメディアの実態です。
 真実を政治的思惑で隠ぺいすることは絶対に許されません。
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