アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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翁長知事は「本気」なら、直ちに「承認撤回」を

2015年11月03日 | 沖縄・翁長知事

   

 翁長雄志沖縄県知事が2日、国地方係争処理委員会に審査を申し出たことについて、「新基地を造らせない決意を新たににじませた」(3日付琉球新報)など、県紙は翁長氏の「本気」を賛美しています。
 はたしてそう言えるでしょうか。

 2日の記者会見(写真左)で、注目すべき問答がありました。
 記者が「移設計画を阻止するに当たって、承認の撤回を検討しているか」と質問したのに対し、翁長氏は「相手があることなので、現時点では申し上げられない」と答弁を避けたのです。
 さらに「取り消しに関する裁判の結果を待たずして撤回はあり得るか」との重ねての質問に、翁長氏は自らは答えず、答弁を顧問弁護士に振りました。竹下勇夫弁護士は「最後は知事が判断すること」とボールを投げ返しました。

 結局、翁長氏は「埋立承認の撤回」を行うとは言いませんでした。「撤回」に背を向けているのは翁長氏の一貫した姿勢です。
 これは「あらゆる方法で阻止する」と繰り返している公約に反するばかりか、「代執行」まで行なって埋立工事を急ごうとしている安倍政権を助けることにつながります。

 事態の進行は、「承認撤回」こそ新基地建設を阻止する法的切り札であることをますます鮮明にしています。

 翁長氏が2日行った国地方係争処理委員会への申し立てについては、「対象外で門前払いになるのが最も素直だと思われる。県側の主張は、かなり強引な解釈運用と言わざるを得ず、係争委が容認する可能性はきわめて低いと考えられる」(磯部力・国学院大特任教授=元係争委委員長、3日付沖縄タイムス)との指摘があります。
 なぜそう言えるのか。
 係争委への県の審査申出書が、国交相は行政不服審査法の「私人」とはいえないという、それ自体は正当でも、法律の解釈論に終始しているからです。
 安倍政権が知事の「承認取り消し」を取り消し、「代執行」まで強行し、それでも裁判にも勝てると豪語する“根拠”も、「(仲井真前知事の)承認には何ら瑕疵はなく、これを取り消す処分は違法である」(10月27日「代執行の閣議口頭了解」)という行政手続き上の“確信”にあります。

 つまりは、前知事の承認に「瑕疵」があるかないかの行政上の手続き・解釈が争点になって、いろいろな法律が絡み、今の複雑な状況が生じ、安倍政権の“自信”につながっています。これが「承認の取り消し」を争点とした経過です。

 これに対し、「承認撤回」は別次元の話です。
 「取消」が「埋立承認時の瑕疵を理由とする」のに対し、「撤回」は「埋立承認後の事由を理由とする」もので、いずれも公有水面埋立法上、知事に認められている権限です。
 「『埋立承認後の事由』には、埋立承認後に就任した知事のなす新たな公益判断も含まれ、新知事は・・・新たな公益判断に基づき、埋立承認を撤回することができる」。撤回問題法的検討会(新垣勉弁護士ら)の「意見書」(5月1日)はこう指摘しています。
 その上で同「意見書」は、「新知事において、憲法で保障された地方自治の本旨及び公有水面埋立法が埋立承認の権限を知事に授権した趣旨を踏まえて、新たな公益判断を行い、前知事がなした埋立承認の撤回を行うよう」翁長氏に要請しました。

 今こそこの「意見書」に立ち返ることが求められています。
 承認後の「新たな公益判断」に、知事選、衆院選が含まれることは言うまでもありません。
 そして、「撤回」と「取消」は同時になしうることも、「意見書」は明言しています。
 「取消」の正当性も裁判で堂々と立証すべきです。同時に、それと並行して、「承認撤回」で基地が「公益」に反することを正面から主張してたたかうべきです。

 翁長氏の「辺野古新基地阻止」が「本気」なら、直ちに「承認の撤回」を行なうべきです。
 時が過ぎれば過ぎるほど、工事の既成事実化が進み、安倍政権の思うつぼになってしまいます。
 


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