アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「拉致問題」中学生を洗脳し政府広報に利用する卑劣

2023年08月14日 | 朝鮮半島の歴史・政治と日本.
   

 <「親世代と会わせたい」横田代表が拉致解決訴え>―11日付の京都新聞第2社会面下段にベタ(1段)で短い記事(共同配信)が載りました。朝日新聞デジタルも10日付で短い記事を配信しました。見出しは<政府が拉致問題考える「中学生サミット」 横田めぐみさん弟が講演>。以下、朝日新聞デジタル記事の全文です。

「北朝鮮による拉致問題を若い世代に知ってもらおうと、政府は10日、都内で「中学生サミット」(内閣官房主催)を初めて開いた。被害者の帰国から20年がたつなかで、問題の風化を防ぐ狙い。全国から中学生約60人が参加した。

 拉致問題を担当する松野博一官房長官は冒頭、「被害者の帰国実現への強い意思を国民が示すことが、問題解決の後押しとなる。とくに若い世代が理解を深めることは重要だ」と述べた。拉致被害者の横田めぐみさんの弟で、拉致被害者家族連絡会代表の横田拓也さんが講演し、「自分や自分の家族が拉致されたらと考え、調べ、行動することを若いみなさんにお願いしたい」と呼びかけた。

 参加した中学生は、拉致問題を伝えるための動画広告を作る想定で、内容について意見を交わした。内閣官房の拉致問題対策本部は、今後作成する動画広告に中学生の意見を反映することも検討するという」

 これは決して見過ごしてはならない重大な問題です。

 「中学生サミット」(写真)は内閣官房の主催で初めて行われ、全国から60人が選ばれて東京に集められた。きわめて計画的な政治行為です。政府主催の会で「拉致問題」の背景・経緯の真実、あるいは日本の「拉致犯罪」である植民地支配当時の強制連行が語られることはあり得ません。政府・自民党の見方が中学生に刷り込まれたことは明らかです。

 たとえば、朝鮮敵視から制裁を強めている日本政府が、「日朝国交正常化交渉なくして、拉致問題の進展なし」(江口昌樹・敬和学園大非常勤講師『拉致問題を超えて-平和的解決への提言』社会評論社2017年)という見解があることに触れるはずがありません。

 拉致被害者家族が自身の心情を訴えるのは自然なことかもしれませんが、感受性の鋭い中学生にとってそれは「拉致問題」を感情的・感覚的に受け止めることにならざるをえません。

 一言でいって、この「中学生サミット」なるものは、「拉致問題」についての政府・自民党の考えを注入し、「北朝鮮」(朝鮮民主主義人民共和国)に対する憎悪をかき立てる洗脳の場にほかなりません。

 しかも政府は、この場での中学生の発言・討論を「今後作成する動画広告」に使おうとしています。中学生を政府の広報に利用しようというのです。

 こうした政治的策動は、日本国憲法の「思想及び良心の自由」(第19条)に反し、教育基本法の「幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養(う)」(第2条)という基本精神にも反しています。

 しかも政府は、「北朝鮮脅威」論を大軍拡の口実にしており、「拉致問題」の政府広報に中学生を使うことは、中学生を大軍拡に利用することに他なりません。それは、朝鮮との国交回復・朝鮮半島の平和にも逆行し、今日的な“軍国少年”をつくるものと言えるのではないでしょうか。

 政府主催の卑劣な「拉致問題・中学生サミット」に断固抗議します。中学生の討論を政府広報に利用することは絶対に許すことができません。
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