林八郎
昭和十一年六月四日
最終陳述
論告ハソノ精神ヲ蹂躙シタルモノデアリマス。
黒眼鏡ヲカケテ白イモノヲ見テオラレマス。
國家革新ハ國體ニ合がっセヌト言ワレルノハ認識不足デアリマス。
檢察官ハ國家革新ハ必要ナリトノ認識ガアリマセヌ。
軍ガ引込ミ思案デ無気力デアリマスカラ、統帥權ハ正當ノ方向ニ進ンデイナイ。
ソレヲ是正セントシタノデ、ワレワレハ皇軍ヲ私兵化シタモノデハアリマセン。
皇軍ヲ立直ラセルタメ ワレワレハ前驅ニナリマシタ。
民主革命ヲワレワレガ企圖スルナラバ、重臣顯官ヲ全部殺害シタノデアリマショウ。
先輩將校ハ北ノ感化ヲ受ケタカモ判リマセンガ、ソノ指令ヲ受ケタコトハナイト信ジマス。
北一輝ノ思想ハ社會民主主義ナラズ國家主義デアリマス。
文字ノ末ヲ捉エテ改造法案ヲワレワレト結ビツケルノハ心外ニ堪エマセヌ。
結果影響ニツイテ
ワレワレヲ賊ニスレバ、ソノ結果 軍ハ崩壊スルト思イマス。
殺サレタ巡査ニ五萬圓宛迄集ッタノハ、ワレワレヲ攻撃スル理由ニハナリマセン。
私ハ巡査等ニ気ノ毒ト思ッテイマシタカラ、五萬圓集ッタコトヲ喜ビマス。
本事件ノ眞相ガ判明スレバ、ワレワレハ國民ノ支援ヲ受ケルト信ジマス。
以上
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1、栗原、常盤等ノ陳述ト略同様ナルモ、特ニ國體認識ヲ鞏調ス
・・・憲兵報告