日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

それは詩人たちの饗宴だった

2010-12-10 | アート・文化

Kyoen
一枚の写真を見て、その情景がどんな場であるか理解できなくても衝撃が走ることがある。
この写真がそうであり、雑誌から切り抜いてずっと保管していた。
そして最近写真の概要を知ることができた。

記事は、詩人であり芸術批評家のアラン・ジュフロアが
1950年代のサンジェルマン・デ・プレの思い出を語っている。(村上香住子 訳)
アンドレ・ブルトンと出会い、シュルレアリストとなりブルトンと決別したときの様子が
詳細に語られている。貧しくも自分の道を信じていた若きジュフロアの姿がある。


そしてこの写真。1959年12月。パリのコルディエ画廊で「シュルレアリスム国際展・Eros」が開催された。
シュルレアリストたちはグループの展覧会を、時代の諸問題への発言として方向づけていったという。
食卓に横たわる女性のまわりにはフルーツ、ワイン、キャンドルなどが無造作に置かれている。
この「饗宴」はスイスの女性画家メレット・オッペンハイムにより提案された。
表現方法が刺激的であるため、見る者は自然とわきあがる自己の感情と対峙することになる。
それは感動であったり謎に翻弄されるものであるかも知れない。
別世界に入り込んで自分を発見、あるいは認識することでもある。


この国際展はいくつかのホールに分れ、真珠のカーテン、薫る香水、洞窟のような室内に
シュルレアリスム作家の作品が展示され、沈黙のうちに夢みるようにめぐったものだったという。

写真は1959年12月15日、ウィリアム・クライン撮影。50年前のちょうど今頃である。
既成から未知へと新しい芸術と発想の自由を提起した多彩な人たちが集う場があった。
それはなんと熱い不安をともなう試みであったことだろう。 そして何と劇的な夢の迷宮であったことだろう。