日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

「かもめ」或いは寺山修司論2016  芝居砦・満天星

2016-10-23 | 宇野亜喜良
墓地の脇を通り、たどりついた芝居小屋は階段を降りて、降りて…。
次第に過去へとタイムスリップしていくような階段だった。
異空間で見るひとつの物語。
それはマジックにかけられながら見た切ない大人のメルヘンだった。

今回の「かもめ」は、寺山修司がダミアのシャンソン「かもめ」をもとに書いた小説から
金守珍さんの演出でProject Nyxの旗揚げ10周年記念として2016年度版の上演なのだという。




船出する水夫と彼を愛する少女。
水夫が帰ったら結婚をするという約束をし、お互いに想いながらも
その約束は果たされず、少女の運命は過酷な最後へと向かっていく。
そして揺れる波の上を
かもめはいつまでも悲しげに飛んでいるのだった。

舞台は水夫と少女の朗読から始まる。
物語の進行とともに波のオブジェが動いたり
スクリーンに宇野さんの絵が次から次へと写し出される。

少女は海をみつめながら帰らぬ水夫を待つが
水夫は帰るお金もなく貧しさに負け、着いた波止場の女性と結婚してしまった。
帰りを待ちこがれ、傷心の日々を送る少女。
少女は海で舟をこぐ。
宇野さん製作の少女を出演者が操るのだが
純情な思いから痛々しさが伝わってくる舟の場面である。

寺山の「ポケットに名言を」から
マリー・ローランサンやアンドレ・ジッド、ジャック・プレヴェールなどの言葉が積まれる。
そして、寺山の「なみだは人間が作るいちばん小さな海です」も。

三大美女の楊貴妃、クレオパトラ、小野小町も登場。
それぞれのダンスは華やかで官能的。
黒色すみれのデュオはノスタルジックで、どこか儚く
やはりメルヘンには欠かせない存在。
劇場をメルヘンにしてしまうオーラが舞台に特異性を生み出す存在だ。

ラスト、少女は思わぬ不幸に見舞われ
水夫の帰りを待ちわびていた少女の運命は無残に引き裂かれていく。
球体関節人形のように作られている宇野亞喜良さんの人形。
少女は青い海の底へと沈んでいった。
 
海で死んだ人はかもめになるという。
かもめはその悲しみを翼にのせて
海の上をいつまでもいつまでも飛んでいた。

映像、人形、朗読、舞踊、そして音楽を融合させ
舞台は、時には海、時にはどこかの大広間、
時には時間のない町のようなめくるめくメルヘンの舞台だった。

私が観劇したのは昨日22日(土)の夜の部。
物語が終ってから「黒色すみれミニコンサート」があった。
メリーゴーランドのような夢の時間。
(ここからは撮影可能となった)

 

黒色すみれのスカートは宇野さんが描いた絵が。
すみれの花、魚の少女や青い文字が流れるように書かれているすてきなデザイン。


女性だけの出演者がそろって、撮影のためにポーズをしてくれる嬉しいサービスもあった。

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