日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

「今宵かぎりは…」

2008-12-09 | 映画

                          1972年 スイス映画 ダニエル・シュミット監督 「今宵かぎりは…」

 

 年に一日だけ、召使のため主人と主従関係が入れ替わる祝祭の日。
召使は食卓につき、貴族は晩餐の準備をする。深夜12時までの宴である。
この映画にストーリーはなく、この日のため、館に来た旅芸人が披露する劇中劇で映画は進行する。
「ボヴァリー夫人」ラストの臨終のシーンや、
サンサースの「白鳥」の音楽で踊る官能的なサロメ、それを見る男と女の噛みあわない恋、
女の歌う今宵の愛などの、一幕もので場面をつなぎ、その合間に主従混合のシーンが入る。
台詞はわずかにあるものの、感情を排した映像に、宴の華やぎはなく、
沈黙的であり、全体を退廃でつつむ陶酔の世界である。       


       今宵こそは 与えておくれ 希望の光

       今宵こそは 見せておくれ 愛のしるしを

       今宵こそは 歌い明かしたい 君のため


日本での、この映画の上映は製作年より14年後の1986年である。
シュミット監督の日本公開は「ラ・パロマ」(’74年)が先であった。