アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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放射能汚染水の海洋放出を許してならない4つの理由

2020年10月29日 | 公害・原発・環境問題

    
 東京電力福島第一原発は毎日約140㌧の放射能汚染水を出しています。これまでたまった汚染水は123万㌧(9月末現在)。2022年10月には貯蔵容量の限界に達します。東電と自民党政権は汚染水を海に放出しようとしています。27日に予定していた正式決定は延期しましたが、方針は変えていません。海洋放出は絶対に許すことはできません。少なくとも4つの重大な問題があります。

 1に、住民・市民の圧倒的な反対です。

 政府の「海洋放出方針」に対し、4月15日から始まった意見公募(パブリックコメント)は異例の3回の締め切り延長で7月31日まで行われました。結果、4011件の意見が寄せられました。このうち「処理水は人体に有害だ」などとして安全性を懸念した意見が約2700件、「漁業者らが反対する中で結論を出すべきではない」とプロセスに対する懸念・反対意見が約1400件(重複を含む)。住民・市民の懸念・反対は圧倒的です(10月23日付共同配信)。

 2に、理解が得られなければ放出しないというのは東電の公約です。

 2015年8月、福島県漁業共同組合連合会と東電の話し合いの中で、組合連合会は、「建屋内の水は…漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わないこと」という「要望書」を提出しました。
 これに対し東電は、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備等で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします」(2015年8月25日)と回答しました(「今、憲法を考える会通信」9月29日号所収、これ以上海を汚すな!市民会議・片岡輝美氏の論稿より)。
 反対を押し切って海洋放出はしないというのは漁業組合、住民、国民に対する東電の公約です。反故にすることは絶対に許されません。

 3に、汚染水には各種の放射性物質が含まれており、放出は重大な放射能被ばくを招きます。

 汚染水は多核種除去設備によってトリチウム以外の62核種の放射性物質を除去する、というのが東電と政府の言い分でした。しかし、国際環境団体グリーンピースは10月23日に報告書を発表し、「汚染水にはトリチウムのほかにも炭素14、ストロンチウム90、セシウムなどさらに危険な物質が含まれているにもかかわらず、日本政府はこうした事実をきちんと伝えていないと批判」(24日付ハンギョレ新聞)しました。

 汚染水の海洋放出によって重大な被ばくが生じるのは明らかです。「全国被爆二世団体連絡協議会」(崎山昇会長)は今月22日、菅首相に対し、「ALPS(多核種除去設備)処理水の海洋放出・大気放出を行わないことを求める要請書」を提出しました。その中でこう強調しています。
 「国策による福島第一原発の事故によって、多くの被ばく者が生み出され、今も「公衆の被ばく限度」を超える被ばくを強いられている人たちがいます。私たちは、原爆による核の被害者として、これ以上ヒバクシャ、放射線による被ばく者を生み出すことを容認できません

 汚染水の恐怖はけっして「風評被害」ではありません。東電と政府によって生み出されている根拠ある恐怖です。

 第4に、海洋放出は世界に放射能被害を拡散し、とりわけ隣国・韓国に直接大きな影響を与えます。

 韓国の与党「共に民主党」のイ・ナギョン代表は22日、日本の冨田浩司駐韓大使に「すべての情報を透明に公開し、国際社会の同意を得ながら事を進めるべきだ」と申し入れました。また、国会科学技術情報放送通信委員会は23日、「国際社会と隣接国家の同意なき放出推進を中止することを厳重に求める」と決議しました(24日付ハンギョレ新聞より)。

 ハンギョレ新聞は社説(24日付)でこう主張しています。
 「菅政権には、放出決定を強行すれば、韓日関係の改善はいっそう難しくなるということを明確に認識することを望む。放射能汚染水の放出による健康・環境被害、韓日関係の悪化は取り返しがつかない

 東電、菅政権による放射能汚染水の海洋放出を阻止することは、私たち日本人の国際的責任です。

 

 


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