アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日曜日記69・香港と「阪神教育闘争」・安倍首相の元号政治利用

2019年10月06日 | 日記・エッセイ・コラム

☆香港市民の闘いと「阪神教育闘争」

  香港のデモで1日、高校生が警察官に至近距離から撃たれ重傷を負ったのに続き、5日には警察官の発砲によって14歳の少年が負傷した。これを聞いて、16歳の少年が警察官に撃たれて死亡した日本の「阪神教育闘争」(1948年)が頭に浮かんだ。

  1947年10月、アメリカ占領軍は在日朝鮮人の民族教育を否定し、日本の教育に従わせるよう日本政府に指令した。これを受けて文部省(当時)は48年1月、朝鮮人学校を事実上禁止する通達を出した。

 「占領軍を後ろ盾とした文部省のこの措置は、在日朝鮮人にとっては戦前の『皇民化教育』の再現と受けとめられ、猛烈な抗議運動がくりひろげられた。(1948年)3月、地方軍政部と都道府県は朝鮮人学校の封鎖措置に乗り出した。これに反対する朝鮮人と当局との衝突が各地で発生した。
 反対運動が最も激烈に闘われたのが神戸と大阪であった。4月24日、神戸では非常事態宣言が出され…大阪では26日、大手前公園での学校封鎖に抗議する3万人参加の集会とデモに対して警察が発砲し、当時16歳の金太一が死亡、27人が負傷した」(水野直樹・文京沫著『在日朝鮮人』岩波新書)

 在日朝鮮人の民族教育を守る闘いと、香港の自治・自由を守る闘い。アメリカ占領軍を後ろ盾とした日本政府の弾圧と、中国を後ろ盾とした香港当局の弾圧。神戸の「非常事態宣言」と、香港の「緊急状況規制条例」。共通点が少なくない。
 日本政府の在日朝鮮人に対する差別・弾圧は今も続き、安倍政権によって強化されている。香港市民の闘いをけっして対岸視することはできない。

☆安倍首相の元号政治利用

  4日の安倍首相の所信表明演説は、日米同盟の賛美、改憲意欲の強調など内容上問題が山積していることは言うまでもないが、ALSの舩後靖彦議員をあえて取り上げたり、金子みすゞの言葉を流用するなど、見え透いた手法にも虫唾が走った。

 中でも見過ごすことができないのは、新元号「令和」を9回も連呼したことだ。「令和の時代の新しい国創り」「令和の時代にふさわしい社会保障」…といった具合だ。

 元号は天皇が時間をも支配するという皇国史観によるものだ。その元号を法律(元号法)で公認し、元号で時代を区分しようとすることは、主権在民の現行憲法に反した今日的皇民化政策に他ならない。

 さらに、国家権力にとっての元号の利用価値はそれだけではない。元号と天皇・皇室タブーを結び付けてキャンペーンし、それが「神聖不可侵」のものであるかのような社会的雰囲気をつくりあげ、国家権力(時の政権)の施策に結びつけて合理化を図る。元号の政治利用だ。
 「新元号」によって「新しい時代」を印象付け、それを改憲や社会保障改悪につなげようとした安倍の4日の演説は、その政治利用を絵に描いたように見せつけた。

 「市民」はなにげなく無意識に元号を使っても、国家権力は狡猾にそれを政治利用する。だからこそ元号は廃止しなければならない。安倍の所信表明は逆にそのことを証明した。


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