アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

NHKが報じない英王室批判・離脱の広がり

2022年09月21日 | 天皇制とメディア・「文化人」
   

 英エリザベス女王の国葬が行われた19日、NHKは午後7時のニュースを1時間15分に拡大したのに続き、8時15分から55分まで生中継、さらにニュースウオッチ9で詳しく報じるなど、異常な力の入れようでした(記者らが喪に服していたことは言うまでもありません=写真右)。

 その内容は女王の賛美一色。NHKがこれほど力を入れて女王・英王室を美化する底流には、日本の皇室・天皇制擁護があります。
 しかし、NHKの報道とは違い、英国内でも国葬に対する抗議活動があり、英連邦諸国やかつて植民地支配された国々からは女王・君主制に対する批判、離脱の動きが強まっています。

 英連邦の中で、カリブ海の島国やカナダで君主制から離脱して共和国に移行する動きが強まっていることは先に見ましたが(10日のブログ)、それ以外にも次のような動向があります。

◎ロンドンで国葬・王制に反対する市民の抗議活動

 NHKの中継は「涙で女王に別れを惜しむ市民」ばかりが映されましたが、市民はけっして一色ではありません。16日のニュースでは、ロンドン警視庁が「国葬を前に王政反対の抗議活動も強制的な排除は行わない方針」を決めたと報じました(写真左)。

 当然のことですが、それをわざわざ確認しなければならないのは、ロンドン市内でも国葬・王制反対の抗議活動が起こっていることを示しています。国葬当日どのような抗議活動があったのか知りたいところですが、NHKがそれを報じることはありませんでした。

◎オーストラリアで国王廃止の議論と世論が増加

「女王の死去を受け、英国王を国家元首とする立憲君主制を取るオーストラリアで、国王を廃止する議論に注目が集まっている。

 1990年代に「英国の影響から完全に抜け出るべきだ」などとして共和制への移行が議論されたが、この時は国民投票(99年)で立憲君主制の維持が決まった(共和制賛成45%、反対55%)。

 5月の総選挙で政権を握った労働党は、共和制への移行を党是として掲げている。アルバニージー首相も共和制支持派として知られ、自身の就任宣誓式でも女王への忠誠は誓わなかった。

 公共放送ABCが5月に発表した世論調査では、共和制移行に賛成が43%で、16年の36%、19年の39%からじわじわと上昇している」(10日付朝日新聞デジタルから抜粋)

◎「支配の象徴」英王室の冠のダイヤ返還求める声が再燃

「女王の死去を受けて、英国の植民地だったインドで英王室の冠に飾られているダイヤモンド「コイヌール」(写真中)の返還を求める声がネット上を中心に再燃している。ツイッターでは「インドから奪取された」「早く返還を」と求める声が強まった。

 英国の慈善団体によると、コイヌールは「おそらく南インド中央部の鉱山で産出された」という。イランやアフガニスタンの王族が所有していたこともあり、「支配の象徴」とされてきた。

 このダイヤをめぐっては、1947年に独立したインドのほか、パキスタンなど近隣国がたびたび返還を求めてきたが、英政府は後ろ向きな姿勢を見せてきた。キャメロン元首相は2010年に返還について問われた際、「一つのものに応じれば、大英博物館は空っぽになるだろう」と答えた」(18日付朝日新聞デジタルから抜粋)

◎「私は追悼できない」アフリカで消えぬ被支配の記憶

「英国が数多くの地域を植民地として支配してきたアフリカ大陸からは、過去の植民地支配や弾圧への憤りが数多く発信されている。

 弁護士を名乗るケニア人女性はツイッターで9日、52~60年の独立闘争に対する英国の弾圧に触れた上で、「私たちの祖父母はほとんどが弾圧された」「私は追悼することができない」と投稿した。

 同じく英国に支配された歴史を持つ南アフリカでは、第2野党が9日、「我々はエリザベス女王の死を悼まない」とする声明を発表。「女王として在位していた70年間、彼女は英国が世界中で侵略した現地の人々に対して、彼女の一族が行った残虐行為を一度も認めることはなかった」などと批判した」(19日付朝日新聞デジタルから抜粋)

 植民地支配した地の文化財略奪といい、侵略・植民地支配の責任棚上げといい、英国と日本の共通点は少なくありません。天皇・君主制を美化・擁護するメディア・「識者」らの報道・言説とは逆に、植民地支配の責任追及、君主制からの離脱の動きは広がっています。日本でも「象徴天皇制」の再検討・廃止へ向けて議論を広げていく必要があります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする