アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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沖縄知事選1年。翁長氏の5つの公約違反・不履行

2015年11月17日 | 沖縄・翁長知事

  

 沖縄県知事選で翁長雄志氏が当選してきのうでちょうど1年でした。
 「この1年、『辺野古新基地は造らせない』という公約を貫き、全くぶれていない。見事だと思います」(仲地博沖縄大学長、16日付しんぶん赤旗)など、翁長氏を賛美する評価が目立ちます。果たしてその評価は妥当でしょうか。
 この1年、翁長氏はほんとうに「公約を貫いた」のか、検証します。

 翁長氏は2014年9月13日に正式に出馬表明しました(写真左)。それは同日、共産党、社民党、社大党など「県内5党・会派」との間で「沖縄県知事選にのぞむ基本姿勢および組織協定」(写真中、しんぶん赤旗より。以下「基本姿勢」)で合意に達したからです。
 この「基本姿勢」こそ、翁長氏を当選させた「オール沖縄」と翁長氏の共通の公約です。「基本姿勢」の内容と翁長氏の実際の行動を対比します。

①「新しい知事は埋め立て承認撤回を求める県民の声を尊重し、辺野古新基地は造らせません」(「基本姿勢」)
⇒翁長氏:「承認撤回」は棚上げ。「取り消し」も選挙から11カ月後

 「承認撤回」と「取り消し」は違う意味合いを持ち、「撤回」こそ有効な手段であることは繰り返し述べてきました。翁長氏も選挙中は「撤回」を口にしていたのです。そして就任後初の県議会一般質問(2014年12月17日)でも「知事選に示された民意は埋め立て承認を撤回する事由になると思う」(同12月18日付琉球新報)と答弁しました。「基本姿勢」の「承認撤回を求める県民の声を尊重」する立場に立つなら、就任後ただちに承認を「撤回」すべきでした。
 ところが翁長氏は今に至るも、「撤回」は棚上げしたまま。「取り消し」も世論に押されてやっと11カ月後(10月13日)。この間、政府の既成事実化と辺野古現場での強権的市民弾圧を許してきました。これは明らかに公約違反ないしは公約不履行だと言わねばなりません。「新基地は造らせない」と言っていれば「公約を実行」したことになる、というのは大きな間違いです。

米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設断念を求めます」(「基本姿勢」)
⇒翁長氏:「普天間飛行場の県外移設を求めてまいります」(2015年度県政運営方針」、2015年2月19日県議会)など

 「県内移設反対」と「県外移設」には大きな違いがあります。その違には歴史的経緯があり、県内の政党・会派にとってはとりわけ重大な問題です。「オール沖縄」の旗印である「建白書」(2013年1月28日)が明記しているのは、「県外移設」ではなく「県内移設を断念すること」です。「県外移設」は一致点にならないからです。「基本姿勢」もその「建白書」を踏襲しています。
 ところが翁長氏はその重要な相違にフタをし勝手に「県外移設」を表明してしまいました。その後の政府との「協議」の中でも「県外移設」を主張し続けています。
 これは明白な「基本姿勢」・「建白書」違反です。
 「オール沖縄」の党・会派はなぜをこれを黙認しているのでしょうか。少なくとも日本共産党は、「県外移設」すなわち「本土移設」には明確に反対のはずです。にもかかわらず翁長氏のこの勝手な公約違反になぜ口をつぐんでいるのでしょうか。

③「くらしと経済を壊すTPP(環太平洋連携協定)に反対します」(「基本姿勢」)
⇒翁長氏:TPP「大筋合意」への態度を保留

 沖縄タイムスが県知事と県内41首長に行ったアンケート調査(4日付)によれば、「TPP大筋合意は評価できない」と反対した首長は20人(47・6%)にのぼりました(名護市長、うるま市長など)。一方、「その他」として態度を保留した首長も同じく20人でした。翁長氏はどうか。「その他」の方です。理由は、「詳細な説明が不十分」(4日付沖縄タイムス)だからだといいます。
 しかし、TPP「大筋合意」は、「国民裏切り、米国いいなり」(日本共産党・紙智子参院議員、11日の参院予算委員会)の産物であり、沖縄にとっても「離農者が増えて耕作放棄地が増大する」(うるま市、同沖縄タイムス)など、重大な影響は必至です。
 にもかかわらず態度を保留する翁長氏は、「TPPに反対します」という公約に反しているのではないでしょうか。

④「自然環境の保全、回復に力を入れます」(「基本姿勢」)
⇒翁長氏:泡瀬干潟の自然破壊を推進

 仲井真前知事が進めていた泡瀬干潟(沖縄市)の埋め立てに対し、「泡瀬干潟を守る連絡会」など住民が工事中止を求めている裁判(第2次泡瀬訴訟)で、那覇地裁は2月24日、不当にも住民の請求を棄却しました。
 この判決に対し、翁長氏はなんとコメントしたか。「今後とも国や沖縄市と連携し、環境に十分に配慮しながら早期完成に向けて取り組んでいく」(2月25日付沖縄タイムス)と埋め立て推進を強調したのです。
 泡瀬干潟の自然環境破壊を進める点で、翁長氏は仲井真前知事や国とまったく変わらないのです。

⑤「憲法9条を守り、県民のくらしの中に憲法を生かします。解釈改憲に反対し、特定秘密保護法の廃止を求めます」(「基本姿勢」)
⇒翁長氏:戦争法案に反対せず、重要な局面で安倍政権に“助け舟”

 安倍政権が強行した戦争法案(安保法案)は、「解釈改憲」の最たるものであり、憲法9条を土足で踏みにじるものです。「基本姿勢」の合意に立てば、戦争法案に反対して当然、いや、戦争法の影響を最も被る沖縄の知事として、反対の先頭に立ってしかるべきではないでしょうか。
 ところが翁長氏は、県議会で共産党などが何度となく見解をただしても、自ら答弁することを避け、事実上戦争法案を容認してきました。法案成立後も「審議不十分」と手続きは問題にしましたが、戦争法そのものには反対していません。共産党が提唱する「戦争法廃止の国民連合政府」にも口をつぐんだままです。
 それどころか翁長氏は、安倍政権が支持率低下で窮地に陥っているまさにその時に、「1カ月の集中協議」(8月11日から9月7日)を設け、その間は「承認取り消し」は行わないという“政治休戦”で戦争法強行へ助け舟を出したのです。「支持率が下がり、相手が弱っている時に、自由にさせてはいけなかった」(吉元政矩元副知事、10月25日付沖縄タイムス)という指摘は当然です。

 以上、5点にわたって検証しました。「公約実行」どころか、翁長氏の重大な公約違反・不履行は明白です。
 政治家の評価は主観的な感情ではなく、客観的な事実で行うべきではないでしょうか。


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