アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「ちびっこ相撲」女児排除と貴乃花の「国体」論

2018年04月14日 | 天皇制と日本社会

     

 大相撲の女人禁制は天皇制・皇室典範の女性差別と密接な関係にあると先に書きましたが(4月7日のブログ参照)、それを証明するような事実がまた明らかになりました。

  静岡市で8日行われた大相撲春巡業で、力士が土俵上で小学生らに稽古をつける「ちびっこ相撲」(写真左)から、女児が排除されたのです。静岡だけではありません。宝塚市(6日)でも、長野県(10、11日)でも同様のことが起こっています。

 いずれも日本相撲協会から「女子を土俵に上げるのは遠慮してほしい」(13日付琉球新報)という「要請」があったからです。昨年までは女子も土俵に上がっていましたが、今年から禁止されました。

 これについて日本相撲協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)はこう述べています。
 「女の子が万一けがをして顔に傷がついたりするようなことがあっては困るということで、巡業部で検討して昨年9~10月ごろに決めた。安全確保がすべてで女人禁制とは関係ない」(13日付読売新聞)

 「けが」はとってつけた口実でしょう。「けが」があるとすれば女子だけではありません。「顔に傷」云々にいたっては逆に女性差別と言わねばなりません。「ちびっこ相撲」からの女児排除が「女人禁制」の一環があることは疑いようがありません。

 ここで注目されるのは、「巡業部で検討して昨年9~10月ごろ決めた」ということです。当時の巡業部長はだれだったか。貴乃花親方です(今年3月辞任)。今年から「ちびっこ相撲」で女児を排除するという相撲協会の決定は、貴乃花が中心に決めたものだということです。

 この貴乃花の決定は、大相撲は「国体」=天皇制を支えるものだという彼の大相撲・天皇制観と無関係ではないでしょう。

 貴乃花は常々、後援会など内輪の集まりでは、天皇制を支える大相撲の精神をうたった「角道の精華」(かつての力士研修所の教材)を賛美し、「『角道の精華』にウソをつくことなく、国体を担っていける大相撲角界の精華を」などと語っていました(写真中)。

 昨年の「貴ノ岩暴行事件」で貴乃花のこうした「思想」があらためてクローズアップされました。中島岳志東京工業大教授はこう指摘していました。

 「彼(貴乃花)の発する言動の中には、極端なナショナリズムが見え隠れする。『週刊朝日』」12月22日号の『貴乃花親方の逆襲』では、支援者に送ったメールが紹介されているが、そこでは相撲協会を『国体を担う団体』と位置づけ、『日本を取り戻すことのみ』が『私の大義であり大道』だと述べている。九州場所の千秋楽打ち上げでも『日本国体を担う相撲道の精神』という言葉を使ってスピーチを行っている。
 『国体』とは、日本という国を『万世一系の天皇』によって支えられてきた特殊な国柄と捉えるもので…貴乃花親方は繰り返し天皇に言及し、力士は『陛下の御守護をいたす』ことに『天命』があると述べていることから、意識的に『国体』という言葉を使っていることがわかる」(2017年12月26日付東京新聞夕刊)

 昨年は、天皇の「退位特例法」(6月9日成立)論議の中で、安倍首相らの「女帝」を認めない皇室典範の「皇統男系主義」があらためて強調された時です。9月3日には秋篠宮の長女・眞子氏の「婚約会見」が行われ、女性皇族のあり方が話題になりました。

 皇室をめぐるこうした動きの中で、天皇主義者の貴乃花巡業部長が、「女人禁制」の「伝統」を固守するため、地方巡業の「ちびっこ相撲」から女児を排除することを決めた、と考えてもけっして不自然ではないでしょう。

 貴乃花ほどであからさまではありませんが、日本相撲協会が天皇制と密接な関係にあることは周知の事実です。昨年の「暴行事件」の中で、八角理事長(写真右の中央)が力士に対する「講話」(11月28日)で、「日本の国技といわれる相撲、日本の文化そして誇りを背負っているんです」と述べ、「日本の国技を背負う力士であるという認識」を強調したのも、貴乃花が言う「国体を担う相撲道」と大同小異でしょう。

 今回の「女性は土俵から下りてください」アナウンス(4日、舞鶴巡業)、「ちびっこ相撲」からの女児排除であらためて明らかになったのは、大相撲の女性排除(差別)の実態(伝統)であり、それが天皇制と深く結びついたものだということです。

 そうした女性排除・差別が、私的な宗教観にとどまらず、日本相撲協会という公益法人の正式な運営方針になっているところに、無意識のうちに「(象徴)天皇制」が根を張っている日本社会の問題性があると言えるでしょう。


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