アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「安倍首相の妻が名誉校長」だけで大問題

2017年02月23日 | 安倍政権と民主主義

      

 学校法人「森友学園」(大阪府豊中市、籠池泰典理事長=日本会議大阪運営委員)が4月に新設する小学校(瑞穂の國記念小學院)の予定地(国有地)が、評価額の14%で払い下げられた(評価額9億5600万円、取得額1億3400万円)問題が国会で追及されています。

 この小学校の「名誉校長」が安倍晋三首相の妻・昭恵氏であることから、破格の国有地払い下げの背景に安倍氏や昭恵氏も絡んだ政治的圧力があったのではないかという疑惑です。

 疑惑は徹底的に追及される必要があります。しかし、同時に強調しなければならないのは、たとえ土地払い下げに不正はなかったとしても、見逃せない重大な問題があることです。それは、、「首相の妻」である安倍昭恵氏がこの小学校の名誉校長であること自体が、憲法や戦後民主主義に照らして絶対に許されることではないということです。

 籠池氏はメディアのインタビューで、昭恵氏に名誉校長就任を依頼したのは、「教育的な事項で賛同していただいている」からだと述べています。(写真中)。
 また昭恵氏も、同小学校のHPで、同校が「優れた道徳教育を基として」いることを評価しているとして同校に期待しています。(写真右)
 両氏が認めている通り、昭恵氏が名誉校長に就任したのは、同校の「教育事項」とりわけ「道徳教育」を評価しているからです。

 ではその「道徳教育」はどのようなものでしょうか。

 同校のHPにある「教育理念」の中の「教育の要」は、「天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ」などとともに、こう記しています。「教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成(全教科の要)」
 さらに、「各教科の目標」の中の「特別活動」の項には、「海上自衛隊・陸上自衛隊見学」などとともに、「道徳(教育勅語)」と明記しています。

 この小学校の「教育理念」とりわけ「道徳教育」の中心は教育勅語なのです。
 森友学園が運営している幼稚園(塚本幼稚園、大阪市内)ではすでに園児に教育勅語を唱和させています。

 昭恵氏が同校のこうした「教育理念」「道徳教育」を評価して名誉校長に就任したということは、昭恵氏自身が教育勅語を評価・賛美していることにほかなりません。

 教育勅語は、天皇主権の大日本帝国憲法制定の翌年(1890年)に、明治天皇の言葉として発せられた、「国家神道の聖典」(村上重良氏『天皇制国家と宗教』講談社文庫)というべきものです。「我が皇祖皇宗」から始まり、非常事態に際しては「義勇公に奉じ、以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」として、「道徳を天皇と国のためにすべて捧げる行為に収斂し…『八紘一宇』の侵略主義の思想的原点」(村上氏、同)となったものです。

 だから戦後いちはやく教育勅語は廃止され、代わって国民主権の日本国憲法施行の年(1947年)、教育基本法が制定されました。「教育基本法はあえて異例の前文をおき、『憲法の精神を徹底』するとともに、『他の教育法令の根拠法』となるべき性格をもたせた」(中村政則氏『戦後史』岩波新書)のです。「憲法と教育基本法は一体不可分のものという理念があった」(同)からです。

 天皇主権の大日本帝国憲法と一体の教育勅語。その歴史的教訓から、国民主権の日本国憲法と一体不可分で制定されたのが教育基本法です。
 教育勅語の賛美・教育現場への導入は、たんなる時代錯誤ではなく、国民主権の日本国憲法を蹂躙し、天皇主権の大日本帝国憲法に引き戻そうとする改憲策動と一体です。

 「総理の妻」はけっして私人ではなく、外交などで首相と行動を共にする公人とみなされています(そのことの良しあしは別として)。現に森友学園(日本会議関係法人)はHPで昭恵氏を「安倍晋三内閣総理大臣夫人」と紹介し、その公的立場・肩書を最大限利用しています。

 教育勅語の賛美・復活は絶対に許されません。
 「首相の妻」である安倍昭恵氏は名誉校長を直ちに辞任すべきです。


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