あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

尊皇討奸・君側の奸を討つ 「 とびついて行って殺せ 」

2021年11月26日 20時24分22秒 | 昭和維新 ・ 蹶起の目的

河野は余に
磯部さん、私は小学校の時、
陛下の行幸に際し、父からこんな事を教へられました。
今日陛下の行幸をお迎へに御前達はゆくのだが、
若し陛下のロボを乱す悪漢がお前達のそばからとび出したら如何するか。
私も兄も、父の問に答へなかったら、
父が厳然として、
とびついて行って殺せ
と 云ひました
私は理屈は知りません、
しいて私の理屈を云へば、父が子供の時教へて呉れた、
賊にとびついて行って殺せと言ふ、
たった一つがあるのです。
牧野だけは私にやらして下さい、
牧野を殺すことは、私の父の命令の様なものですよ
と、其の信念のとう徹せる、其の心境の済み切ったる、
余は強く肺肝をさされた様に感じた。
・・・第磯部浅一  行動記  第八 


朕ガ股肱ノ老臣ヲ殺戮ス、

此ノ如キ暴ノ将校等、
其精神ニ於テモ何ノ恕スベキモノアリヤ
・・・「 彼等は朕が股肱の老臣を殺戮したではないか 」 

確かに陛下は股肱を殺されたとお考えあそばされた。
だがな、
陛下からご覧になれば股肱でも、
我々から見れば君側の奸だった。
・・・斎藤瀏 

『 君側の奸を討つ 』

謹ンデ推ルニ我神洲タル所以ハ、
万世一神タル天皇陛下御統帥ノ下ニ、挙国一体生成化ヲを遂ゲ、
終ニ 八紘一宇ヲ完フスルノ国体ニ存ス
此ノ国体ノ尊厳秀絶ハ
天祖肇国神武建国ヨリ明治維新ヲ経テ益々体制を整へ、
今ヤ 方ニ万万ニ向ツテ開顕進展ヲ遂グベキノ秋ナリ
然ルニ 頃来遂ニ不逞兇悪の徒簇出シテ、
私心我慾ヲ恣ニシ、至尊絶対ノ尊厳を藐視シ僭上之レ働キ、
万民ノ生成化育ヲ阻碍シテ塗炭ノ痛苦ニ呻吟セシメ、
従ツテ 外侮外患日ヲ遂フテ激化ス
所謂 元老重臣軍閥財閥官僚政党等ハ 此ノ国体破壊ノ元兇ナリ
倫敦海軍条約 並ニ 教育総監更迭ニ於ケル 統帥権干犯、
至尊兵馬大権ノ僣窃ヲ図リタル 三月事件 或ハ 学匪共匪大逆教団等
利害相結デ陰謀至ラザルナキ等ハ最モ著シキ事例ニシテ、
ソノ滔天ノ罪悪ハ流血憤怒真ニ譬ヘ難キ所ナリ
 ・・・蹶起趣意書


余の計画は最初は田中、河野、余の三人で
岡田及び内府をたほして政変を起す程度で満足せねばならぬと思ってゐたのであったが、
栗原は、その関係方面の実力を以て、三目標は完全にやれると云ふのだ。
そこで栗原が一案を出して、岡田、齋藤、鈴木貫位ひでどうですかと云ふのだ。
   <註>・・・
鈴木侍従長の帷幄上奏阻止 

・・・挿入・・・
ある日曜日、西田税が、後の血盟団の一人、
東大生の久木田裕弘を伴って私の下宿に訪ねてきた。
西田は 「 参謀本部の連中の持ってきた暗殺計画には驚いたよ。
警察署長クラスの小物までやろうというんだから・・・。
うんとケズって大物だけ残すようにいっておいたがね 」
と いって笑ったが、こんな話から私が
「 牧野伸顕 をねらうつもりだが 」 と いうと、
これまで控え目に西田のかげに坐っていた久木田が 突如にじり出て
「 私では間に合いませんか 」 と 真剣な顔でいった。
私は 「 久木田さんが是非にというのなら、別のでかまいませんよ」 と いった。
・・・末松太平 ・ 十月事件の体験 (3)


余は牧野は如何と云ふたら、
牧野はいいでせう。
う 内府をしりぞいて力を振ふわけにはゆかぬではないか、
と云ふのだ。
余は牧野、西園寺をたほさねば革命にはならぬ、維新の維の字にもならぬ。
政変が起って、しかもそれが吾々同志に不利な政変になるかも知れぬぞ、と答へて。
大きくやるなら徹底的に殺してしまはぬと駄目だ、
特に牧、西は絶対に討たねばだめだ、と主張した。
・・・磯部浅一  行動記 第六 

襲撃目標は五・一五以来、
同志の間に常識化してゐたから大した問題にならず、簡単に決定した。
唯 世間のわけを知らぬ者共から見て、
渡辺と高橋は問題になると思ふから、理由を記しておく。
高橋は 五・一五以来、維新反対勢力として上層財界人の人気を受けてゐた。
その上、彼は参謀本部廃止論なぞを唱へ、
昨冬予算問題の時には、軍部に対して反対的言辞をさえ発している。
又、重臣、元老なき後の重臣でもある。  <註>・・・
高橋是清 ・ 天誅の由 
渡辺は 同志将校を弾圧したばかりでなく、
三長官の一人として、吾人の行動に反対して弾圧しさうな人物の筆頭だ。
天皇機関説の軍部に於ける本尊だ。 <註>・・・渡辺教育総監に呈する公開状
・・・磯部浅一 行動記  第十 


大内山の暗雲 ( 君側の奸 )
私は昭和十一年一月十日入隊したばかりの新兵で、

訓練と内務のため追廻わされるような毎日を過ごしていた。
だが日課の中には 午後 精神訓話が組まれてゐて中隊長安藤大尉からの話を謹聴する
落着いた時間もあった。
中隊長の訓話は日本の現状をテーマにしたものが多く、
東北地方の農村における深刻な実情について、娘の身売りや生活の赤貧ぶりなどを
克明に説明されたのを今でも記憶している。
そして必ず左のような絵を黒板に書いたものである。

いくら太陽 ( 天皇 ) が照っても
黒雲 ( 側近・軍財閥 ) が遮っている限り 地上の作物は生長しない、

つまり国民が栄えてゆくためには黒雲を取り除かねばならない。
今の日本の現状はこの絵のとおりである。
東北の農民は勿論、全国民が安らかな生活をするにはどうしても
天皇のとりまき連中を排除して
国民の声を上聞に達するようにしなければならない。

いずれ日本は米英から戦争を仕向けられる運命にあるので
国内の改革を急ぎ断行する必要がある。

安藤大尉は常にこの持論をもって強調した。
・・・歩兵第三聯隊第六中隊・二等兵 酒井光司 


かくすれば
かくなるものと 知りながら
已むに已まれぬ 大和魂


教育勅語に国憲を重んじ、国法に遵い、とあります。
自分はこの勅語を重んじ、従うものであります。

「 それでは、被告は国法の大切なことは知っているが、
 今回の決行はそれよりも大切なことだと信じたのか 」

そうであります。
大悟徹底の境地に達したのであります。
 ・・・
相澤三郎 

二・二六事件に参加せる動機は

私は日本大学在学中から政治問題に就ては研究を為して居りました関係から、
栗原中尉の感化を受けたわけでも何でもありません、
過去の歴史が、即ちロンドン条約、五・一五事件、永田事件、神兵隊事件
等々が私を奮起せしめた原因であります。
ロンドン条約に於ては、三千万円の金に依って牧野其の他の重臣が買収され、
敢て六割の比率条約を結び、亦、五・一五事件後の彼等の情態は、反省せざるのみか、
却って私利私慾のみに腐心し、又、五・一五事件後の斎藤内閣に於ては、
農村に対し自力更生等と愚弄策を以て欺瞞し、
実に為政家は所謂策略を以て国民を欺瞞して居りました。
現在の農民に対してより以上の勤勉と節約を望まんとする前に、なぜ彼等は反省せざるや、
彼等は驕奢華美の生活に飽き足らず、猶農村の血と汗と油の結晶を吸血せんとするのか、
是こそ真の国賊であり、逆賊でなくして何んであろうと、
彼等の一大反省と覚醒と奮起を促す為、
非常手段を以て奸賊共を排除せざるべからずと思考し、
確固たる信念を以て同志栗原中尉等の蹶起に参加致しました。
・・・
 綿引正三
・・・ 牧野伸顕襲撃 3 


私は在郷中、建国会員深沢四郎の書生として雇はれ、

本人より常に社会情勢並に重臣、財閥、特権階級 等の腐敗堕落の実情を聴取し、
国家革新の必然を痛感するに至り、栗原中尉を知り 国家革新運動を学び、
遂に事件に参加したるものなり。

五・一五事件後に於ても 政党、財閥、特権階級、重臣等は何等反省する所なく、
依然私利私慾のみに狂奔し居る実情に鑑み、直接行動を以てする外手段なしと覚悟し参加せり。
国家を毒するものは一掃しなくてはならぬと思って居り、
吾々の蹶起により、譬え一部たりとも社会の改革が出来得たなれば、本望と存じて居ります。
・・・宇治野時参 軍曹
・・・
下士官兵 

国を思ふ心に萌えるそくりようの

心の奥ぞ神や知るらん
重臣を殺害し、昭和維新を断行したる行為は国法に違反するものとは考へざりしや
国法に違反することは考へて居りました。
然し、百年の計を得んが為には、今は悪い事をしても良いと思ひました。
・・・長瀬一 伍長 
・・・長瀬一伍長 「 身を殺し以て仁を為す 」 


自分は農村出身であり 農民の苦しみと高位高官の生活の距り等 考えると、
どうしても不正を行っているように思う。
上御一人はこの様な庶民の苦しい生活を知らされてない。
即ち 重臣達が陛下の側近に垣を成して神意を妨げ、私慾を恣ほしいままにしているのではないか。
それが大内山の暗雲なのです。
・・・ 福本理本伍長 
・・・下士官兵 


日本の生成発展の大飛躍の為

已むに止まれぬ所より
統帥権干犯者を斬ったのみにて、
超法的の行為なり
・・・
栗原安秀

陛下の御為に

重臣、財閥等の袞竜の袖に隠れて大権簒奪をなせるものを斬った。
我々の行動は已むに止まれず起ちたるものなり。
国家危急存亡の秋、
時弊を今にして改めずんば国体危機より、
超法的に行動をなしたるものなり。
故に、国憲国法を無視したるものにあらず。
即ち、大権簒奪者に対する現行刑法の制裁なし。
因て、其の犯行者を其儘にする能はざるを以て、
之を討つには斬るより他に途なし
・・・村中孝次

死刑判決理由主文中の
「 絶対に我が国体に容れざる 」 云々は、如何に考へてみても承服出来ぬ、
天皇大権を干犯せる国賊を討つことがなぜ国体に容れぬのだ、
剣を以てしたのが国体に容れずと云ふのか、兵力を以てしたのが然りと云ふのか
天皇の玉体に危害を加へんとした者に対しては
忠誠なる日本人は直ちに剣をもつて立つ、
この場合剣をもつて賊を斬ることは赤子の道である、
天皇大権は玉体と不二一体のものである、
されば大権の干犯者(統帥権干犯)に対して、
純忠無二なる真日本人が激とし、この賊を討つことは当然のことではないか、
その討奸の手段の如きは剣によらふが、弾丸によらふが、
爆撃しようが、多数兵士と共にしようが何等とふ必要がない、
忠誠心の徹底せる戦士は簡短に剣をもつて斬奸するのだ、
忠義心が自利私慾で曇っている奴は理由をつけて逃げるのだ、
唯それだけの差だ、
だから斬ることが国体に容れぬとか何とか云ふことには絶対にないのだ、
否々、天皇を侵す賊を斬ることが国体であるのだ、
国体に徹底すると国体を侵すものを斬らねばおれなくなる、
而してこれを斬ることが国体であるのだ、
・・・獄中日記 (二)  八月九日

曹長は、法律と云うが、
その法律を勝手に造る人達が、御上の袖に隠れ、
法律を超越した行為があった場合、一体誰が之を罰っするのだ。
神様に依る天誅以外に道がないではないか。
 ・・・相澤三郎


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