アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「核兵器禁止決議」に反対ーこれが日米安保条約の実態

2016年10月29日 | 核被曝・放射能汚染と日米安保

    

 国連総会第1委員会で28日(日本時間)採択された「核兵器禁止条約・2017年制定交渉開始」決議に、日本政府(安倍政権)は反対しました。
 これに対し、非核兵器国やNGO、そして広島、長崎はじめ国内の被爆者・団体、市民から、「裏切り行為だ」(長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会・川野浩一議長)など厳しい批判が相次いでいます。当然です。

 しかし、日本政府がなぜ核兵器廃絶の願いに逆行する態度をとったのか、その根源は何なのか。それが明確になっているとは言えません。

 岸田文雄外相は「核兵器国と非核兵器国の亀裂を深めるから」だと苦しい言い訳をしていますが、そのウソは見抜かれています。

 29日付中国新聞の社説は「被爆国の役割を果たせ」と題して、こう主張しています。

 「米国の顔色をうかがい、その圧力に屈したのは間違いない。危機感を強める米国が同盟国に反対と交渉の不参加を強く求める書簡を配っていたからだ。…力には力という発想で核で脅し合うのは冷戦時代の遺物でしかない。…日本は禁止条約への動きを米国の『核の傘』を脱する契機となすべきである
 
 共同通信の太田昌克編集委員は、アメリカがNATO加盟国に送った決議案反対要請書簡には「核の同盟」という言葉が使われていることを示したうえで、こう述べています。

 「日本政府当局者は、この書簡と同様の内容の文書が日本にも届いていたと明かす。…日米同盟も、米核戦力に依拠した『核の同盟』なのだ」(29日付共同配信各紙)

 日本の新聞の社説や解説の中ではいずれも注目されたものです。しかしそれでもなお、問題の核心に触れられているとは言えません。
 それは、「核の同盟」である日米同盟とは、日米軍事同盟であり、その法的根拠は日米安保条約だということです。「冷戦時代の遺物」という「抑止力」論も、「集団的自衛権の固有の権利を有していることを確認」(前文)するとして日米安保条約の基本になっています。日本政府が「米国の顔色をうかがい、その圧力に屈した」理由は、日本がアメリカと安保条約(軍事同盟)を結んでいるからに他ならないのです。
 しかし、上記の社説や解説に、「日米安保条約」の言葉はもとより、日米軍事同盟解消の主張はありません。ほかの社説や解説はおして知るべしです。

 日米安保条約の害毒は「沖縄の基地問題」だけではありません。核兵器廃絶に逆行する今回の日本政府の「反対」もまさに日米安保条約の帰結であり、その実像です。メディアはそのことをはっきり示す必要があります。こうした個々の具体的な問題で日米安保条約の本質を伝えていくことはメディアの責務です。そうでない限り、「8割が安保条約支持」というつくられた虚構を打ち破ることはできません。

 今回の決議案に関してもう1つ見落とすことができないのは、北朝鮮は決議案に賛成し、アメリカ、日本、韓国は反対したという事実です。北朝鮮に対する評価は、こうした具体的な事実によって公正になされるべきです。つくられた「中国・北朝鮮脅威」論に陥らないために。


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