アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「辺野古に陸自常駐」極秘合意の本質は何か

2021年01月30日 | 沖縄と日米安保・自衛隊

    

 「辺野古に陸自離島部隊 米海兵隊と極秘合意」(25日付琉球新報)、「辺野古 陸自も常駐 海兵隊と極秘合意 日米一体化 中核拠点に」(同沖縄タイムス)。
 25日の沖縄県2紙は、共同通信の記事をいずれも1面トップ、2~3面、社会面で大きく扱い、その後も連載などを行っています。

 記事のポイントは、陸自トップの岩田清文陸幕長と在日米海兵隊のニコルソン司令官(いずれも当時)が、2015年、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブを米軍と自衛隊が共同使用し、陸自の「離島防衛部隊・水陸機動団」(写真左は米軍と共同訓練する水陸機動団=2020年2月、同記事より)を常駐させることで秘密裏に合意していた、というものです。

 米軍と自衛隊の基地共同使用、水陸機動団の沖縄配備構想は以前から公然の秘密でしたが、なぜ今、表面化したのでしょうか。
 前泊博盛・沖縄国際大教授は、「政府関係者がこの時期に計画を認めたのは、自衛隊が県民の間に浸透したという自信の表れだろう」(25日付沖縄タイムス)と述べています。

 興味深い指摘ですが、「浸透した」というより、「本土」はもちろん沖縄でも、「平和・民主勢力」から自衛隊配備に反対する声が聞こえなくなったことに対する政府・自衛隊の自信・慢心の表れ、というべきではないでしょうか。

 今回の報道を受けた玉城デニー知事(「オール沖縄」)の記者会見は次のようでした。
 「玉城知事は自衛隊の存在自体は容認する立場だ。「日本国憲法の中で認められている存在としての自衛隊が原点だ」と説明し、シュワブなどの共用化は「沖縄で現にさまざまな活動で県民生活に寄与している自衛隊の皆さんにも失礼だ」と強調した」(27日付琉球新報)。「自衛隊合憲」論を強調し、沖縄に配備されている自衛隊に共感を示したのです。

 17日投票の宮古島市長選で、「オール沖縄」候補も陸自配備強化を容認しました。その直前の15日には、同じく「オール沖縄」の城間幹子那覇市長が陸自成人式に祝辞を寄せました。「自衛隊の成人祝賀行事で地元首長が祝辞を述べるのは1972年の創設以来、初めて」(17日付琉球新報)です。今回の「スクープ」がこうした流れの中で出てきたことは決して偶然ではないでしょう。

 しかし、問題は今に始まったことではありません。ニコルソン司令官は2017年11月16日の記者会見で、「防衛省が陸上自衛隊に創設する「日本版海兵隊」の水陸機動団が、将来的に県内の米軍基地に配備されるとの認識を示した」(17年11月17日付琉球新報)と、「秘密同意」の内容を公言しました。

 その4日後の11月20日、ニコルソン司令官は翁長雄志知事(当時)と会談しました。そこで翁長氏はニコルソン氏にこう言いました。「日米が世界の人権と民主主義を守ろうというのが日米安保条約だ」(写真右、17年11月21日付沖縄タイムス)。

 ニコルソン司令官が「水陸機動団」の沖縄配備を表明したのは、日米安保条約(軍事同盟)に基づく米軍・自衛隊一体化の強化であることは言うまでもありません。その日米安保条約を翁長知事は、「日米が世界の人権と民主主義を守る」ものと絶賛したのです。「オール沖縄」の知事によるこの発言が、ニコルソン司令官の「水陸機動団の沖縄(キャンプ・シュワブ)配備」構想を後押ししたことは間違いないでしょう。

 今回明らかになった秘密合意問題の本質は、「文民統制逸脱」(25日付琉球新報社説)などではありません。自衛隊(配備)を容認する限り、まして玉城氏や翁長氏のように自衛隊・日米安保を賛美する限り、米軍と自衛隊の一体化、沖縄の軍事要塞化・前線基地化に歯止めはかからない、ということです。
 沖縄の、そして「本土」の平和・民主勢力は、「オール沖縄」の虚構・呪縛を解き放ち、日米安保条約・自衛隊反対のたたかいを再構築すべきです。


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