アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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翁長知事は即刻、機動隊派遣要請の取り下げを指示すべき

2015年11月10日 | 沖縄・翁長知事

  

 警視庁の精鋭機動隊約130人が辺野古新基地建設に反対する市民に対峙している光景はまさに異例・異様です。沖縄県民の意思を無視してあくまでも新基地建設を強行しようとする安倍政権の強権ぶりが如実に表れています。現場ではケガ人や逮捕者も出ており、猶予できません。

 翁長知事がこの状況を放置していることはきわめて重大です。

 6日の記者会見で記者が、「警視庁の大量導入は県警の要請に従って行ったと菅官房長官は説明している。県議会では県警本部長が県の部局同様に、議事者側に席を連ねている。県の意向を無視して、県警が警視庁に要請を行ったとの理解でいいか」と質問したのに対し、翁長氏はこう答えました。

 「県警は私たちとそういった交渉は一切やらないのが今日までの状況だ。だから独自でもって議会の答弁もしている。これはたぶん他の都道府県でも一緒だと思う。また、人事権についてもやはり独自の人事権を持っている。・・・具体的なことについては個別個別に、意見等を申し上げていくことになろうかと思う」(7日付沖縄タイムス「知事会見全文」)

 その後、翁長氏が警視庁の機動隊派遣中止を求めたというニュースはなく、異常な状況が続いています。
 翁長氏は県警は「独自」だからなんともしようがないかのように言いますが、法に基づけばけっしてそうではありません。知事には機動隊派遣を中止させ、東京へ帰す力があります。

 警視庁機動隊の沖縄派遣は、沖縄県警が「県公安委員会を通し警視庁に応援部隊の派遣を要請していた」(6日付沖縄タイムス社説)ものです。
 警察法第60条は「都道府県公安委員会は、警察庁又は他の都道府県警察に対して援助を要求することができる」としています。今回の機動隊派遣要請もこれに基づくものです。言い換えれば、県公安委員会の要求がなければ、都道府県を越えて警察を派遣することはできないのです。

 警察法は第38条で都道府県公安委員会の「組織及び権限」を規定しているように、各県の公安委員会には大きな権限が与えられています。それは「公安委員会とは、警察民主化のために設置された行政委員会であり、警察の民主的管理機関」(原野翹氏、『警察法入門』有斐閣)だからです。

 たしかに県警本部長の任免権は国家公安委員会が直接握っています(警察法第50条)。日本の警察が中央集権的であるといわれる理由の1つです。しかし、その県警本部長の任免についても、「都道府県公安委員会の同意を得て」(同第50条第1項)とされているように、都道府県公安委員会を無視しては行えないのです。

 そうした権限を持つ県公安委員会と県知事とはどういう関係にあるでしょうか。
 警察法第38条第1項は、「都道府県知事の所管の下に、都道府県公安委員会を置く」と明記しています。さらに、公安委員(5人)は、「都道府県知事が都道府県の議会の同意を得て、任命する」(同第39条)とされています。委員長は「委員が互選」(同第43条)します。また、同41条によって、知事には公安委員の罷免権も与えられています。
 こうした条文から、県知事が県公安委員会に対しきわめて大きな権限を持っていることは明白です。

 一方、首相が国家公安委員会を直接指揮監督することができないように、知事が公安委員会を直接指揮することはできないといわれています。しかしその趣旨は、「政党政治の悪い影響から免かれ公正中立な警察行政を実現するため」(原野氏、前出)です。問われるのは警察行政の「公正中立」さなのです。

 そもそも警察法は、「警察の責務」をこう規定しています。
 「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び検査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の秩序の維持に当たることをもってその責務とする。
 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その責務の遂行に当たっては、不偏不党且つ公平中立を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない(第2条)

 「私たちは、『そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権利は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する』という日本国憲法前文第一段の規定の意味を、警察についても、もう一度、考えてみる必要があると思います」(杉村敏正氏、『警察法入門』同前)

 以上から、翁長知事は憲法と警察法の趣旨・条文に基づいて、県公安委員会に対し警視庁への派遣要請を直ちに取り下げるよう指示すべきです。そして、辺野古の機動隊を即刻東京へ帰すべきです。


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