アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「政権交代」「二大政党制」という神話

2017年10月03日 | 政治・選挙

       

 「希望の党」の小池百合子氏や前原誠司らの動きの動機(口実)は、「政権交代」「二大政党制」の実現に尽きます。彼らの後ろには、それを持論とする小沢一郎氏がいることは明白です。
 「政権交代」信奉は他の野党にも蔓延しています。市民の中にも「政権交代」で政治はマシになるのではないかという思いは少なくないようです。
 果たしてそうでしょうか。

 直近の「政権交代」は、自民党政権から民主党政権(2009・9・16~2012・12・25)への交代でした。その結果はどうだったでしょうか。
 慶応大研究センターの世論調査によると、「政権交代で政治は良くなったか」との質問には、「良くなった」は3%にすぎず、「変わらない」が58%、「悪くなった」が36%という評価でした(2012年3月調査、小林良彰慶大教授『政権交代』中公新書2012年)。

 「どうして政権交代がもてはやされるのだろうか。それは、政治の神話に起因する。いろいろな政治の神話のなかでも一般に流布しているのが「政権交代神話」と「二大政党制神話」である。…政権交代さえすれば政治が良くなるというのは神話にすぎない。政策が変わらない政権交代では政治家の権力闘争に過ぎず、有権者にとっては意味がない」(小林氏、前掲書)

 では、何が必要なのでしょうか。

 「ここで問われるのは、政治家ばかりではなく有権者も同様である。選挙で自分たちの代表者を選択する際に、政策に基づいて投票を行っているのか。また、前回選挙から当該選挙までの間の政治家の業績に対する評価に基づいて投票を行っているかも問われることになる。
 こうした争点態度業績評価に基づいて投票行動を決定しているのではなく、そのときの首相の個人的な人気によって情緒的に投票を決定しているとしたら、有権者が選挙における「民意の負託」を通して、自分たちで自分たちのことを決定するという間接代議制の「擬制」(同一・実現の意ー引用者)は成立しない」(小林氏、前掲書)

 山口二郎北海道大教授も民主党政権を振り返ってこう指摘します。
 「日本の政治を立て直すために何が必要か…いま我々がなすべきことは、民主主義の回復である。何が我々のための政策か、我々自身によって議論し、定義することである。民主主義の欠乏を克服するためには、より多くの民主主義を我々自身が実現するしかない」
 「民主主義は国会の中や選挙の時だけ存在するのではない。街頭にも民主主義はある我々が主権者として、国の政策に声を上げることが今ほど必要な時はない」(山口氏『政権交代とは何だったのか』岩波新書2012年)

 「政権交代」すれば政治が変わる、良くなるというのは「神話」です。肝心なのは「政策」です。基本政策が変わらなければ政治は変わりません。

 同時に、「政権交代神話」「二大政党制神話」と密接不可分な小選挙区制の見直しが不可欠です。

 小選挙区制は大量の死票を生む(「4割の得票で8割の議席」)非民主的な選挙制度であることは自明ですが、同時に、日本社会の現状に照らしても見直さねばなりません。

 「小選挙区制は、②の点(国民の意思を公正かつ効果的に国会に反映させるという民主的代表の論理ー引用者)に大きな問題があり(第三党以下の少数党にきわめて不利に働く)、イギリスのような社会の均質性の度合いが比較的に強いところではともかく(そこでも近時多くの問題が指摘されているが)、国民の価値観が多元的に分かれている国においては、適切ではない」(芦部信喜『憲法 第五版』岩波書店)

 経済格差が拡大して貧困率が高く、価値観が多様化している日本で、市民の多様な考えを反映させ要求を実現する選挙制度として、小選挙区制はふさわしくありません。

 「民主主義を回復するためには、現在の衆議院の選挙制度、特に小選挙区制度を廃止すべきだという声が徐々に広がってきた。確かに小選挙区制は二大政党への集約化をもたらしたが、政党を無原則な方便にしたことも否めない。理屈としては、比例代表を基本とした選挙制度の方が、民意を反映しやすい」(山口氏、前掲書)

 どんな「政策」「選挙制度」を選択するのか。問われているのはわれわれ「主権者」です。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« これが小池百合子氏の素顔ー... | トップ | 「北朝鮮の脅威」口実にした... »