アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

辺野古「第三者委」の致命的限界と唯一の活路

2015年02月07日 | 沖縄・辺野古

         

 辺野古埋め立て承認の「法的瑕疵」を検討する第三者委員会(委員長・大城浩弁護士)の初会合が6日、沖縄県庁で行われました。
 予想されたこととはいえ、その致命的限界・欠陥の数々が、1回目にして早くも露呈しました。
 同時にそれによって、今何をなすべきかが、いっそう鮮明に浮かび上がってきました。

 第1欠陥:検証報告は7月、「取り消し」なら8月。この”遅さ”はまさに致命的!

 大城委員長は検証結果について、「6月中には意見を取りまとめ、遅くとも7月には県に報告する」(琉球新報、7日付。以下、琉球新報、沖縄タイムスはいずれも7日付)と会見で述べました。「7月」でも絶望的ですが、実際はまだ延びるといいます。
 「知事への報告が7月初旬になると、知事の『取り消し』は8月以降になる。判断前に事業者の沖縄防衛局に聴聞の手続きを取らなければならないからだ」(沖縄タイムス)

 これは致命的な遅さです。辺野古の現場では毎日体を張った攻防が続けられており、死者が出てもおかしくない状況です。しかも、「移設計画で政府は6月ごろまでの埋め立て本体工事着手を目指している」(沖縄タイムス)のです。手遅れになるのは目に見えています。
 「毎日数十㌧とも言われるアンカーブロックが投げ込まれ、海が悲鳴を上げている。止められても8月というのは、卒倒しそうな話。県民の思いから懸け離れた委員会になりかねない」(沖縄平和運動センター・山城博治議長、沖縄タイムス)という声を、委員会、翁長知事はどう聞くのでしょうか。

 第2欠陥:委員の大半は“初心者”。「中立」という根本的誤り

 なぜこんなに遅くなるのでしょうか。それは桜井国俊委員(沖縄大名誉教授)を除いて、「ほとんどの委員が公有水面埋立法の作業に取り組むのは初めて」(琉球新報)だからです。委員らはこれから「1万㌻を超える膨大な資料に目を通す」(同)のです。大城委員長が、「資料が膨大でやるべきことが多い。拙速にはできない」(沖縄タイムス)と釈明するわけです。

 ではなぜそんな人選になったのでしょうか。根本は、「公正中立な検討をお願いしたい」という翁長知事の要請です。大城委員長は「私たちの作業は事業者を縛ることでも、工事を止めることでもない」(沖縄タイムス)と公言してはばかりません。
  しかしそれでいいのでしょうか。そもそもこの「委員会」は何のための委員会なのでしょう。「辺野古新基地は取り消しか撤回」を公約に掲げた翁長氏が、「取り消し」のために「法的瑕疵」を明らかにするためではなかったのでしょうか。公正はともかく、「中立」であっていいわけがありません。
 辺野古埋め立て承認取り消し訴訟団の池宮城紀夫弁護団長が、「中立の立場で瑕疵を検討するのではなく、取り消しや撤回という政策を実現するために事実関係を確認して法的根拠の理論構成をすることが求められている」(琉球新報)と指摘する通りです。

 第3欠陥:非公開の密室協議

 審議を県民に公開し、随時県民の意見を聞きながら検討を進めるべきだ、というのは、県民多数の要望でした。しかし、委員会は、非公開を決定。「月2回」の会合後、大城委員長が会見することになりました。
 非公開にした理由について大城委員長は、「微妙な問題が絡むので大勢の前では成り立たない」(沖縄タイムス)と述べました。訳の分からない説明です。県民の前で議論できない「微妙な問題」とはいったい何なのか?誰に遠慮・配慮するつもりなのか?
 非公開になったのも、委員会が新基地建設は許さないという立場に立っていないからです。県民の立場(それが翁長氏の「公約」だったはず)に立てば、審議は当然公開されなければなりません。

 
 第4欠陥:「撤回」に関しては「権限外」

 大城委員長は、「記者から埋め立て承認の撤回を協議するかどうか問われると、腕を組んで天井を仰ぎ『それは委員会の立場でなし得る権限はないと思う。行政に権限があります』と答えた」(琉球新報)。委員会は、承認の「撤回」について審議しない、「権限外」だというのです。

 おかしな話です。なぜあえて「取り消し」と「撤回」を区別しなければならないのか。「撤回」してもいずれ裁判になる可能性が大です。その時の対策としても、「撤回」を「視野に入れて」(翁長氏)検討するのは当然ではないでしょうか。
 
 しかし、この大城委員長の発言(第三者委員会の基本性格)によって、逆に、いまやるべきことが鮮明に浮き上がってきました。
 それは埋め立て承認を直ちに「撤回」する以外にない、それが唯一の活路だということです。
 大城氏が言う通り、「撤回」は「行政権限」、つまり翁長知事の判断一つでできるのです。委員会審議など必要ないのです。大城委員長の発言は、善意に解釈すれば、「私たちは『取り消し』の法的根拠を時間をかけて議論するけれど、『撤回』は翁長知事の判断でやれるのだからやってほしい」ということです。
 「政府が移設に向けた作業を止めない中、行政法の専門家などからも『まずは承認の撤回をし、その間に検証作業を進めれば良い』(本田博利元愛媛大学教授)との指摘も出ている」(琉球新報)
 道理が徐々に声になって表れはじめました。

 いまこそさらに声を大にして言うときです。「翁長知事は自らの権限を行使して、直ちに埋め立て承認を撤回せよ!」


※2月5日の当「日記」で、「昨年11月の身代金2億円」と書いたのは、「20億円」の誤りでした。おわびして訂正します。


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