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日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

「海神別荘」 泉鏡花の舞台

2009-01-26 | 泉鏡花

辻村ジュサブロー(寿三郎)の人形芝居で、泉鏡花の「海神別荘」が1980年、銀座・博品館劇場で上演された。
鏡花に運命的なものを感じているというジュサブローの脚本、演出、美術により、人形に鏡花のいのちが吹き込まれた舞台となった。

Kaijin

           Kaijintitle

    磯の千鳥は 舞うのである

    ゆったりと浪にも誘はれず 

    風にも乗らず ひと処を

Kousi_yoko

 

今宵は海底の琅釦殿(ろうかんでん)へ、陸から美女が輿入れの日。 
美女の父は娘を公子へ嫁がせることを条件に金銀財宝を受け取り、娘を海底に捧げた。
輿入れの様子は海底の魔鏡に写しだされ、公子はそれを見ながら家臣と人間界の話をする。
八百屋お七の火刑では、お七は愛の想いを遂げて本望のはず、なぜそれが刑罰なのかと公子は言う。

やがて琅釦殿へ到着した美女は、公子から贈られた宝玉で飾った自分の姿を
死んだと思っている父親や村人に見せたいので陸へあがらせて欲しいと懇願する。
「もうあなたは人間ではない。蛇身なのだ。あなたは栄耀が見せたいのだな。
人は自己、自分で満足せねばならん。人に価値をつけさせてそれに従うべきではない」と論するが、
聞き入れない美女は陸にあがる。

そこで見たものは、公子から贈られた財宝で新しい家を建て
、妾と暮らす浅ましい父の姿。
そして、自分の娘と知らず蛇を見た父親や、村人は自分を殺そうとする。
悲しみで海底へ戻ってきた美女に「悲しむ者は殺す」と言い放つ。
ついに公子の心を知った美女が言う。

「私を斬(き)る、私を殺す、その、顔のお綺麗さ、気高さ、美しさ、目の清(すず)しさ
、眉の勇ましさ。はじめて見ました、位の高さ、品の可(よ)さ。もう、故郷も何も忘れました。早く殺して。」
美女がこう言った瞬間、人間が持つおろかな精神が消えた。
刃の痛みなく、公子の高潔な精神によって美女は生まれかわったのだ。同じ心になった二人は永遠の愛を誓う。

舞台の最後に登場する雛壇。雛とは哀しみであり苦しみである。
人間のすべての「かげり」を形にしたもの。それを祝い、流すことによって生きる詫びをしているのです。(辻村ジュサブロー)

         さぁ いつの頃か 人は雛を流しける   

辻村ジュサブローは、この作品で文化庁芸術祭演劇部門で美術賞を受賞している。
鏡花の世界を作りあげた舞台には、ジュサブローのほか11人の人形遣いによって演じられた。
その中には若き日の堀浩史も参加している。

声の出演、平幹二朗(公子)、吉田日出子(美女)、坂本長利(僧都そうず)、阿部寿美子(語り、女房、侍女) 
また、場面に合わせた音楽効果も注目に値するものであった。

♪YOUGBLOOD(WAR)  プロローグの美女輿入れのシーン

♪天国と地獄(VANGELIS)  美女が陸から海底へ戻る場面と、ラストでふたりが結ばれるシーン


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